Story27 リヴスル脱出作戦①


 (……ホントにこれで、上手くいくのかな)


 私は牢屋の扉近くで立ち、見張りをしていた。


 あれから、私たち(フォルサさん含む)5人は、割と広い牢屋の中で、別行動を取り始めた。


 まず、ミュシアとファールスは身体能力には自信がある、ということで、唯一外と繋がっている格子の付いた窓をどうやって外すかを考えている。


 個人的にファールスは脳筋だと思っていたため、頭を使えることが意外に思えてならない。

 だって見た目的に……ねぇ?


 リピルはティムの他にも、空中を泳ぐ、綺麗な緑色のウェーブ髪を持った人魚(原理は分からん)の「リーシェ」、カールした、立派な角を持ち、右目にはフリルで縁取られた眼帯、ゴスロリのメイド服を着ているヒツジの「ムルフ」(どう見ても悪魔っぽいんだけど正真正銘の精霊)、ファルスの同類(笑)だと思われる、ペンギンがマッチョになったような見た目の「ツァイト」(発音難しい)などなど、リピルが出せるだけの精霊を召喚し、何やら精霊たちにそれぞれ指示をしているようだった。


 フォルサさん曰く、ティムの「五重結界」は精霊が使う結界類の中では最上級クラスの強さを誇っているという。

 防音のみならず、主(ここではリピル)が信頼できる人物以外には、中にいる全てのものを見えなくしたり、存在を一時的に「薄くする」ことも可能。

 つまりは、結界の有効範囲をを自由に操ることが出来るという。


 ちなみに現在は私たちの姿だけを見せるようにし、脱出に必要な物などのバレたらヤバいものは完全に隠している。



 いいなぁ、もし前の世界でこの五重結界があったら、周りの喧騒に惑わされずにゆっくりと自分の時間を過ごせてたんだろうなぁ…


 ……おっと、いけない。

 私は、私にできることをしなければならないんだった。


 ~・~・~・


 〘ミムお嬢、何か特技などはおありですか?〙


 脱出作戦において、役割分担を決める際にファールスが訊ねてきた。


 「あ………えっと………」


 目をそらし、口を濁さざるを得なかった。


 ……だって、レベルがなんだもんっ!!


 「…煮え切らぬな。どれどれ、ちょっくらお主のステータスを覗かせてもらうか…」


 フォルサさんが急にとんでもないことを言い出したので私はジト目で、


 「!!?なんてこと言ってるんですか、プライバシーの侵害ですよ、犯罪ですよ」


 と、つい暴言を吐いてしまった。

 しかし、フォルサさんは、それを気に留める様子を一切見せずに、


 「……何を訳の分からぬことを言っておるのじゃ、はよ儂と目を合わせろ、一瞬でいいから」


 「……っ」


 フォルサさんの言うこと一つ一つには何故か重みがあり、頑張って目を合わせまいとしたが叶わなかった。

 何か、逆らうことのできない、オーラのようなものがひしひしと感じられたのだ。


 そして、私のステータスを(盗み)見たフォルサさんは、一瞬目を見開いたかと思うと、みるみるうちに顔が青くなっていった。


 「……!?お、お主、何故生きておる!!?」


 「お爺様!?さすがにそれはミムに失礼なのではなくて!?」


 あっ、そうですよね、ハイ。普通の反応ですよね。


 「リピル、いいんだよ。正常な反応だよ」


 遠い目をしてリピルをなだめる。


 「…いや、でも!」




 「――だって、私のレベルはマイナスいってるんだもん」




 全てを諦めた声に一瞬にして沈黙するリピル達。

 

 「…ま、まさか、ね?私、レベルがマイナスいってる人なんて聞いたことがないもん」


 明らかに動揺した顔で狼狽うろたえるリピル。


 「………うん、ありえない」


 反論するミュシア。


 「う~ん、みんな信じてないっぽいからステータス見せます」


 私はしぶしぶステータスを見せた。





 ミム・タチバナ

 Mimu Tachibana


 Job:学生

    Student

 Age:16


 Level:-9

 Magic:Not yet


 HP:-69

 MP:0


 Skill:Not yet





 「見よ!この絶望的なステータスを!」



 「「「………え?」」」



 えー、当然の反応されましたハイ。

 そうだよね、急にレベルがマイナスであることを公表されたら誰だってこうなるよね。

 ステータスが重要視されるこの世界では特に。


 「うそ……でしょ?」


 リピルが何度も目をこすりながら信じられない、といった顔つきで私を見る。

 私だって信じられなかったよ最初は。


 「ところがどっこい、これは夢じゃなくて現実なんだなぁ」


 「……よく今まで生きて来れたね」


 リピルと同じような表情で冷淡と話しかけるミュシア。


 「この世界に転移してきたとき、ジュエトルに一撃食らってダウンしちゃってさ。その時に偶然そばを通りかかった人に助けてもらって、ちょっとだけその人と一緒に旅をしてたから、その間は安全だったよ。………ま、ミュシアに初めて会う前の日に、ちょっとケンカしちゃって、一方的に別れたんだけどね」


 「い、色々あったんじゃな…」


 やや引き気味で答えるフォルサさん。


 「うんうん、分かってくれるかいフォルサさん」


 さすがフォルサさん、大人の反n……


 「いや、いくら長く時を生きてきた儂とてさすがにレベルがマイナスまで言った輩は聞いたこともないゆえ、同情の余地などありゃせんわい」


 ハイあっけなく拒否~


 「で、ですよね~」


 ~・~・~・


 …ということで、魔法もロクに使えない私は、ただ檻の前で魔族に最大限の注意を向けることになった。

 もし魔族がこっちに監視しに来たら、真っ先に伝えるためだ。


 いくらティムの五重結界が万能だとしても、監視係に、すなわちリャナーサにバレたら一巻の終わり。とても隠し通せるとは思えない。



 ――ということで、私はただひたすらに、檻とにらめっこしています。

 とてつもなく退屈です。

 レベルがマイナスって不利な事しかないよねホント。


 「――結局、リピルは何をしているの?」


 暇つぶしに、注意深く檻を見ながらリピルにやろうとしていることを聞いてみる。


 「秘密。――それをもし魔族に聞かれたらまずいでしょ」


 「う、うん…そうだよね……」


 さらっとあしらわれた。まぁ当然か。


 それ以上どうしようもなかったのでまた檻をひたすら監視するという閑職に就く。


 あまりにも静かでつまらないので大きなあくびをしようとしたところ、わずかにだが「コツッ」というブーツの音が聞こえた。


 「!!、来た……かも」

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