Story43 リヴスル脱出作戦~神獣降臨~


 魔方陣の中に入った瞬間、周りが真っ暗になった。


 「!?何も…見えない…し、聞こえない……」


 視覚・聴覚による情報を遮断されたその異空間に、私は軽くパニックになった。

 しかし、しばらくするとその環境にも慣れ、いつからかシガム様の声が聞こえてきた。


 〖十神が一柱・天龍級魔ノ神シガム…万有オルシェを統べしその御霊みたまに、我は「魔」を望む……「召喚サモネス」〗


 何かの呪文か?イタさが垣間見えているが、呪文って大抵そういうもんだからね、仕方ないね。

 とか思ってたら、目の前に見覚えのある物体が。


 紫色の光沢のある羽で飛ぶ5センチほどの甲虫。


 シガム様に会う直前に現れた、あの虫である。


 「虫とは失礼な。俺はシガム様の側近・グリスヴァールだ」


 側近?ってか言葉なくても通じるんですね。


 「まあな。俺とて神獣だからな。言葉など必要とせずとも精神のみでの対話が可能だ」


 へえ、神獣…どこからどう見ても虫じゃないですか。

 名前も言いにくいし。

 あっそうだ、これからあなたのことグリさんって呼びますね。


 「だから虫ではない!これは一番楽でいられる姿だ!そして略すのをやめろ!」


 え~?じゃあ本来の姿とかあるんですか?


 「…仕方ないな……普通は貴様のような地上界の下民ごときに見せる気などないんだが…」


 その虫は、渋々その本来の姿を見せた。

 真っ暗だった辺りが白い光に包まれる。


 「……ッ!?」


 今まで暗かっただけに、本気で何も見えない。


 「全く、急に光らないで下さ…い……よ………」


 だんだん目が慣れてくるにつれて見えてきたのは、先ほどまでの小さな虫の姿からは想像もつかないほどの、巨大なトラ?のような獣だった。

 しかし、その毛色は黒い。また、紫色のまだら模様が見られる。

 長い尻尾とひげに、丸い耳。右耳には2つ、金色のピアスのようなものがついている。

 銀色の目でこちらを睨み、先ほどからグルグル唸っている。


 そちらは警戒しているつもりなんだろうが、私からすれば――



 「………かわいい」



 「…は?」


 このトラ(?)、モフモフである。

 モフモフに目のない私は、思わずグリさんに抱きつく。


 「うわっ!!?何をしている!?」


 すみませんね、モフモフしたものには目がありませんで。


 「俺は神獣だぞ!!?神界にすむ獣だ!!触れるな!!汚らわしい!!!」


 言葉で罵ったって私はどきませんよ。満足するまで。


 「だから!俺は神獣だって!貴様なんぞその気になれば一瞬で食い殺すことができるんだぞ!!!」


 だから何ですか。モフモフは正義です。

 それに私は何かと神界で話題になってるキーパーソンらしいですから、もし殺したらあなたの主人から大目玉食らいますよ。


 「……!!クソ…大層な後ろ盾がいらっしゃるんだな……!!!」


 っていうかそんなことより、グリさんがここに召喚されたってことはなんか私にするんじゃないんですか?


 「ハッ!?そうだった。貴様のせいですっかり忘れていたではないか。っていうかグリさんって呼ぶのはやめろ」


 ハイハイ私が悪うございました。さっさと済ませてくださいよ。

 別にいいじゃないですか、言いにくいんだし。


 「その言い方、うちのイタいご主人様が使うから嫌なんだよ…!!……だが貴様も変える気はなさそうだな。…あぁいいよもうそれで。とにかく、貴様に魔力を授けよう」


 ついに神獣が折れた。グリさん、よろしくね。


 というか…お付きのあなたでもシガム様のことをイタいって思ってるんですね。

 まあ仕方がないか。イタイし。

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異世界行ったらレベルがマイナスだった件について 蓬茨あんず @ANZUJAM

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