Story14 決裂


 「え……?」


 その、レーシュとか言う種が、この世界を滅ぼそうとした?

 いったい、どういうことなのか。


 【……まず、宿を取ってから、この世界の「昔話」をしよう。この話は、人前で話すこともはばかられるんだ】


 ハピィは小声でそう言った。

 数十分後、お金的にもサービス的にもそこそこな宿に泊まり、私たちは借りた部屋にあった机の周りに座って、ハピィの言う「昔話」を聞くことにした。




 ~・~・~・


 この世創られし時


 二人の女神争いけり


 ついにはゆゆしきいくさ起こりけり


 負けりける女神は「堕女神」、勝ちける女神「大女神」と名付けられける


 ~・~・~・





 「……つまり?」


 【…つまり、この世界が創られるときに、ある2人の女神様がどちらがその世界を治めるかを巡って争われたんだ。その際、負けてしまった女神様を「女神」、勝った、つまり今現在この世界を治めている女神様を「大女神」と昔の人は言い分けたのさ。その後、堕女神はこの世界のどこかに堕とされ、今でもこの世界を呪い続けているという。レーシュは、その堕女神の呪いを受けている、と言われる忌まわしき種なのさ】


 ……堕女神の言い方が何ともギャグっぽくて困るが、こちらの世界では大真面目なんだろう、ルキも笑わないで真剣な顔をしていた。


 ――ほう。そんなに嫌われているということは、レーシュはよっぽどひどいことをしてきたんだな?

 …そうだよな?


 「……で、その証拠は」


 【え?】


 「だから、そのレーシュ、とか言う種が過去に、他種族に、どういう悪影響などを及ぼしてきたのか知りたい、と言ってるの。あなた達がそれほどまでに嫌うのなら、それ相応の悪事を働いてきたんでしょう?」


 そう言い、迷わずハピィを直視する。

 すると、ハピィは少し目をそらして、


 【いや…そういうのは、聞いたことが、ないけど……み、皆が、嫌って、いる、から……………】


 私の強気の視線に押され、だんだん声が小さくなり、最後の方はほぼ聞き取れないほど小声になっていた。

 それを聞いて納得した私は、


 「―――ああ、ああ。そうですか。あなたたちは、所詮そういう性格だったんですね」


 と、冷たく2人を突き放した(別に某クジャクヤママユの人を思い浮かべて言ったわけではない)。


 ―――ガタッ。


 「……え?ちょ、おいっ!」


 席を荒々しく立ち上がり彼らに背を向ける私に、ルキが理解できない、というような声色で私を引きとめる。


 「私、そういう、他人がそう言っているからって、それを疑おうともせずに鵜呑みにして、その種を仲間外れにしてる奴等やつらなんかと、これからの行動なんてしたくない、と思ったので。――でも、せっかくお金は払っていることだし、一晩をここで過ごさせていただき、翌日の朝には一人で行動しようと思います」


 振り返らずに、静かに、しかしその声に確かに怒りを込めて2人にそう宣言した後、私は一人でベッドに潜り込んだ。





 ――あぁ、ここの人たちも前の世界の人たちとさほど変わらないな。


 周りの偏見を鵜呑みにして、差別する。


 まだ確かな証拠があるならまだしも、何の確証もなく、自分で少しでも疑うことをもせずに、嫌う。



 ――その人を擁護して、自分も、周りから同じ扱いを受けることを最大限に疎んじて。


 私、そういう人って本ッッ当に嫌い。


 そんな人たちとは絶対に、断じて、行動を共にはしたくない。


 そして、その「レーシュ」を、そんなくだらない偏見から救ってやりたい。


 毛布をかぶりながらも怒りが収まらない私の頭の中は、そのことでいっぱいいっぱいだった。

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