Part3 ◆mid-boss マリオネットの傀儡師

Story20 精霊魔導士


 「リヴスルは、ここを南に歩いてったところにあるの」


 マンションの外に出た私たちは、軽く目標を確認した後、早速歩いて行くことになった。


 「リヴスルって、どんなところなの?」


 スラム街を出て、少し木が生えている草原の中を歩いている途中にミュシアに聞いてみる。


 「……レーシュに、リピルに優しいところ、らしい。私はそれしか聞いたことがない」


 ボソッ、と呟くように言った。


 「そっか。……ミュシアたちは、私に会うまで、何をしていたの?」


 ――そう。私がミュシアたちに会い、話した時に感じた印象。

 私に会わなくとも、さっさとそのリヴスルに行けばいいのに。


 「……リピルは魔法の練習、私は鍛錬。私は強くならないといけないから」


 「…鍛錬?一体、誰に?」


 「私の守護精霊ガーディリット、だよ」


 そう言うとリピルは立ち止まり、その場で少し恥じらいながら「サモネス」と小さく呟く。

 すると、彼女の前がやや紫色に輝き、大きい鍵穴のようなものが召喚されたかと思うと、そこから筋肉ムキムキ、2足で立ったカンガルーのような動物が出てきた。


 ……否、それが精霊だった。


 〘お嬢、今回はどんなご用事で?〙


 見た目通りのごっつい、男らしい声で話すその精霊は、私を見るなり驚いた。


 〘?貴女様は……に、ニズカですか!??〙


 その精霊の、あまりの驚きに声が上ずり体はのけ反り、見た目にそぐわぬ間抜けな声を出したため、私たちは少し吹き出しそうになってしまった。


 必死に笑いを我慢しながら、私は何とか答えた。


 「……そ、そうらしい……ですけど…何、か?」


 〘何を笑いをこらえてらっしゃるのか私には全く理解できませんが、貴女様、ニズカだからでしょうか、何か神々しいオーラを感じます〙


 やや赤面しながら軽くコホン、と咳をし、やや目を細めて私を凝視する精霊。

 …ありゃ、バレてたか。私がニズカだってこと。

 さすがに神々しいオーラの方は知らなかったが。



 ――いやいや待て、こやつ、私がニズカであることを一瞬で見抜いた……だと!?


 「に、ニズカ?ミム、本当に?あなたニズカなの?」


 その精霊の言葉を聞くや否や、リピルとミュシアに驚きの目線を向けられる。


 「う、うん……?」


 そんな、何かを期待するような目で見られても。

 私からは何も出てきませんよ?


 「ニズカと言えば、この世界に5人もいないと言われているんだよ!」


 「……正直、初めて見た時に他の人と違うオーラを感じ取ったけど、やっぱり常人じゃなかった」


 ……うん、常人じゃないよ。

 HP的な意味でもね。あ、もちろん悪い意味で。


 〘そんなニズカである方が、どうしてお嬢と一緒に?〙


 「……この人、リピルを守ってくれそうな、リピルを見捨てたりしないような、そんな気がしたから」


 〘そうですか。ミュシアお嬢がそう言うのなら、そうなのかもしれませんな〙


 納得する精霊。

 ……いや、そちらの疑問が晴れてもこっちは晴れてないから!


 「あの~……あなたって、精霊、なんですよね……?」


 〘…おぉ、私としたことが、自己紹介を忘れておりましたな。私はリピルお嬢のガーディリットのリーダー、『ファールス』と申します。以後お見知りおきを〙


 と言って、丁寧に片足を曲げ、深くお辞儀するファールス。


 「その、ガーディリットには、まだ仲間がいるんですか?」


 ファールスは軽く頷き、


 〘はい。お嬢は古来より精霊魔導士スピラーの血を受け継ぐお方。私ファールスも先代より受け継がれし精霊の一人でございます〙


 「スピラー?」


 〘精霊魔導士、すなわち我ら精霊を操る者のことです〙


 「なるほど」

 

 〘しかし、リピル様はレーシュ。世間からは疎まれてしまっていますが、スピラーとしての腕前は大人顔負け。どうか、貴女様も見かけだけで判断なさらないよう、よろしくお願い申し上げます〙


 もう一度、深く頭を下げるファールス。


 「…もう、ファールスったら!私が認めた人にしか、あなたの姿は見えないのよ!」


 サラッととんでもない事実を口にするリピル。

 そ、そうだったのかー!?


 「私、認められてる、ってこと?」


 「……さっきから言ってるじゃん、ミムはリピルを知らんぷりしない、って」


 ミュシアがややご機嫌斜めに言う。

 このこと言うのこれで3度目だもんね(汗)


 「あぁ、ごめんごめん。でも、人から認められるなんて、久しぶりだったから、つい……」


 「ミムは、前の世界では認められてなかったの?」


 そう聞いてくるリピル。

 うっ、そう言われるとちょっとガラスのハートが…


 「認められてなかった、って訳じゃないけど、認められたところで大した嬉しさはなかったかな」


 自分のボケはともかく、ミュシアたちには事実を口にしてみる。

 頭がいいと褒められても、大人しくおしとやかな子だと母親や先生に言われても、確かに嬉しい事には嬉しいのだが、素直に喜べずにいた。


 「でも、この世界では、認められたことが、なんというか、めっちゃ嬉しく感じる」


 つい笑みがこぼれる。

 すると、ミュシアたちの顔がまた、希望に溢れ、


 「ありがとう!…なんか、そう言われると照れちゃうな」


 「……認めた人に嬉しがられることって、今までなかったかも」


 〘…ミム殿……〙


 2人は少し照れくさそうにし、ファールスは驚きを込めた顔をしていた。


 「――さて、じゃあ、進もっか」


 照れ隠しの意味も込めて、私は前を向き直し、ほのかに街の見えてきた草原を更に歩く。


 〘それにしても、ここでずっと立ち止まっていたというのに、ここは魔物の出現率が極端に低いですね。前に行ったときは、歩いていても、もう少し出現していたと思うのですが…〙


 首を傾げるファールス。

 確かに、ルシェに行くときもボス1匹にしか遭わなかったし、なんかRPGっぽくないな~? ←まだRPGを諦めてない


 「確かに…もうそろそろエンカウントしてもおかしくないですよね?」


 〘エン…?〙


 更に頭にハテナを浮かべて首を傾げるファールス。

 あちゃー、こっちでは前の世界の言語通じないのか……


 「う~ん、まぁとりあえず歩きましょう?リヴスルは、まだまだ遠いみたいですし」


 ということで、無駄話よろしく、私たちは旅路に就いた。

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