Story17 再・新たな冒険の始まり


 ドアを開けたその少女の顔からみるみる笑顔が消えていき、代わりに絶望した表情になる。


 それと共に、髪の色が青色になった。


 「み、ミュシア……?こ、この人は………?」


 その子は、私を直視したまま、緊張のせいかやや上ずった声で私の隣にいる少女――ミュシアに声をかける。


 「……なんとなく、リピルを救ってくれそうな気がして」


 「ここは、私たちだけの秘密の場所でしょ!?他の人を絶ッッ対に連れてこない、って約束したでしょ!!」


 おとなしそうな見た目にそぐわず、怒りで頬を紅潮させミュシア、と呼ばれた少女に怒鳴る少女。


 今度は髪の色がどんどん赤色になる。

 最終的には情熱的なほどの鮮やかな赤色になった。


 「……大丈夫。この人、リピルを嫌わない。私のレーダーがそう言ってるから安心して」


 「本当…?」


 「うん」


 「……、そこまでミュシアが、言うのなら……」


 ミュシア、という少女のやけに確信を持った言い方により、とりあえず落ち着きを取り戻すその少女。


 髪の色も、紫色に戻った。


 ……レーシュって、感情が分かりやすいのね…


 「……おねえさん、この子は『リピル』っていうの。お姉さんは、リピルのこと、嫌いにならないよね?」


 ミュシア、と呼ばれた少女が私のスカートを引っ張って懇願するように聞く。


 「……もちろん。他の人みたいに、差別なんてする気は全く無いよ」


 素直に、思いのままを告げる。

 誰かさんみたいに、周りの情報だけで差別なんて、しない。したくない。


 「本当に…?本当に、おねえさんは私のことを、無視しないの?」


 リピル、という少女は、心から驚いた、というような表情で私を見てくる。


 「うん、しないよ。…安心して」


 安心させるように、軽くほほ笑む。


 すると、その少女は軽く目を見開いたかと思うと、


 「ありがとう……!私は『リピル・マージナ―』、っていうの」


 と、目をキラキラさせ、感極まったような顔でお礼を言った。


 髪の色が眩しいほどに黄色に輝く。


 そ、そこまで感動しなくてもいいんじゃ…?

 いや、でも今まで他人にさげすまれてきた身からすれば、味方が増えるということはよほど嬉しいことに違いない。

 つまり、これは当然の反応だな。うん。


 「いえいえ、どういたしまして。……私はミム。ミム・タチバナ。よろしくね」


 「タチ…?珍しい苗字だね。…まぁ、それは置いといて、よろしくね!」


 「………私は『ミュシア・ロレリアン』。よろしく」



 さて、軽い自己紹介も済んだところで。


 「――で?ここへ来たは良いけれど、私は一体何をすればいいの?」


 と、これからの目的を2人に聞いてみる。


 「魔物を倒してほしいの」


 髪の色が青紫色になったリピルがうつむきながら言う。ミュシアもそれに頷き、それに補足するように、


 「リピルやそのお母さんがまわりに知らんぷりされるようになったのは、魔物が私たちを襲うようになってからなの」


 と、舌足らずな口調で一生懸命説明した。かわいい。


 「なるほど……それは、魔族と堕女神の関係性を示唆している可能性があるわね…」


 「?なにか言った?」


 「ううん。何でもない」


 堕女神と魔族との関係性。

 リピル達レーシュが忌み嫌われるようになった原因は、どうやらそこにあるみたいだ。

 どちらにせよ、私は魔物と戦う運命にあるのか……


 「でも、お姉ちゃんまだとても弱いから、あなた達を守れそうにないなぁ」


 本音を言ってみる。


 「大丈夫。ミムが弱い間は、私がリピルを守るから」


 「……え??」


 what!?

 小さいのに、立派だなぁ……

 きっとリピルと同じような戦闘力だろうのに、リピルを守るために…


 …ってか、私が弱いのがいけないのよね。

 これについてはどうしようもないけど。


 「私たちは、ミュシアがもしケガとかをして動けなくなったときに代わりに助けてくれる、守ってくれる人を探してたの。でも、みんな私のことを知らんぷりするから、なかなかそんな人が見つからなくて」


 「あ……そうなの。でも、お姉ちゃん本当に弱いよ?」


 これは誇張ではなくマジな話だ。

 何せ、私の現在のレベルは「マイナス」なのだから。


 「いいの。私のことをちゃんと見てくれる人が近くにいれば、それでいいの」


 目を閉じて、口にほのかな笑みを浮かべながら話すリピル。

 まだ幼いながらも、その姿の美しさに、私は思わず見とれてしまった。


 つやのある薄紫の髪を、三つ編みのおさげにしており(この世界にも“三つ編み”という概念は存在するらしい)、頬にはわずかにそばかすがある。

 麦わら帽子でもかぶらせてひまわり畑に立たせれば、何とも美しい絵になりそうだ。

 右目の瞳は生命力にあふれた鮮やかな赤色で、左目の瞳は森のさらに奥深くにあるような、深い緑色。さながらクリスマスカラーのよう。

 見た目はとてもおとなしそうな子だ。

 …さっきのマジギレした子と同一人物とは思えないほど。


 「……じゃあ、行こっか」


 ミュシアが無表情なりに覚悟を決めた顔で私たちに言った。


 私たちの冒険は、これからだ――





 …最初の方は、ルキ達との冒険が始まる~的なことを言っていたが、しばらくのメインはこちらのようである。

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