Story24 魔人リャナーサ


 「お爺様、ということは……」


 驚きで固まった私たちに、リピルがゆっくりと振り返り、涙ながらに、


 「私の、心から尊敬する師匠、かつ祖父である、フォルサお爺様です」


 と、紹介してくれた。


 ~・~・~・


 リピルの話によると、フォルサさんは、リピルがレーシュとして生まれてきてからも、初孫としてとても可愛がり、魔法もたくさん教えてあげた結果、リピルが先祖代々スピラーをやってきたマージナー家の中で一番の魔力を持つようになるまでに成長させたという。


 〘そして、スピラーにおいて、魔力が多いということはすなわち「呼び出せる精霊の格が上がる」ということ。まだ幼いリピルお嬢がガーディリットとして私を呼び出せるということが、その証明でございます〙


 ファールスがリピルを軽く見やると、リピルは少し照れ、うつむいた。


 「その言い方からすると、普通の精霊を呼び出すのと、ガーディリットとして精霊を呼び出すのとでは、必要な魔力や実力が大幅に違うみたいだね」


 〘はい。普通、一般的な精霊を呼び出すには平均2~30の魔力を必要としますが、ガーディリットとして同じ精霊を呼び出すにはその約4~5倍の魔力を必要とします。私の場合、守護に長けている上級精霊ですので、単なる精霊として呼び出すには50の魔力が必要で、ガーディリットとして呼び出すならば、320の魔力が必要です。そして、一般の人族の魔力はせいぜい100を上回ればそこそこある方なのです〙


 えっ、ファールスをガーディリットとして呼び出すには通常の約6倍の魔力が必要ってこと!?

 と、いうことは……


 「リピルは一般の人族の魔力を大幅に上回る魔力を持っている、ということ?」


 「そうじゃ」


 フォルサさんが話しかける。


 「儂は魔法の使い方を教えたにすぎん。しかし、リピルは試行錯誤の末、自らの魔力を上げ、かつ身を護る術を発達させた。その結果が、ファールスのガーディリット化の成功なのじゃ」


 〘しかも、ガーディリットを呼び出している間は、召喚者サモサーは呼び出した時と同じ魔力を常に消費します。つまり、もし魔力が500のスピラーがいた場合、私を呼び出したままにしておくと、召喚に消費した320の魔力が常に引かれた状態になるのです。魔力180で行動しなければならない、ということです〙


 「しかし、リピルはファールスを召喚してなお、大量の魔力を必要とする上級精霊魔法を使うことが可能なのじゃ」


 「えぇっ!!?リピル、すごい強いじゃん!!?」


 私がリピルに尊敬のまなざしを向けると、いまだに下を向いたままのリピルの髪がみるみる鮮やかなピンク色に変わる。


 「ふぉっふぉっふぉ、照れておるんじゃな」


 すべてお見通し、というような感じでフォルサおじいさんが笑う。


 「や、やめてください~」


 リピルが泣きそうな声でフォルサさんに反抗する。


 「すまんすまん」


 その一連の会話を見て、私たちは一時的にだが癒された。


 リャナーサも許すまじだが、今はこの2人のやり取りに癒されていよう。


 リピルとフォルサさん以外の3人は、温かい目でしばらくこの光景を見守っていた。


 ~・~・~・


  ガシャン!


 リピル達とお話していると、急に牢屋の入口の方から格子を蹴ったような音がした。


 驚いて振り返ると、外にガラの悪いイグアナのような女(?)が立っていた。

 よく見れば、黒いこん棒のようなものを持っている。


 ピンクの革ジャンのようなものを羽織った、前の世界で言う「ヤンキー」という言葉が妥当である格好であった。

 トサカのある髪(?)は茶色で、肌色はちょっと明るい緑。金色の目はギョロっとこちらを睨みつけており、時々長い舌をなめずっている。


 うん、見た目や仕草的にもイグアナだねこれ。

 異様なのは立っていることくらいかな。

 ということは魔人だね。


 〚…おい、テメェら。ペチャクチャ喋れんのも今のうちだぞオラァ?〛


 見た目の通り、汚い言葉で罵倒してくる。

 声はガラガラだが、少し高いので女だと理解できる。


 「リ、リャナーサ……?」


 そいつを見て、青い顔でそう呟くリピル。


 へぇ、あいつがリャナーサなのk…………え?


 「えぇぇっ!!?あいつがリャナーサなの!?……まぁ、中ボスにふさわしい格好してる…かもしれないけどさ?」


 〚ああん?意味の分かんねえことほざいてんじゃねーぞ黒髪女。シバくぞ?〛



 ――そう、このヤンキーが「リャナーサ」だったのだ。

 リピルったら、こんなガラの悪い子と仲が良かったの…??


 「リャナーサ……あなたはそんな子じゃなかったじゃない……私に世界の広さを教えてくれた、誰に対しても思いやりを忘れない、私の『親友』だったじゃない……」


 ありえない、と言うように首を振りながら、絶望溢れる顔でリャナーサに聞くリピル。

 私には、彼女がリピルが今言ったようなことができるような子だとはとても思えないが……


 〚………俺はあの時の俺とは違う。お前もいい加減、に来いよ〛


 軽く目を伏せ、そのすぐ後にリピルを見てそう言ったリャナーサの声には、覚悟を決めたような、そんな感情がこもっていた。


 …あと、至極どうでもいいが、この子オレっ娘か。


 「………!!」


 苦悶の表情をするリピル。


 〚おめぇは、昔「レーシュをバカにするやつらをコテンパンにする」っていう俺の考えに賛同してくれたじゃねぇか〛


 「!?いや、私は賛同してなんか、」


 〚拒否はしなかったじゃねーか!…少なくとも俺は、あの時のお前の態度を「賛同」だと感じたぜ?〛


 「そ、それは……でも………」


 〚ほうら!やっぱりお前も俺と同じ考えを持ってるんじゃねーか、あぁん?そんなら、俺ら魔族に加勢しろよ。……お前だってだろ?〛


 「………!!!」


 それを聞いたリピルは、ゆっくりとうなだれた。

 髪の毛もみるみる青くなっていく。



 ……うん?何?今、一体何の争いが繰り広げられてるの??


 まぁそれはどうでもいいとして、リャナーサの今の一言、私は聞き逃さなかったぞ。




 「リピル……あなた、『魔族』なの………??」




 リピルは私の問いに答えずに、ただひたすらにうなだれるばかりだった。

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