Story10 初エンカウント


 私たちが民家を出たのは、正午は過ぎようか、というような頃だった。

 私がこの世界に来た時のように、ギラギラと太陽が輝いていた。


 ルキとハピィはかつてルシェに行ったことがあるらしく、迷うことなく進んだ。


 私はその後をついていく形となったが、なんとも解せない気持ちだった。


 「どうして私が、異世界なんかに……」


 ボソッ、と呟く私。それを拾ったルキは、


 「それはこの世界の謎だからなぁ。空間のひずみが生じて別世界からニズカが来る、ということしか分からんから何とも言えん」


 と言った。


 「それは、分かってますけど……」


 その後黙る一行。


 数分かしてから、ハピィが急に、


 【ほら、住宅街が見えてきたよ】


 と言ったので、私はうつむいていた顔を上げた。


 まだ遠くにだが、白い何かが立ち並んでいるのが見える。


 あれが、家、なのだろうか。


 「この世界の人族の人たちって、どうですか」


 「……ん?どう、って?」


 「え?えと……優しい、とか、厳しい、とか」


 そう。私がこの世界に来て以来、気になっていたのはそこだ。

 この世界の人族は、どんな性格なのか。


 「えーと……いい人もいれば、悪い人もいる、って感じかなぁ」


 そういうルキを見て、私はまた軽くうつむく。


 「……そうですか」


 【前の世界でも、そんな感じだったの?】


 「…前の世界では、この世界のように種族が分けられていません。言うなれば、人族が支配している世界、とでもいうべきでしょうか」


 「人族だけがぁ??支配ィ?」


 信じられない、といったような口調で言うルキ。


 【そんな世界から来たのか、それは大変だったね。……1つの種族だけが支配している世界ってのは、長く続いたためしがない。ミムはその世界の壊滅の前にこの平和な世界に来れたんだ、良かったじゃないか】


 「ま、もっとも、今じゃ平和、とはとても言えない状態だがな」


 それを聞いて、確かにそうかもな、と思った。


 前の世界では、日々が喧騒に飲まれていた。

 安寧なんて、どこにもなかった。


 世界のどこかでは戦争が繰り広げられ、争いが絶えない日はなかった。


 あんな世界は私に合わなかったのかもしれない。


 それに比べて、この世界はまだ文明が進んでいないからか、多くの自然が見られる。

 自然を見るだけで、人は癒されるものなのだな、と美夢は最近思い始めていた。


 「……ここでは、機械、みたいなものってあるんですか?」


 「き、かい……?なんじゃそりゃ」


 「……あ、知らないならいいです」


 【ここでは魔力を用いた魔道具マージツルを主に用いているよ。ルーも持ってたよね?】


 「……あぁ、これか」


 そう言ってルキが腰に刺していた剣を抜く。その瞬間、刀身が怪しく赤色に光り、なにやらオーラのようなものまで出ていた。さながら剣が「燃えている」ようだ。


 「これは『炎玉剣えんぎょくけん』といってな、この世界ではレアものに入るな」


 「レアもの……」


 レア。

 あの、何回ガチャを引いても出てこないレア。


 この世界でも手に入れることは相当難しいのだろう。


 【この「玉剣」類は、世界のあらゆるところに存在する自然の精霊に認められし者だけが特別に手にすることを許される剣。ルーは、炎の精霊に認められた、「えん性龍級剣士」であり、龍級の中ではルキだけが玉剣を持つことを許されているんだ。さしずめ、彼が現時点での炎性龍級剣士としてはトップ、ということだね】


 またトップか。こいつ、こんな見た目してて実は結構すごいのかもしれない。


 「あ、あの、聞きたいことはいっぱいあるんですけど、まず龍級とか、神龍級とか、それってどういう…??」


 そう。

 ハピィは魔法を使え、ルキは炎性剣士だという。

 その、位のようなものに興味がわいたのだ。


 【この世界では、魔族以外の剣士・魔術師には位が与えられるんだ。一番下から、下級、中級、上級、最上級、特級、聖級、天級、龍級、神龍級、ってね。ボクは魔物だから、位は与えられないけど、もし人族や鬼族、長耳族などが使ったら、神龍級、ってことになるね】


 「ということは、ハピィの『神龍級』は認められたものではなく『自称』、ってこと?」


 【まぁ、悪く言うとそういうことだね】


 魔族には位が与えられない……?

 それほど魔族というのは、他の種族に比べて異質な存在、ということなのかな…?


 「なるほど……じゃあ、炎性、って?」


 「この世界に存在する自然の精霊には、『炎』『水』『風』『地』『雷』がある。剣士や魔術師たちはこれらのどれかの性質に就くことが義務付けられている」


 「……ということは、私も……?」


 「あぁ。…でも、まぁまだお前はこの世界に来て少ししか経っていない。ゆっくり、自分に合う性質を見つけていけばいい。さ、急ぐぞ」


 「は、はぁ……」


 ~・~・~・


 その後、1時間ほどは歩いただろうか。緩やかな坂が続いており、少しずつ私たちの体力を削っていく。


 住宅街は見えるのに、そこまでの道のりが異様に長い。


 「……こりゃ、近くに『距離を操る魔物』がいるようだな」


 「えっ?」


 もう魔物出てくるの?まぁ、RPGっちゃRPGっぽいけど。

 あの住宅街に着くための中ボス的な?


 【距離を操って、俺達を安全な住宅街から遠ざけようとしているようだね】


 あ、やっぱり中ボスか。


 それまでには、そこら辺の雑魚敵でレベルを上げないといけないと思うんだけど……

 いや、ルキ達レベル高そうだからいっか。


 「……でも、姿が見えませんけど」


 辺りを見回すが、どうも魔物らしき姿は見当たらない。


 【……そうだね、何か怪しい】


 「こりゃ、どこかに罠があって、それに俺たちが引っかかるのを待ち伏せしてるんだろ……ってうわぁぁっ!?」


 急に目の前が真っ暗になり、そして次の瞬間、その暗闇の中に、トカゲのような、カエルのような、何とも言えない姿の魔物がいた。

 ――いや、2本の足で立っているからこれは魔人か?

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