Story16 友達


 「――とにかく、私に何かを伝えようとしているんだよね」


 私は何度もその子に話しかけるが、一向に話す気配はない。


 「う~ん……」


 困ってしまった。

 助けを求められても、肝心の助ける動機が分からないと何もできないからなぁ……


 「……友達」


 「え?」


 「…友達を……助けてほしい……」


 上目づかいでこちらを見るその目からして、嘘はついていなさそうだった。


 「友達……?」


 コクリ、と頷いたその少女は、私の手を引っ張って歩いていく。


 「ち、ちょ!?ど、どこ行くの!?」


 少女は無言で、しかし明らかに目的があるような足取りで、私を引っ張っていくのであった。


~・~・~・


 「……ここが、あなたの言う『お友達』がいるところなの?」


 少女に尋ねると、コックリとゆっくり、大きく頷いた。


 路傍にちらほらとボロボロの服を着た頬のこけた子供たちが見られ、同じようにボロボロの服を着た大人たちは皆こちらを怪訝そうに見ていく。

 私が泊まった宿のある都市部とは真逆の場所。


 そう、ここは前の世界で言う「スラム」。

 極貧層が過密化した地区。

 こんなの授業でしか聞いたことがなかったし、教科書の写真でしか見たことがなかったけど、いざ見てみると思いのほかひどい。


 「……早く」


 そう言うと、少女は私の手を引っ張ってまっすぐ歩いた。


 ビルやアパートはところどころ塗装が剥げ落ちており、また、なんとか形を残している店もルシェのそれと似ていることからして、かつてはここも栄えていた都市部だったことが窺える。

 一方、そこに住んでいる人々を見ると、皆髪の色がせており、瞳の色も輝きを感じない。濁っているようにさえ見える。


 思えば、私の手を引っ張る少女の手も細い。

 私のいた世界で見た同年代の子供のそれは、もっとぷっくりしていたと思う。


 途中、大人たちがこちらを襲うタイミングをちらちらと窺っているような場面が見られたが、その際、少女が私をガードするように歩いていた。

 それを見た大人たちは、私を襲うのを諦めたみたいだ。


 え、この子、なんか権限持ってる系?


 疑問に思いながら歩いていると、老朽化してボロボロになったマンションの一角に案内された。


 「ここに……あなたの『お友達』がいるのね?」


 マンションの中の階段を上がりながら、少女は静かに頷く。



 ……3階くらいまで来ただろうか。


 ある部屋のドアの前で、少女は止まった。

 階段を下りて2つ目のドアだ。


 ――コンコンコン。コンココン。


 少し特殊なノックだな、と思っていると、ガチャン、と鍵が開く音がした。

 音からして、かなり重そうだ。


 「ミュシア、おかえ………」


 笑顔で少女を迎えた同じくらいの身長のその少女は私を見て、ドアを開けたまま固まった。

 そして、私自身も固まった。



 紫の髪に、右目が赤色、左目が緑色のオッドアイ。



 ――それは、彼女が他種族から忌み嫌われる「レーシュ」であることを示していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

新規ユーザー登録無料