Story34 リヴスル脱出作戦~神界転移編~


 精霊神の像があった公園から少し歩いたところに、聖堂のような、何か神々しい雰囲気を感じる建物の中に入った。

 建物の中にはステンドグラスのようなものがあり、部屋の中が七色に輝いている。

 その真ん中には、大きな六角形の模様の床があった。


 「ここに、この魔石マジカスを使って魔方陣ニジェラを描くの」


 リピルがどこからか緑色のチョークのように細長い形をした石を取り出し、それを使って床に何か描き始めた。


 「え、あの、いいのかな?その、ニジェラ?ってやつ、勝手に描いちゃって」


 その「ニジェラ」なるものを描きだしていくリピルを見て、私は思った。


 「ニジェラ」って、魔方陣のことか。

 その名称を聞いただけじゃ分からなかったが、リピルが描いているものを見て確信した。

 …なんか某仮面を思い出してしまうよねその響き。なんとなくだけど。


 「……心配無用。ここは『ダ・マージ聖堂』と言って、精霊界に来た者が一時的にに来るときに使用する場所。――描いた魔方陣ニジェラは、効果を発揮した後その場で消える」


 ミュシアが無表情でグーサインをして答える。


 「不思議な構造の建物があるもんなのね~」


 私はいまいち腑に落ちなかったが、まぁここ異世界だし、何が起こるか分からないしね。仕方ないね。

 ……ん?


 「っていうか、さりげなく出てきた『神界』って、まぁなんとなく分かるけど神様たちが集まっている世界…的な?」


 「ん。そんなとこね」


 割と複雑な魔方陣を描いているリピルは生返事をした。


 「――よし!これで完成、っと」


 数分後、ようやく魔方陣を描き終えたリピルは、額に汗をにじませたまま、休む暇もなく、右手を口元に当てて呪文を唱え始めた。


 「……マージカ・マール、リピル・マージナー……我らを神界へ導きたまえ……」


 そう言い終わると、魔方陣が明るく光り始めた。


 「さ、ミュシア、ミム。この魔法陣ニジェラの中に入って、3人手をつなごう」


 リピルの言う通り、私とミュシアは魔法陣の中に入り、リピルと3人で手をつないだ。


 「――トレジス」


 リピルがそう呟き、体が一瞬浮く感覚がした後、目の前が真っ白になった。



 ~・~・~・



 「ミム?着いたよ」


 目を覚ますと、そこは私からすれば見慣れた風景だった。


 「ここが…神界?」


 「……そう。その様子からすると、ミムはここに来たことがあるの?」


 ミュシアが不思議そうに聞く。

 どうやらミュシアたちにとっては、この風景は見慣れたものではないらしい。

 そりゃそうか。確か地上界では、まだ建物などは発達していなかったはず。


 「ううん…ここに来たことはない…けど、私が前いた世界と似てるから……」


 「ミムがいた世界と?ミムの世界は進んでるんだねぇ」


 リピルが感心した、というような顔つきで頷く。

 ミュシアも信じられない、と言ったような表情だ。


 私が違和感を感じないのもそのはず、ここは――


 「まるで、住宅街みたい」


 「?じゅう…?」


 「あぁ、リピル達は知らないのか、まぁ仕方ないね。住宅街っていうのは、んーと、簡単に言えば家が集まってる場所、って感じかな」


 首を傾げる2人。

 あちゃー、何も知らないのか。まぁ仕方ないけど。


 「住宅っていうのは、家のことだよ。さぁ、そのシガ…なんちゃらさんの所に行こう」


 「そこまで言ったらさすがに出てくるでしょ…シガム様ね」


 リピルに突っ込まれながら、私は意外な神界の実情に驚きながらこの異世界での神々の暮らし、というものを垣間見た。


 「それにしても、神っていつもどこかフラフラしてて家とか持ってないイメージしかなかったんだけど」


 「まさか。神々には立派な『きょじゅうぎむ』っていうのがあって、1柱の神様に対して最低1軒のお住まいが決められているらしいよ」


 ヤバい、居住義務とか神界めっちゃ進んでる。文明進んでる。


 「…で、シガム様、ってのはどこにいるの?」


 「ここにはいないの。もっと森の近くだよ」


 リピルが指さす先を見ると、確かに森がある。

 神様の世界にも森ってあるんだね。


 まぁ、そこの住宅街にも、前の世界と同じように植物が植えられているんだけども。


 「……地上界とは違って、この神界には魔物が出てくることはない。あの森は、来た者を癒す『癒しの森』。精霊神様やシガム様は、癒しの森にお住まいがある」


 「ふむ。どちらの神も、マイナスイオンが溢れてそうだね」


 聞き慣れない単語に首を傾げる2人を無視して、私はシガム様と精霊神様がいると言われる癒しの森へと駆けていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!