Story19 これからの方針


 ~・~・~・


 「ただいま~」


 「……ただいま」


 「おかえりなさい!何か買ってこれた?」


 リピルが髪をやや黄色に輝かせてこちらに走ってきた。


 「買ってきたよ~、ホラ」


 私はリピルに「ストロールハット」と「グラーセ」を渡してあげた。


 「おぉ~!何これ!?」


 まるで初めて見た、というような反応で、髪の色がややオレンジ色に色づく。

 興味津々な物の前には、髪の色はオレンジ色になるのかな。


 「それでね……リピル、あなたと旅をする上で、髪は割と致命的になるの」


 マジトーンでリピルに話しかける。

 その雰囲気を感じ取ってか、リピルの髪がやや青くなった。


 「そこで…………じゃじゃーん!買ってきたよ!髪ゴム!」


 紙袋から私が取り出したのは、ヘアゴム。

 この世界では、そういうファッションアイテムの需要もあるらしく、前の世界での同じような時代よりも進んでいるような印象を受けた。


 前の世界での中世ヨーロッパでは、まだヘアゴムの需要はなかっただろう。

 モーツァルトとか、マリーアントワネットとかの髪型を見れば明らかだ。


 まぁ、話を戻して。


 「髪……ゴム?」


 首を傾げるリピル。


 このようなスラム街では、オシャレに気を使っている余裕など、微塵もないのだろう。

 知らなくてもおかしくない。


 「これはね~」


 そう言って、私はリピルの三つ編みおさげにしていた髪をほどき、ゴムを2つ使ってササっとおだんごにする。

 また、前髪も軽くゴムで結んであげる。


 「わぁ~!」


 「こんな風に、髪をまとめるのに使うんだよ~」


 リピルに向けてニッと笑って見せる。

 リピルは髪を黄色に輝かせ、心底嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

 ああ、尊い――

 

 ちなみにリピルは三つ編みをリボンで留めていた。両親が、お金をはたいて買ってあげたのだろうか。

 ほどいた後、リピルはそのリボンを大事に取っておく、と言った。


 「これで、その上にこのストロールハットをかぶれば…」


 「ミュシア、どう?」


 「……うん、髪は見えなくなった」


 ミュシアのその一言を聞いたリピルは、パァッと明るくなった。


 「とりあえず、髪はオッケーだね…あとは『目』だね」


 そう言うと、リピルはまた少しシュンとした。


 「目は、隠しようがないもんね……」


 「……でも、一応隠せるものも買ってきた」


 えっ、と少し驚くリピルに、ミュシアが紙袋からグラーセを取り出し、


 「……ほら。目を隠せる」


 と、リピルにかけてあげた。


 「うん、これで確かにレーシュの特徴は隠せたね。ただ……」


 ――ただ。


 麦わら帽子にグラサン、服はボロボロ。

 できれば服も買ってあげたかったのだが、お金がヤバかったので買えなかった。

 これは怪しまれてもおかしくない。っていうか絶対怪しまれる。


 「服がねぇ。…カラコンでもあれば、まだ大丈夫だったかもしれないけど」


 「……カラ…?」


 こちらに純粋な目線を向けてくるミュシアとリピル。

 ……リピル、いざ直視するとやっぱりおかしい。格好的に。笑いそうになってくるほどおかしい。


 「あ、気にしないで、こっちの話。……いや、どうしようかね。もうお金もあまりないし、その姿、絶対に怪しまれそうだし……」


 「………リピル。を使えばいいんじゃない?」


 ミュシアがリピルに提案する。

 あの…魔法?


 「……っあ、そっか」


 何かひらめいた、とでもいうような様子で、目を閉じ、何かモゴモゴと小声で言いながら指を軽く動かすリピル。


 すると、彼女の周りに光のような、ホワホワしたものが漂い始めた。


 「リピル、それは何?」


 「これは『精霊の加護』の一つで、『静寂な存在サイレント・プレゼンス』と言われるものなの」


 「サイ…?」


 「まぁ、簡単に言うと『存在を目立ちにくくする』って感じかな。こんなバリバリ怪しい格好でも、この魔法がかかれば存在を薄くすることが出来るの」


 何そのぼっち属性みたいな加護。

 前の世界にいた時の私にも是非かけてほしかったよそれ。


 「う~ん、そんなご加護があるなら最初から変装なんてする必要がないんじゃ?」


 「…残念ながら、元よりある『呪い』等には効果がないの。このことからも、私がレーシュであることは確かに呪いなんだと思う」


 「そんな……」


 ルキ達から聞かされた言い伝え。

 それは果たして本当だったというのか……。


 「……っていうかさ、精霊って…?」


 気まずい雰囲気を何とかすべく、話を変えてみる。


 「……リピルは精霊に守られて生まれてきたの」


 ミュシアが説明する。


 この世界にもいるのか、精霊。

 いよいよ異世界っぽくなってきたぞ。もう異世界だけど。


 つまり、リピルは生まれた時から精霊の加護があるってこと?


 「その、サイレントなんちゃらの他にも精霊から加護を受けることはできるの?」


 「うん……一応ね。でも、まだ私が未熟だから、加護も完璧ではないし、全てを発動させることはできないの」


 と、苦笑いするリピル。


 「み、未熟でも、これから成長すれば、きっと本来の力が発揮されるよ。頑張ろう」


 「う……うん」


 私の精一杯の励ましに少し顔をゆがめながらも答えてくれた。

 もうこの子天使。マジ天使。


 ……さて、本題に入ろう。


 「――ところで、旅のお話なんだけどね」


 私が話を変えたところ、2人は真剣な顔になった。


 「………どこに行くの?」


 と苦笑した瞬間、2人は少しガクッとなったかと思うと、


 「……そういえば、ミムには話してなかった」


 「私たちが目指しているのは、『リヴスル』ってところなの」


 「……リヴ、スル?」



 ――リヴスル。

 そこは、リピル達レーシュにとってはまさに「楽園」なのだという――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

新規ユーザー登録無料