Story36 リヴスル脱出作戦~癒しの森散策~


 〘……さて、そろそろ精霊神様やシガム様に会いに行きましょう。神界にいるとて、地上界での我々は逃亡中の身。用はさっさと済ませ、まずはリヴスルを離れることを第一に考えないと〙


 「…そうね。私ったら、今の今まで本来の目的を見失っていたわ。ありがとうファールス。さぁ、ミム。早くその防護鏡リフレクターを鼻につけて」


 「う、うん……うわっ!?」


 私はリピルの言う通り、そのクモのような形の防護鏡リフレクターの中心部(青く、鈍く光っている)を鼻につけてみた。

 すると、その物体がトランスフォームし、クモの足のようなパーツが伸びて全身に広がり、そのパーツとパーツの間に鏡のような膜が張られ体中にフィットした。


 「な…何これ!?」


 …トランスフォームの結果、ヘルメットフード付きピッチリスーツを着たような状態となった。

 何というか説明しがたい容姿だ。

 宇宙にでも行くのか、というほどに頭部を頑丈そうなヘルメットが覆っている。


 「最初は私たちもこんな風にびっくりしてたよね~」


 「……慣れればどうということはない」


 リピルとミュシアが懐かしそうに話す。


 「こ…これがないと、神界の森には入れないのか…」


 〘神界にある森の瘴気は、地上界の生物には猛毒ですからね。ご了承ください〙


 ファールスが申し訳なさそうに言ってきた。

 仕方ないんだろうけどさ…それにしても派手だな…


 「ファールスは平気なの?瘴気」


 〘どんな精霊も神界の森で生まれます。瘴気は精霊からすればただの空気のようなもの。へっちゃらですよ〙


 ややドヤ顔で言ってくるファールス。

 くぅ~ムカつくわ~


 「さっさっ、森へ入ろっ!早く精霊神様とシガム様に会いに行かないと!」


 やたら自慢気なファールスを睨みつけていると、リピルはそう言って手を引き、私たちは森へと入っていった。




 「うわ、ここホントに森?光に溢れてるんだけど」


 ○ース○イダーよろしくシュコー、シュコーと呼吸音が聞こえる中、ミムはつい呟く。


 普通、昼の森の中と言えば木漏れ日が輝き、しかしそれでもやや暗いのが普通だった。

 が、神界にある森はどうだろう。


 至るところが輝いており、木漏れ日もあるにはあるもののその光に負けている。


 

 ――まるで、木そのものが輝いているような……



 「…あー、確かに地上界の森に比べたら、多少明るいかもね」


 リピルが軽~いノリで返す。


 「多少?いやいやいや多少どころじゃない、だいぶ明るいよこれ!?」


 〘神界に存在している森ではこれが普通なのです。魔族がいないため、『樹たち』が喜んでいるのです〙


 「樹が??喜ぶ??」


 この世界では樹は感情を持つ生き物なの…?

 まぁ、前の世界でもよく、「植物の芽に音楽を聞かせると生育が良くなる」なんて言われてたけど、結局実際のところは分からなかったし…


 〘ケスハムにある樹のみならず、ケスハムに存在している生物は、全て世界樹の遺伝子を継いでいます〙


 「世界樹って…」


 〘ミムお嬢も聞いたことがあるでしょう、世界の中枢を担う大樹のことです。その樹は、このケスハムという世界が誕生する際、あらゆる生物の先駆けとして芽を出した、生命の源となる樹。その樹があってこそ、ケスハム中の全生命が存在できるのです〙


 「あらゆる命は根本で世界樹につながっていて、しかも世界樹から生まれるんだよ。だから世界樹は、別名『生命樹』とも言うの」


 リピルとファールスの説明により、大体理解できた。

 世界樹は、私が思っていた以上に重要な役目を果たしているらしい。


 「世界樹によって育まれてきた生命いのち…ね。やっぱり、魔族の存在って樹にも悪いんだ?」


 〘…はい。魔族は、体に「悪のオーラ」をまとっています。そのオーラは、生きている樹にも作用し、樹を弱らせてしまうのです〙


 ふ~ん…

 そうなると、私がケスハムここに飛ばされてきたときに近くにあった「呻きの森」があんなに黒かったのは、あそこに魔族が潜んでいたからなのか…


 「黒かったり光ったり……この世界の森は普通なのがないんだね」


 「……普通?普通の森って、どんな?」


 ミュシアが首を傾げる。


 「え?いや、普通に…木漏れ日溢れる、でも樹の高さによって日光が遮られて、適度に暗い、そんなような森…かな?」


 「今じゃ地上界にある森にはほとんど魔族が潜んでいるから、森はとても暗いのが普通だね」


 〘ミムお嬢が仰るような森も、もう数千年ほど見ることはなくなってしまいましたな……〙


 えっ、そんな前にはあったの!?


 「…とりあえず、ここケスハムでは全ての樹は最適な環境下では光るの。まるでいるかのように」


 なるほどね、だから樹全体がこうして輝いているのね…

 …ま、そうして喜んでいる樹が、地上界にいる、同胞と言ってもよい私たちを、瘴気という形で害しているのはどうかと思うんだけどね。



 そんな話をしながら森を歩いて行くと、水の流れる音が聞こえてきた。


 「近くに水があるのかな?音がする」


 〘おそらく「神ノ泉」でしょう。神界で様々な所に湧き出ている泉です〙


 「へぇ~。その泉の水も、私たちには有毒なんで?」


 〘いえ、神ノ泉は森とは違い、体に優しい泉です。水は全生命の源ですから〙


 「まず森自体が私たちに優しくないから、その水をここで飲むことはできないけどね。地上界にももちろん水は湧いているけど、元をたどれば全て世界樹から湧き出たもの。全生命を潤し、育む不可欠なものだからね」


 「そうなると、神界の水なんてとても清らかで、飲んだら全部の細胞が喜びそうだね」


 〘神界に存在する水は、「あらゆる傷・病気を治す」と言われています。しかし、その神界に行くこと自体、至難の業なのですが〙


 「死んで『天界』にでも行かない限り、神界に行くのは常人には無理だからね~」


 え、「天界」?

 神界以外にもあるの?

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