Story18 装備選び


 ミュシアやリピル、そして私がいるここは「ウルス」と呼ばれる地方で、ルシェの中にあり、貧しくルシェに住むことが出来ない者や、罪を犯した者が罰として追放される場所らしい。


 まぁつまりは「ならず者」のたまり場、といったところだろうか。


 ルシェに住む者はここに居る者を皆軽蔑し、決して近づこうとしないという。

 つまり、皆に忌み嫌われるレーシュであるリピルが身を隠すには絶好の場所なのだ。


 そんなリピルが、安地を出て周りの目をいとわずに冒険をしようとしている。


 勇気があることだが、やはりこちらからすると心配の一つや二つはしたくなるものだ。


 まずは外見。

 これをどうにかできないか本人に聞いてみることにした。


 「…ところで、リピル。冒険をする上で、目はどうしようもないとして、髪は何とか隠せないかな?」


 「え?あぁ……そ、そうだよね。でも、それを買うだけのお金がなくて……」


 「大丈夫!私、少なからずお金は持ってるから、ルシェで買ってくるよ」


 「……本当!?」


 また、リピルの髪が黄色になる。

 黄色の時は嬉しいんだね、覚えておこう。


 「だから、ちょっと待っててね」


 ドアを開け、出て行こうとすると、ミュシアが私のスカートを引っ張って、


 「……お願い、私も行かせて」


 とお願いしてきたもんだから、私はそれを快諾した。



 レベルがマイナスである私に、ボディーガードは必須だからね。


 ~・~・~・


 「へい、らっしゃい!お客さん、どの装備をお求めで?」


 適当に装備屋を探し、一番人気があり、品数も豊富であると思われる、赤い髪の娘が看板娘をしている店に行くことにした。


 「あの、この子に合うような、頭全体を覆える帽子って、ありますかね…?」


 私は同伴してきたミュシアを手本に帽子を探させる。

 ミュシアとリピルは似たような身長だったため、探すのが容易だった。


 「う~ん…ちょっと待っててくださいね」


 看板娘(年は分からないが、だいぶ大人っぽい)さんが、ミュシアをまじまじと見た後、店内に戻る。


 そして、しばらくした後、


 「これはどうでしょうか」


 と、笑顔でやや大きめの麦わら(この世界に藁が存在するのかは謎だが)帽子を取り出してきた。


 「この『ストロールハット』をかぶれば、防御力もアップ、夏の暑い日差しからも頭を守ってくれますよ!」


 「…強風で飛んでいったりはしない、ですか?」


 「ええ!防御力を上げる商品のため、風属性の攻撃でもそうやすやすとは飛んでいかないですよ!」


 心配していたことも自信ありげに大丈夫、と言うので、私はそれを信じて購入した。


 「私も何か買っておきたいし、店内も回ってみようか」


 「……ミムの装備も必要っぽいしね」


 うっ。ミュシア、そう核心を突かないで……



 店内には、思った通り装備の種類が豊富であった。


 「リピルの目の色も隠せたらいいよね~…」


 前の世界で言う、「メガネ」のようなものを探していると、


 「…目を隠すなら、これ」


 ミュシアが私に差し出したそれは、


 「……サン、グラス?」


 グラサンのようなもので、でもやけに丸っこくて小さいものだった。


 「あぁ!それは『グラーセ』というものですよ!最近流行りだしましてね~、お客さんお目が高いですね~」


 後ろから声がする、と思って振り返ったら先ほどの看板娘さんがグラサン、いやグラーセの説明をしてくれた。


 「グラーセ……?ってことは、日光を防いでくれる感じ?」


 「う~ん……半分当たってますね。確かに日光の照り返しが激しい碧海や雪国に住んでいる方々は常に使用しているようですけど、これは日常的な日光だけでなく、光属性の攻撃をある程度緩和してくれる働きがあるんですよぉ~」


 えっへん、というように胸を張り説明する看板娘さん。


 「な、なるほど。じゃあ、これを一つ……いや二つ、お願いしますかね。色違いで」


 値段も割とお手頃だし、私の防御力も上げておきたいため、リピルは紫色、私は白色のグラサンを購入した。

 ミュシアにも買うかどうか聞いていたが、「あまりお金をかけすぎるのは良くないから」と断ってくれた。


 私のお金事情まで察してくれるミュシアちゃんマジ女神。



 その他に、ちょっとしたヒモや小型のナイフなど、日常的に生活していく上で最低限必要だと思われる物は買っておいた。

 おかげで最初はたくさんあると思っていたお金はほとんどなくなってしまった。


 ~・~・~・


 ところで、お金を払うときに、通貨の種類が分からず少し焦っていた時に、看板娘さんが優しく丁寧に教えてくれた。

 人気な装備屋であるだけあって、この世界の全ての通貨が店にあるそうなので、現物も見せてもらった。


 まず、この世界での最小単位は「ドーラ」。大きさは1円玉より少し小さめ?

 まぁ、大きさ的にも、前の世界で言う1円玉の位置だね。


 その次に大きい単位が「ポル」。ドーラよりは大きめ。まぁ10円硬貨くらいあるかな。価値はドーラ10枚と同じらしい。

 これは前の世界で言う10円かな?


 そしてその次は「ベレナ」。ポルよりさらに大きくなり、100円硬貨くらい。こちらはポル20枚分。

 う~ん、前の世界と無理やり結びつけるとこれは10円×20=200円分だろうか。


 次は位が一気に上がって「リポール銀貨(通称:銀貨)」。名前の通り、銀でできてるっぽい。こちらは500円硬貨ぽいな。これはベレナ硬貨100枚分に値するという。

 無理やり結びつけ換算すると、200×100=20,000円分だ。庶民には一気に手が出しにくくなった。


 ちなみに、ドーラ~ベレナは全て銅?のような物質でできている。


 そして、この世界での一番上、すなわち一番金額が高い硬貨は「アービス金貨(通称:金貨)」。大きさは500円玉より少し大きめ。まぁ銀貨とさほど変わりはないらしい。こちらも名前の通り、金(といっても、前の世界と同じように合金だろう)でできているらしい。

 これの価値はなんと、銀貨500枚分に値するのだそうだ。

 計算すると20,000×500=10,000,000円分。数字だけだと分かりにくいので言葉で言うと、「1,000万円分」だ。

 恐ろしい。この世界にはそんな通貨が存在するのか……


 銅、銀、金の概念がこの世界にあるのかは謎だが、まぁあるのだろう。通貨にするってことはね。


 ルキ達がくれた袋の中には10ドーラ、15ポル、6ベレナ、そして銀貨が2枚も入っていた。

 冒険者である彼らにとって、金は重要なものであるはず。

 なのに、勝手にパーティーを出た私に、こんなに恵んでくれたなんて。


 もう、彼らは宿を出て、冒険に出てしまっただろうが、いつかまたどこかで会ったら、この恩は返さないとな。

 ただでさえ命を救ってくれた救世主だってのに、私はなんてことを。


 ……とはいえ、彼らは種族差別をしてしまっていたのも事実。

 私がした行動に悔いはない。




 ――そんなことを考えながら、私たちは帰ってきた。

 レーシュであるリピルのいる、隠れ家であるマンションの一室に。

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