Story11 残虐で冷酷


 〚んん?今日はおかしな連中が釣れましたねェ〛


 その姿にふさわしいような、ややかすれた醜い声で話すその魔人。


 【「ディスタリザー」か、こいつは雑魚だね】


 軽く笑いながら話すハピィ。

 こいつ、雑魚なの……?


 すると急にルキは後ろを振り返り、私に話しかける。


 「おい、お前」


 「……ミム」


 「え?」


 「……さっきからお前、お前って。名前で呼んでください、不愉快です」


 「え?あ、そうか……。じゃ、み、ミム、もしお前にあいつの攻撃が当たってしまえば、ひとたまりもないだろう。だから、お前は精一杯身を守れ。そしてハピィ、お前はこいつを精一杯守れ」


 【もっちろん。力の限りをかけて、ミムを守ってみせるよ】


 「……そうか」


 フッ、と軽く笑ったと思うと、ルキはすぐさま振り返り、魔人――ディスタリザーと対峙した。


 〚――茶番は終わりですか?フワァ~、あくびが出てしまいますよ。待ってあげただけ感謝するんですね〛


 「フン……お前はこれから俺たちに倒される運命だってのに、ずいぶんと余裕そうだな?」


 煽るルキ。


 〚人族風情が何をおっしゃる。――どうやら貴方がたは、我ら魔貴族の真の力をご存じないようですね……〛


 といって、何か力を溜めているようなフォームに入るディスタリザー。

 しばらくすると、彼の周りに緑色のオーラのようなものが漂い始めた。


 〚貴方がたなんぞ、わたくしのこの一撃を食らえば命のみでなく、体もバラバラですよ?〛


 こちらを見てニヤリとするディスタリザー。

 それを見て私は背筋が凍った。


 え、序盤からヤバくない!?

 最初にエンカウントした敵が、なかなか強そうなんだけど!!?


 で……でも、ルキらにとってはこいつはただの雑魚敵同然!

 ……だよね??


 「ほう……ならばその実力、見せてもらおうか!」


 叫ぶルキ。


 ……あのぉ、こいつ、所詮雑魚敵なんですよね?


 いいんですかね?しょっぱなからRPG中盤以降の敵のようなセリフを使っちゃって。


 そう思いながら呆然としていると、体に緑のオーラをまとった、いかにも強そうなディスタリザーがこちらに向かってきた。

 爬虫類だからか、割と早い。


 「フン、返り討ちにしてやるぜ!!」


 そう言ってディスタリザーに向かうように走り出すルキ。


 ――ジャキン。


 〚ぐわぁぁぁぁっ!〛


 刃物の音がしたと思うと、ディスタリザーは数メートル先まで飛ばされていた。

 そして、かつてディスタリザーのいたところには、緑色の液体が散らばっていた。


 「……命が惜しくば、さっさと魔法を解除しろ」


 倒れているディスタリザーのあご(?)に剣を向け、脅すルキ。


 〚人族ごときに…命令されて…やすやすと…解除するわけが……ない、でしょう………〛


 魔族のプライドゆえなのだろうか、ルキの言うことを聞こうとはしない。


 「そうか……ならば仕方ないな」


 小さくそう呟いたかと思えば、ルキは迷いもなくディスタリザーに思いっきり剣を刺し、とどめを刺した。


 ディスタリザーは、緑色の液体を口から吹き出し、「ぐはッッ!!」と呻いた後、動かなくなった。

 と同時に、周りを覆っていた黒い何かがなくなり、先ほどまで私たちがいたところに戻った。


 「は、背景が……元に、戻った…」


 【さ、行こう。――それにしても、どうだった?ここに来ての生まれて初めてのバトルは】


 私たちは、その魔族の死体をよそに、歩き出した。

 ハピィがいたずらに笑う。


 「う~ん…元からグロ画像には耐性あったし、昔は生き物を殺してた私からすれば、想像の範囲内っていうか、何ていうか」


 【ミムの幼少時代がなんとなく気になる…】


 ハピィにやや引き気味で言われた。



 …一応誤解のないように言っておくが、決して私は生物を殺すことに快楽を覚えるようなマッドな人じゃないからな?

 皆さんだって子供の時に一度はアリなどの小さな昆虫を特に理由もなく踏み潰していませんでしたか?ソレですよソレ。


 ……え、ない?

 ま、まぁ、私の場合はおばあちゃんが農家で、「害虫残さず駆逐」系な人だったから、っていうのもあるかもしれないけど。



 ……話が大分それたが、正直言うと、危なかった。

 最高に気持ち悪かったし、想像以上にグロテスクだった。

 ぶっちゃけ、吐きそうだった。


 ――でも、それよりも、何食わぬ顔で魔物を倒したルキの方がはるかに怖かった。

 いくら倒し慣れているとはいえ、命を奪うときの残虐さが、冷酷さが、私にはとてつもない恐怖となって襲い掛かってきたのだ。


 「大丈夫……なのか??普通、そんなのに慣れていないセイフルゾークの奴らは狼狽うろたえたり吐いたり、時には発狂しちまうやつもいるってのに」


 「ええ、別に。――っていうか、そのセイフルなんとかの人々は、そこまでして魔族と戦いたいんですか?」


 【「セイフルゾーク」ね。セイフルゾークは、周りを大きな魔壁マージバリアで囲われたシュアンダ大陸内では最も安全とされる都市。でも、最近は魔族の気性が荒くなってるでしょ?だから、もしもの時の自衛用に、魔族との戦い方をハンターに習う人が最近続出しているんだ】


 「そんなのでSAN値ゴリゴリ削られるんなら、やんなきゃいいのに…」


 「……ま、念のため、ってやつらしい。さ、先を急ぐぞ」


 そして、私たちは、ここキュルケール共和国の首都・ルシェへとを進めるのであった。

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