Story30 リヴスル脱出作戦④


 〘「衰弱の呪いウィクネサ」とは、徐々に相手の体力と魔力を奪っていき、時には死に至らせるほどの恐ろしい呪いです…〙


 「!!?そんなとんでもない呪いがかかってるの!?私に!?」


 居ても立っても居られなくなり、体中をさすってみるが、特に変化はないようだ。


 〘不思議だな。手を抜いているとはいえ、数十秒で立っていることすらままならなくなるはずなのだが…〙


 首を傾げ、私のことを興味深そうにジロジロと見るリーシェ。


 「そんな恐ろしい呪いかけないでよ!なぜかピンピンだけど!」


 思わず心の中で思っていたツッコみを口に出すと、リーシェは急に「プッ」と小さく吹き出し、



 〘……面白い!あんた、面白い子だね!〙



 そういうや否や、今までの怨念オーラはどこへやら、アッハッハッハ、と大笑いし始めた。


 「……?」


 驚きを隠せない私とファールス。


 〘リーシェの笑顔……、だと………!!?〙


 ファルスに至っては、全く信じられない、と言ったような顔つきで、そう呟いていた。


 〘…あ~、笑い疲れた……あんた、タダ者じゃないね?〙


 「え?あ…はい?」


 〘呪いにかかるどころか、軽口をたたくくらいの余裕がある。…お前、この世界で一番厄介な攻撃を知っているか?〙


 「えーと…」


 〘――「呪い」、だよ。「呪い」に関する攻撃を繰り出せるのは、リピルみたいに私たちのような「呪い」系の能力を持った精霊を配下に置いているスピラーか、あるいは他者へのあまりの恨みに自らが「呪い」と化した愚か者か――そんくらいだ〙


 「は、はぁ」


 〘そして、「呪い」による攻撃は、個人差はあるが、対象者をいつまでも呪い続ける。大抵は身の破滅を招くものだ〙


 「身の破滅?」


 〘その方法は多岐にわたるが、大体は体力や魔力を奪い続けるものだな。お前はそういう「呪い」にかかっても、特に影響がない。その時点でお前はイレギュラーなんだよ。……そういえば、さっき牢屋に来た女からも、似たようなにおいがしたな…〙


 「リャナーサも、「呪い」を操れる可能性がある、ってこと?」


 〘それはちょっと違うな。「呪い」ってのは、自らの意思で自由に操れるようなモンじゃない。時には、自らの「呪い」に蝕まれてしまう奴もいる。――つまりは、「呪い」に操られてる、ってこったな〙


 「リャナーサは、呪いにさいなまれている、ってこと…?じゃあ、リピルも、その「呪い」に…?」


 〘リピルについては、「制約リスト」の通りだからな〙


 「リスト?」


 新しい単語に頭にハテナマークを浮かべている私に、ファールスが説明してくれた。


 〘スピラーは、精霊と契約する際、「誓約オース」を交わさなくてはなりません〙


 「オース?」


 〘精霊と契約を結ぶにあたって、ある程度の決まり事を互いに確認することです。…簡単に言えば、「精霊の『取扱説明書』の確認」というところでしょうか。また、ガーディリットとして契約する場合には、さらにそれなりの「制約リスト」が加わります〙


 「…じゃあ、ファルスにも『制約リスト』があるってこと?」


 〘はい…一応。私と契約するにあたっての「制約リスト」は、「肉体的な力を半分にする」ことです。「使う筋肉に制限がかかり筋力の半分しか使えない状態になる」、とでも言えば分かりやすいでしょうか〙


 「oh…割とつらいね、それ」


 それってつまり、たとえば物を持ち上げるのにも制約リストによって通常より2倍の力を必要とするってことだよね…?


 〘しかし、お嬢は精霊の力により自分の力で筋肉労働をすることはあまりないため、さほど不自由はしていらっしゃらない様子。しかも、もし不自由するのであれば、トレーニングをして元の筋肉量を上げれば良いだけの話。あくまで私の「制約リスト」は文字通り「肉体的な力を半分にする」だけのことですので〙


 あなたマッチョだしね…そんなに筋力がなくてもファールスさえいれば何とかなりそう…


 ――そういえば、リピルはざっと30くらいの精霊を持っていると言っていた。

 なかなか強い精霊を持ってそうだし、もしそうだったらそれに伴って受けている「制約リスト」も少なくはないはず。

 あの子のステータスは一体どうなっているの……!?


 〘そして、私の「制約リスト」は、「使役している間はずっと体力を一定量消費し続け、さらに魔力が一定値を下回るとスピラーを強制的に『呪い』の状態にすること」だ〙


 リピルの可能性に焦りを感じていると、口角を吊り上げてリーシェが得意げに言った。


 「えっ、それはヤバくない?」


 〘ヤバいも何も、それが私をガーディリットにするときの条件だからね〙


 「条件がきついね」


 〘通常の精霊として契約するのと、ガーディリットとして契約するのとでは「誓約オース」の重みも変わってきますし、我々精霊側の責任も大きくなります。それに伴い、ガーディリットとして契約するときには精霊の持つ力に相応する「制約リスト」をスピラーにもお受けいただくのが精霊界での鉄則ですので〙


 ファルスが丁寧に答える。


 「なるほどね……って、リピルが「呪い」の状態になってるってことは、ただでさえ体力が低い上にリピルの魔力が少ない、ということでしょ?早くどうにかしないと…」


 〘……仕方ないね、せめて「呪い」の状態からは解放させてあげようか、お気に入りの願いとあらば〙


 リーシェがやれやれと首を振りながら言った。

 それを聞いた私はすぐさま願った。


 「うん、じゃあお願い。リピルにかけられた『呪い』を解いて」


 〘まったく、こんな奴を味方に持って、リピルは幸せ者だな〙


 そうぼやきながら、パチン、と指を鳴らした。

 すると、みるみるリピルの周りにあった黒いオーラが雲散していった。

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