Story21 都市の現状


~・~・~・


 歩いている途中に、私はリヴスルがどんな都市か聞いてみた。


 〘リヴスルは世界樹と縁の深い都市でしてね、それに従って、世界樹を守っている精霊も姿を現すことがあるのです〙


 「へぇ~!いやぁ、ぜひ野生の精霊に会ってみたいわ~」


 「精霊を目にすることが出来た人には、幸せが訪れるんだって」


 リピルが私に話す。

 精霊はレアものなんだね。


 「……ってことは、精霊って限られた人にしか見られない感じ?」


 〘そうですね、見られたとしても一瞬でしょう。精霊は警戒心が強く、人前にはなかなか姿を現さないのです〙


 前の世界では、精霊や妖精なんて、信じてはいなかった。

 いるかどうかも分からない、人間の生み出した想像の存在だったしね。


 でも、この世界では、精霊は「世界樹を守る」という、はっきりとした存在として受け入れられている。

 実際、私はファールスという精霊にも会ってるんだから、この世界には精霊は存在するのだろう。


 「へぇ~……あれ?ファールスも精霊だよね?」


 〘はい、確かに私は精霊です。しかし、リヴスルに存在する精霊は、「自然の具現」と言われております。そのため、我ら人工の精霊に対して「原始霊」と呼ばれます。水や火など、自然のものに宿っているのです。それに比べてお嬢のもとにいる私たちは、精霊魔道スピルのもとに作り出された、いわば人工の精霊、「人工霊」でございます。強いて言うならば、召喚者サモナーに宿っているのでしょうか。よって、自然のものに宿った原始霊の方が、私よりもはるかに格上の存在なのです〙


 「なるほどね、ファールスとリヴスルにいる精霊は全く違うものなんだね」


 〘左様でございます〙


 「……あと、リヴスルは、パワースポットが多い都市として、あらゆる種族が訪れるんだって」


 ミュシアがこちらに話す。


 うん、つまりは精霊にあやかろうとして人が来るのね。

 立派な観光都市だね。

 う~ん、ますますリヴスルに行くのが楽しみになってきた。


 ~・~・~・


 歩いて1時間くらいが経っただろうか。


 「…もう、門が見えてきたんですが」


 割と長い旅路だった気がするが、今の今まで魔物という魔物にエンカウントしていない。


 〘これはさすがにおかしいですね。最低でも1回は魔物と戦うはずなのですが……〙


 ファールスも首を傾げる。


 「ファールスはリヴスルに行ったことがあるの?」


 〘ええ、それはもちろん。――お嬢、いいのですか〙


 小声でリピルに語り掛けるファールス。


 「……着いてからでいい」


 〘…はい〙


 うん?何の会話が繰り広げられているんだ?


 「……門が見えてきた」


 さっきリピル達がこそこそ話していたことを疑問に思っていると、ミュシアが急に進行方向に指をさした。


 そこには、ルシェの時とはまた違う、全体をツタのようなもので覆われたような門が見えてきた。


 「…あれが、リヴスルに入るための門?」


 私が聞くと、リピルは頷いた。


 「リヴスルは、ルシェと違って『精霊の力』で町全体を守っているの。だから、人の手で作られた不完全な結界よりは強いんだよ」


 リピルが補足するように説明してくれる。

 やや嬉しそうに話すリピルを見ていると、少し疑問が出てきた。

 のでぶつけてみた。


 「なるほどね……あれ、リピルってもしかして、リヴスルで生まれてたりする?」


 素直な質問をぶつける。

 すると、少し驚いた顔を一瞬こちらに向けたかと思うと、すぐにうつむきながら、


 「いや……お母さんから聞いただけだよ」


 それをやや心配そうに見守るファールス。

 やっぱりこの人たち意味深だ~!!


 「そ、そっか。ごめんね、藪から棒に」


 「え?あ、いいのいいの。さあ早く町に入ろうよ。せっかく魔物も出てないんだし、ね?」


 私にそうせかすように言い、またファルスを見上げた。


 〘…そうでございますね。今日は何故だか魔物の出現がないのですし、私たちはとても幸運です。しかし、この幸運がいつまで続くか、分かりません。私も少し急ぎ足で行った方がよろしいかと〙


 まるで口裏を合わせたように、また私に何かを隠しているかのように、ファールスも私をせかした。


 う~ん、ますます怪しいぞ~??


 ~・~・~・


 なんだかんだで門の前に着いた。やはり魔物は現れなかった。


 おっかしいな~、普通RPG系では必ず道中には魔物(モンスター)が出るはずなんだけどなぁ。


 ……まぁ、レベルがマイナスの私からすれば、ありがたいことではあるんだけどね。



 うつむいたままの門番を少し不審に思いながらも、ツタで覆われた門を抜けると、そこには幻想的な風景が……広がっていなかった。


 〘なっ………!!?〙


 「……!?」


 「な、なにこれ……!?」


 「…………」


 私たちが驚くのも無理はない。


 木々は枯れ果て、鳥の鳴き声さえ聞こえない。

 町の中を悠々と闊歩しているのは……魔族。




 リヴスルは、侵略都市となり果てていた―――。




 「あ、あの~……道中であなたから聞いた話では、リヴスルって自然豊かで、市民が幸せそうに過ごしている場所だと聞いたのですが…」


 私がファールスに聞くと、ファールスはやや青い顔で、


 〘まさかこんなことになっているとは、思いもよらず。――たまにはこちらに戻っていれば……!!〙


 悔しそうに顔を歪めるファールス。

 え?え?何?何が起こっているの!?


 「あ、あの、魔族が普通に歩いてるんですが」


 〘支配されているのです。――「リャナーサ」によって〙


 「リャ……ナーサ?」


 聞き慣れない名前を聞いて、私は完全に思考が停止した。

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