Story35 リヴスル脱出作戦~癒しの森入口~


 「ハァ、ハァ…やっと森の入口に……」


 ――癒しの森・入口。

 正直ここに来るまでに結構な体力を消費した気がする。本当に癒してくれるのかな?


 ヴァサッヴァサヴァサッ……


 「ミ、ミム……」


 「……突っ走り過ぎ」


 謎の羽音と全く息切れしていない2人の声を聞いてすぐさま振り返ると、そこには2匹の巨鳥がいた。

 っていうか2人が見えない。どこいるの!?


 「リピル……?ミュシア……?」


 「こうすればあっという間に着いたのに…」


 「……先走り過ぎ」


 「……え?えっ!!?2人どこにいるの!?そしてどうして声が聞こえてるの!!?」



 「「それは……」」



 2人の声がハモったかと思ったら、その瞬間2匹の体が眩しく輝き始めた。


 「!!?」


 目を閉じても瞼に光が届く。クソ眩しい。

 そして、ようやく光を感じなくなったところで少しずつ目を開けると、目の前には今まで通りの2人の姿があった。


 「あ……あれ?さっきの巨鳥は?」


 「これはね…」


 リピルがその小さい手で指パッチンをすると、リピルの背中からもじもじと小さな妖精のような何かがふよふよと飛んで出てきた。

 淡いピンク色のボブ、優しい緑色の瞳。パステルカラーのフリルが付いた服を着ていて、背中には薄い黄色のチョウのような羽。

 その見た目は、控えめに言って天使。


 「紹介するね。この子は精霊見習いの『エンジェ』。能力は『変身モルフォリア』と言って、対象を自由に変身させることができるんだよ」


 〘ょ、ょ、よろしくお願いしましゅ……あっ〙


 エンジェ、と呼ばれた可愛らしい精霊は、蚊の鳴くような声で、かつ喋っている途中に噛んだ。

 顔が真っ赤になり、手をパタパタさせて焦っている。


 なにこれかわいい。


 「まだ変身させるものが思い通りにならないとか、未熟なところはあるけどね。でも、それが完璧になったら、割と強い子だと思うの。だから、この子が立派な精霊になるのを楽しみにしててね」


 リピルがほほ笑みながらエンジェの頭を撫でる。

 エンジェも、主であるリピルには心を許しているようで、頭を撫でられている間の表情が緩んでいる。

 かわいい。


 「……茶番は置いといて。ミム、ここが『癒しの森』。――ほい」


 ミュシアが割と真剣な顔で何かを渡してきた。

 見た目は小さく、中心となる青い何かに数本、細い部品が付いている。

 一瞬クモかと思ってしまうほどだ。


 「これは……?」


 「……『防護鏡リフレクター』、この森の瘴気から身を守るための防具」


 「え」


 ……え?え??

 神界の森なら、毒なんて無いんじゃないの…?


 「神界にある森なのに、私たちには毒なの?」


 「神界にある森だからこそ、だよ」


 〘私も説明いたします〙


 リピルと、ポフンといつの間にか出てきたファールスが説明する。


 「もともと、神界は、私たち地上界の者が安易に立ち寄ることを禁忌とする世界。だから、神界に存在するものは基本的にすべて地上界の生物にとっては毒となるものが多いの。――でも、神界に全く入れないのでは、神界と地上界との繋がりが生まれないから、地上界の状況を神界に報告できない。…そのままだと、世界は遅かれ早かれ滅亡しかねない」


 〘それにもかかわらず、当時は地上界の民は神界と交流はおろか、神界に近づくことさえできませんでした。そこで、この世界を創った大女神様は、自分と民との交流が絶たれることにより世界が破滅するのを案じ、精霊神様に「地上界により近い精霊界に、神界との境界を創ってほしい」とお頼みになりました。しかし、当然ながらこのお頼みはかつての神界では前代未聞であり、言語道断なことでありました〙


 「それに反対する神々もいた中、当の精霊神様はそれを快諾し、地上界、すなわちここケスハムに住む、各種族のへ、神界に入るために必要な特別な魔石マジカスを渡し、魔方陣ニジェラを記憶に埋め込んだ、と言われているの」


 う~ん、ちょっと話が難しいが、つまり?


 「…ということは、の血を継ぐ者には、その特別な魔石マジカスを渡されていて、かつ魔方陣ニジェラの記憶も受け継がれている、ということ?」


 「うん、大方合ってるよ。でも、の血を継いでいるからと言って、皆が神界へ出入りできるわけではないんだよ」


 〘お嬢の仰るとおり、神界へ訪ねることを許されるのはの血を継いでいることのみならず、神界の神々によって神界へ来ても差し支えないと思われる者に限られるのです〙


 「、ねぇ………あれ、別に私はの血を継いでいるわけではないよね?っていうか、それどころか私、異世界から来た部外者だよね!!?神界のセキュリティー大丈夫??いいのかな?そんな奴を神界とかいういかにも神聖そうな場所に入れるようにしちゃって」


 「……確かに、よく考えてみれば…」


 ミュシアが頷き、あごに手を当て考えるポーズをとる。


 「……でも、私が神界に入れるのも不思議に思っていた。私の先祖がという情報は聞いたことがないから。……でも、そんな私でも神様は許してくれた。つまり、ミムも入れたということは、神様が許してくれた、ってことじゃないかな」


 「神界の神々の、神界に入れる者の判断基準は私にも分からないからなぁ…神界に入れたということは、きっと大丈夫、ってことだよ。あまり気にしなくていいと思うよ」


 リピルとミュシアがフォローを入れてくれた。

 うう、いいのかなぁ、本当に……。

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