Story26 作戦会議


 ――私たちが牢屋に監禁されて、1日が経った。


 「ねぇ、さっきふと思ったんだけどさ……」


 お腹と背中がくっつきそうなお腹をさすりながら尋ねる。


 「これから一切、食事は与えられないんだよね……??詰んでない……??」


 〘つん…?なにか不都合でも?〙


 何食わぬ顔で返すファールス。

 うぬぅぅぅぅ、精霊だからって調子に乗りやがって~…


 「ご飯!めし!フード!!食べ物がないと私たち生きていけないよ!!?」


 「……確かに」


 「言われてみると……」


 みんな(ファルス除く)のお腹が一斉に鳴る。

 ファールスはそれを聞いて、ようやく私が最初に何を言わんとしたかを理解したようだ。


 〘…なるほど。皆さん、お腹が空いていらっしゃるのですね〙


 あごに手を当てて考えるポーズをとるファールス。


 「精霊はお腹が空かないの?」


 〘ええ、まぁ。精霊はもともとは何かの権化なので、食べ物など食べていかなくても生きていけるのです〙


 あぁ……いいね、精霊は。

 このひもじさが分からないなんて、少しムカつくけど。


 「…やっぱり、私、魔族に加勢するしかないのかな……」


 ポツリとリピルが呟く。


 〘なっ!?お嬢、そんな訳がないじゃないですか!何を弱気になってるんです、お嬢が加勢してしまったら相手の思うつぼですぞ〙


 ファールスがすかさず反論。

 私とミュシアも、そうだそうだと言わんばかりに頷く。


 それを見たリピルは、深くため息をついた。


 「ハァ……でも、私が何か行動を起こさない限り、ミムとミュシアは何も食べられないんだよ?ファールスは精霊だから、私たちお腹の空く生き物の気持ちなんて分からないのね」


 と、ややジト目でファルスを見る。

 ファールスがまた反論しようと口を開けかけた瞬間、


 「……ま、八方塞がりなのも事実なんだけど…」


 目を閉じ、ため息をつくように言った。


 「……お爺様、ここから出る手段はないのですか?」


 そして、リピルのおじいさん――フォルサさんに話しかける。


 「うむ………無くは無いのじゃが…」


 言葉を濁すフォルサさん。


 「えっ!?あるのですか!?」


 食いつくリピル。

 まぁ、何か裏がありそうなんだけど。


 「――もし失敗すれば、命の保証はないぞ」


 厳かな声で言う。


 それを聞いたリピルは、軽くうつむき、自分を落ち着かせるように頷いてから、またフォルサさんを見て、


 「……どうせここで足踏みしていても、飢え死にするだけ。――誰が、魔族なんかに、加勢するものですか」


 と、自分の「覚悟」を語った。


 〘お嬢………〙


 強い意志を込めた目でフォルサさんの目を見返すリピル。

 その覚悟を感じ取ったファールスは、顔には出さないものの感動していた。


 「――覚悟はできておるようじゃな」


 硬い表情を崩さないまま、フォルサさんは「作戦」をこっそりと私たちに教え始めた。


 ~・~・~・


 「――『作戦』はこれで以上じゃ、周りには聞かれておらぬな?」


 〘はい、我がしもべ・ティムが私たちの周りに五重結界を張っていたため、外部からの盗聴はほぼ不可能です〙


 ファールスの隣に跪いている、着崩したモーニング姿の金髪白ウサ耳執事・ティムは、自分の名前が出るや否や頭を下げた。


 この執事、赤い目で、首からは懐中時計をぶら下げていて。

 ――某おとぎ話に出てくる兎さんですね、ハイ。


 そして、この執事、実に無口。

 さっきの結界だって、必要最低限の呪文をぼそぼそと口元で呟いただけ。

 あとは、ファールスの命令に最低限の返事をするだけ。「ハッ」とか「御意」とか。


 私が「すごいですね!」って褒めたら、少し目を見開き、そして少し目をそらして、


 〘…何ともないですよ〙


 と、それだけ。


 …まぁ、前の世界での私もクラスではそんな感じだったし、どうこう言えるわけではないんだけどね。



 ――とりあえず、それは置いといて、だ。


 「そんな作戦が、上手くいくの……?」


 私はフォルサさんの話を聞いて不安しかなかった。

 なぜならその作戦にはの要素もあるからだ。


 「お爺様が自信を持って言うんだもん、大丈夫」


 リピルが私を安心させるように言う。


 「う、うん……」


 「この作戦は、それぞれがちゃんと役割を果たしてこそ、成し遂げられる。皆、儂が今言ったことをちゃんと実行するように、頼むぞ」


 「はい」


 「……了解」


 「分かった」


 〘承知いたしました〙


 私、ミュシア、リピル、ファールスが返事をする。




 本日の午後をもって、私たちの「リヴスル脱出作戦」は始動した。

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