Story40 リヴスル脱出作戦~再会と契約~


 呪われていても、彼女の面影は覚えていた。


 紫の髪に、色の違う目。



 「……もしかして、リーシェ?リーシェなの?」



 〘リ…リピ………ル……?〙


 彼女――リピルは振り向いたその一瞬で、あまりに傷ついてボロボロであり、また黒いオーラをまとったリーシェをいとも簡単に見抜いた。


 〘お前……なぜ私を……〙


 「当たり前じゃない。常にお爺様の近くに寄り添っていた、優秀なせいれ――」


 〘優秀じゃねえし、じいさんとはとっくに縁を切った。…今じゃ何者かに呪われて、この有様だよ〙


 「それでも、目は変わってない。口調とかは変わっちゃったけど、リーシェらしさは失われてないんだもん」


 〘はぁ?……プッ。面白いな、お前〙


 「?今のどこに面白さを感じたの?当然のことを言ったまでじゃない」


 〘ふ、ふはははは!やっぱり面白ぇ!〙


 ――孫になっても、ひょうきんさは祖父と何ら変わんないな…




 〘あんたのじいさんから頼まれてんだ。「リピルがもし私の元に来たら、契約してやってほしい」ってな〙


 「お爺様が……?」


 実際の頼みとはちょっと違うが、別にどうでもいい。


 なぜならリーシェ自身が、リピルを認め、契約したいと思ったのだから――。


 ………


 「呪い…ねぇ。リーシェもつらかったでしょ?」


 〘もう1年前の話だ。慣れたよ〙


 「ホントに?さっきの状態からして、まだ慣れてないんじゃない?」


 〘…うるせえ〙


 「まぁ、この話はこれくらいにして。――私との契約の件だけど」


 〘あぁ。見てわかる通り、今の私は「呪い」の能力を持っている。もし私をガーディリットとして契約したいんなら、当然だが誓約オースに加えて制約リストも受けてもらうことになる。…私の制約リストはかなりリスキーだぞ?本当にいいのか?〙


 「ふふ。リーシェは呪われてても、優しいんだね」


 〘…は?〙


 「『呪い』の能力を持っている精霊と契約するうえでの制約リストくらい、考慮のうち。――どうせ、『一定値以上魔力が落ちたら持ち主の私を呪う』とかでしょ?」


 〘勘がいいな。…ただし、私が要する制約リストは2つだ。1つは、さっきあんたが言ったとおり、「魔力が一定値を下回ったら、スピラーを『呪い』の状態、つまり体力と魔力が6分の1ずつ減っていき、またスピラーを攻撃状態アタッカーにさせる」こと、そしてもう1つは「私を使役している間は1分ごとに体力を10ずつ消費し続ける」ことだ〙


 それを聞いたリピルは、あごに手を当て、


 「ふ~む。思ってたよりは厄介ねぇ」


 とぼやいたが、


 「まぁいいわ。相当なことがなければあなたに呪われることはないし、誓約オースも特に注意事項とかはないんでしょ?」


 〘あぁ。制約リストが重すぎるからな。それどころか、あんたにとっては有益な事項がある。――「スピラーが私を必要とする際は、私は最大限協力すること」だそうだ〙


 「あら、それはありがたい。最近雑用係が足りないから、欲しいと思ってたんだよね~」


 〘ケッ。ずいぶんと下に見られたもんだな〙


 「うふふ。こちらこそ、なめられちゃ困るよ。今の私は、あなたが知っている過去の私とは全く違うんだもの」


 〘確かに、お前のステータスはとんでもないことになってるな。――特に魔力が〙


 そうからかって言ってみたものの、実際リピルの魔力は――いや、ステータス全てはリーシェの知っていた物とはまるで違った。





 リピル・マージナー

 Rypil Marginer


 Job:魔法学生

    Margident

 Age:126


 Level:127

 Magic:炎(Level:78)・水(Level:94)・風(Level:90)・地(Level:55)・雷(Level:54)


 HP:846

 MP:15233


 Skill:〔●★▼◆の呪い〕〔原始霊の加護〕〔精霊神の加護〕〔中級精霊魔導士〕





 ちなみに、一般人族の平均魔力はおよそ500である。



 〘一体、何がお前をこれほどまでに成長させたんだ?〙


 「『マダム・エサク』――彼女がいなければ、私は強くなるどころか命を失っていたかもしれない」


 〘そうか……あのばあさん、か〙




 マダム・エサク――本名エサク・ロアは、ケスハムでは言わずとも知れた「四大魔老よんだいまろう」、すなわちこの世界に魔法を広めた各種族からの代表者4人の一人である(エサクは人族代表)。


 彼女が、なぜ一介の少女であるリピルと知り合いなのか?


 ……その話はまた今度。

 さて、話を戻そう。




 「どう?私と契約するのは、あなたにとっても悪い話ではないはず。お爺様も、それを考えたうえであなたにそれを伝えたのね」


 リーシェは「呪い」属性を持ってから、どこにも居場所がなくなってしまった。

 それなりにハイリスクな制約リストに、どのスピラーも契約しようとしなかった。


 ずっと一人だった。


 そんな彼女に唯一、手を差し伸べたのが――



 かつて忠誠を誓った主人・フォルサの愛した孫、リピルであった…




 〘――何度も聞くが、本当にいいのか?呪いの属性を持つ私をガーディリットとして迎えるということは、すなわちお前も呪いにかかってしまうようなものだ〙


 「…別に。全然気にしないわ、そんなの。――もう、呪われてるしね」


 リピルが一瞬目を伏せる。

 そして、



 「それに………あなたには、もう私しかいないんでしょう?」



 困った顔で笑ってそう言った。


 リーシェは、ほんの少しだけ目を見開いて――


 〘あ……あれ、なんで、私――〙


 気付いた時には目から涙が一粒、流れていた。


 「リーシェ……私と契約して、私を守ってちょうだい」


 リピルは、かつて幼かった時と同じように、無垢な笑みを浮かべる。


 〘ああ……言われなくたって、お前と契約してやるよ〙



 格好悪ぃ。本来このセリフ、私が言うはずなのに……



 そう思いながら、リーシェはリピルと契約を結ぶのであった――。

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