Story39 リヴスル脱出作戦~呪い~





 ~・~・~・




 それは、遥か650年前にさかのぼる。 


 訳あって、フォルサがスピラーを引退(精霊神シェリオに精霊を操る能力を返還すること)した際、フォルサの所持していた数多くの精霊を手放した。


 その中には、彼が当時一番信頼を置いたガーディリット、リーシェもいた。


 当時の彼女は、朗らかで、笑顔の似合う、とても素直な精霊であった。


 彼がスピラーを引退することを精霊たちに打ち明けた際も、リーシェは彼を受け入れていた。

 …彼女は、契約が解消する直前まで、最後の最後まで、彼を支え続けてくれていた。




 「お主は、どんなときも儂を気遣い、助けてくれたな。本当にありがとう」


 〘フォルサ様………〙


 リーシェとの契約が切れる寸前、フォルサはリーシェにある「頼みごと」をした。

 それは、この後リーシェがどんなになろうと、きっかけとなる。



 「………もし…もし、孫娘のリピルが、お主と契約したいと申し出たら――できれば、どれほどの数の他のスピラーが先に申し出ていても、優先的に契約してやってほしい。これが……儂の最後のワガママじゃ」



 〘はい……肝に銘じておきます〙


 そうしてまもなく、フォルサとリーシェら精霊との契約は解消した。


 ………


 〘暇になってしまったなぁ〙


 ひとり身となったリーシェは、しばらく精霊界に残っていたが、次のスピラー、すなわちかつて仕えていた、尊敬するの孫を探すため、地上界へと赴いた。


 その時である。


 〘……!!?〙


 彼女の顔が苦痛に歪んだ。

 突如、激しい頭痛が襲ってきたのだ。


 〘なに…!?こ…の…いた……みは………うぅっ…〙


 通常、精霊というものは地上界においては精霊を操るスピラーや、スピラーに認められた者以外には見ることさえ至難の業。

 つまりは、ただでさえ姿の見えない精霊に危害を与えることはよっぽどの強者でなければ不可能ということだ。

 しかも、精霊にダメージを与える手段は魔法攻撃のみであり、かつ必要とする魔力は並の人族には成し得ないほどの量だ。


 精霊といえども、地上界の者たちと同じように負傷はする。

 それが滅多にないというだけで。


 これが意味することは、リーシェは今、とんでもない魔力を持つ、強い相手から干渉を受けているということ。

 術者の姿は少しも見えず、声さえ聞こえない。


 彼女の体は、徐々に何らかの魔法に蝕まれていった――。


 ………


 彼女はのだ。


 それは、すなわち彼女が「呪い」属性を持つようになったということでもある。

 呪われると、性格が前のそれと比べて豹変してしまう。


 その例に漏れず、リーシェの性格はみるみるうちに堕落していった。


 そして、その呪いは、かけた術者が死ぬか、自ら解かない限り解けることはない。


 「呪い」属性を持った者は、考えが歪み、「幸せそうな奴は皆苦しめばよい」という考えに陥るため、他人にも「呪い」をかけていく。


 「呪い」は永遠に連鎖するのだ。


 ………


 彼女が呪われてから1年後。


 


 「――あなた、名前は?ずいぶんと傷ついているようだけど」


 〘あぁん?誰だテメ……ッ!?〙


 すさんでいた彼女に声をかけたのは、の孫だった。

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