Story13 忌まわしき種


 ――シュアンダ大陸中央部、大陸内最大の国・キュルケール共和国北部の首都、「ルシェ」。


 そこは、主な人族の生息地であるシュアンダ大陸内では一番文化が発展している都市である(ちなみにルキ達の家があったり私が転移させられた場所はその南東部にある「ルイスラルド」)。


 それだけに、出入りするときには厳重な審査を受けなければならない。


 また、主な出入り口以外には強力な結界が張られており、どんな魔力や物理的な力もはじくため、中に住んでいる住人は皆安心しているらしい。


 ……いやその結界、めっちゃ強い奴、例えば魔族の幹部とかには効かなくて、簡単に突破されるフラグがちょっと立ちかけてるんですがそれは。


 そんな無粋な心の中でのツッコみをよそに、ルキ、ハピィ、私の3人は審査を受けた。


 しかし、審査、とはいっても、自分たちの周りを、額に一本の角の生えた犬のような生物(ホンドーガ、というらしい)に嗅ぎ回られただけだった。

 あんなザル警備でいいのか、と余計な心配をしていたところ、ハピィとルキが説明してくれた。


 【あのホンドーガは、もともとは魔物なんだ。でも、長い年月をかけて人族が家畜として改良を加えていき、今では愛玩動物として国の利益を支えているほどの人気ぶりなのさ】


 「ホンドーガは鼻がいいんだ。さっきの入街審査では、魔族特有のにおいを感知すると吠える。もともと魔物、つまりは魔族だったからか、同類のにおいには敏感らしい」


 なるほどね。

 前の世界で言う、麻薬探知犬みたいなものか。

 ここでは、魔族探知犬、的な?


 「魔族ってそんなに臭いんですか?」


 【ハハハ。頭脳が発達した代わりに野生の本能がにぶってしまった人族には、なかなか分からないと思うよ。かろうじて検知できる人族は、今だと、古来から原始的な生活を続けている人族とか、魔物を研究するために、日々魔物と戦ったり触れ合ったりしている人族くらいじゃないかなぁ】


 「ちなみに俺も、ほんのちょっとだけなら分かるぜ。なにせ近くに魔物がいらっしゃるからな」


 ルキがハピィの方をちらりと見てニヤリと笑う。


 【むぅ~。体は常に綺麗にしてるつもりなんだけどなぁ】


 不満そうにしながらも、自分の体をくんくん嗅ぎまくるハピィ。

 自分のにおいは、案外自分では気づきにくいものだ。


 「……さて、そんじゃまずは、宿を探すか」


 街中をきょろきょろしながら歩きだすルキとハピィ。

 私はそれについていきながら、軽く街並みを見渡した。



 まず、街の中には人族の他にエルフ、族と見られる種族も歩いていた。

 それ以外がいるとしたら、愛玩動物としての魔物ぐらいだろう。


 長耳族は、その名の通り耳が横に長く、さながらゼ○ダみたいだ。

 私が見た限りでは美男美女が多い気がする。

 目の色は赤や青、黄色や緑など色とりどりだ。

 肌の色は人族と同じくらいで、でも色白だ。


 鬼族は、まぁ想像通り、頭に角を生やしていた。しかし個人差、ならぬ個鬼差があるらしく、1本タイプと2本タイプがいる。

 角の形・大きさにも差があり、基本的には子供から大人にかけるにつれて角が大きくなっていく傾向にあるようだ。


 顔は…長耳族に比べると老若男女問わず、いかつい表情をしている人が多いみたいだ。


 こちらは長耳族とは異なり、肌の色は赤っぽいのと青っぽいの、緑っぽいのと黄色っぽいのがある。そういえばさっき赤、青、黄の肌の色の子鬼たちが楽しそうに遊んでいたがどこかのアニメで見たことがあるような。



 次に外観。


 全体的な見た目は、異世界あるあるな中世ヨーロッパ風。

 一番文明が進んでいるルシェでこうなのだから、他の地域は更に昔の風景なのだろう。


 屋台のように魔物の皮?と思しきものでひさしを作り、たくさんの店が隣り合って存在している。


 店主は男もいれば女もいて、本当に様々な種族がいた。



 また、人族もすべてが黒髪に茶色い瞳ではなかった。


 「……この世界では、人族も様々な髪色、肌色、瞳の色があるんですね」


 「そうだな。俺も、金髪緑眼だしな。――だが、この世界では、『忌み嫌われてきた種』がいるんだ」


 「『忌み嫌われてきた種』?」


 【「レーシュ」さ】


 ハピィが呟く。それはさも忌々いまいましそうに。


 「レー、シュ?」


 【紫色の髪に、左右の瞳の色が違う種族のことさ。なぜか、どの種族でもとても低確率だが確かに存在するんだ】


 「紫の髪に、オッドアイ…か。とても目立ちそう」


 【そう思うだろう?――そうじゃないのさ。あいつらの髪―または毛色―は状況や本人の感情などによって変化するんだ。ただ、平常時が紫、ってだけで】


 「ふぅん。……で、なんでハピィはそんなに嫌そうな顔をしているの?話を聞く限り、特に害を及ぼしそうな特徴もないけど」


 【そうだね。今、ボクが話した中では、あいつらが嫌われる理由が分からないだろうね。……じゃあ、こう言ったらどうだろう?】


 ハピィが一呼吸おいて、衝撃的な事実を口にした。





 【――あいつらが、この世界を、ケスハムを、滅ぼそうとした種だった、と】

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