Story8 旅の準備


 「―――なるほど、それで?ハピィ、こいつを治すのにかなりの魔力を使っちまったのか?」


 私たちが目覚めた後、おいしそうにルキお手製のシチューを食べるハピィに尋ねるルキ。


 ちなみに私はというと、本心はあまり気に入らない奴の作ったものなど食べたくなかったのだが、疲れていたし、体は正直だったため、しぶしぶ食べていた。

 今までの冒険で培ってきた料理経験からだろうか、このシチューは割とおいしかった。


 【いやはや、申しわけない。……それにしても、ミム、君、よく倒れただけで済んだよね】


 「え?」


 【ボクたちが通りかかったとき、君は息はしていたものの体中に致命傷と思われる傷は見られなかった】


 「そういえばそうだったな」


 さっき、レベルを上げる魔法を使ったことは、ハピィとの秘密にしている。

 だから、さっき眠ってしまったのは大魔法を使ったせいではなく、あくまで私を治すのに相当な時間をかけてしまったから、ということにしているのだ。


 「あぁ、あれは確か、亀みたいなのに殴られて……気づいたら、ここにいたんです」


 「亀……?」


 「う~ん、甲羅にキラキラしたのが付いたやつ」


 「………そいつってまさか、ジュエトルのことか?」


 【あ………】


 絶句し、少し青くなるハピィ。


 ……あ、そうか。

 確かジュエトルはこの世界で最弱の魔物。


 そんなのに一発殴られただけでKOとか、そんなことがこんなやつにバレたら私はもうおしまいだ。


 どうしよう。


 私も青ざめていると、ハピィがそれを取り繕うように、


 【…どうやら、彼女は弱いニズカらしい】


 「…?どういうことだ?」


 【これを見てくれ】


 といって、ルキに何かモニターのようなものを出した。


 「これは………!!お、お前、よく生きていたな!」


 モニターと私とを交互に見て驚くルキ。


 ……何を見ているのかな?


 「……お前、10でここに来たのか!?こんな数字見たことないぞ!!?」



 ………え。


 固まる私に、ハピィが手を合わせて申し訳なさそうにしている。


 れ、レベル……そしてここは異世界………


 も、もしかして………あの、モニターみたいなやつって……



 「わ、わ、私の『ステータス』ゥゥゥゥゥ!!?」



 え、は?ふざけないで!?

 マジでステータスとかプライバシーだぞ!?個人情報だぞ!!?

 しかもよりによってあいつに知られるなんて!!


 【さ、さぁ、これで分かってもらえただろ?】


 即座にモニターのようなものを消すハピィ。

 気のせいか、こちらとは目を合わせようとしない。否、私が睨みつけているため目を合わそうとしないのだ。


 「…そうか」


 急に真剣な声色になったルキに、さっきまでの私の怒りも、ハピィの焦りも吹き飛んだ。


 「……な、何ですか、急に」


 「――これからの旅をする上で、お前に分かっていてほしいことがある」


 ルキは私にゆっくり言い聞かせるように言った。


 「分かっていてほしい……こと?」


 「ああ。まず一つ。これから俺たちは魔物討伐の旅に出る。この世界の実情ってのを、知ってもらうためだ。……だが、お前のレベルを見て、『今は』俺と一緒に戦うのは絶対に不可能だ、と判断した。だから、お前は常に俺の後ろについて行動していてくれ」


 「後ろ……?」


 「戦わずとも、俺の後ろについて魔物と対峙し、そいつを倒せば、俺と同じ経験値がお前に入る。それで徐々にレベルアップしていくんだ」


 「な、なるほど」


 いや~、やっぱりRPGだわこれ。

 つまりは、パーティを組んで行動しろ、ってことでしょ?



 っていうか、落ち着いて考えてみたら、私、レベル-10なんだ……赤ちゃん以下なんだ……


 生きてるのが奇跡、なんだ…


 ……でもさっき、ハピィが少なからずレベルを上げてくれたはず。


 いや、まさか、ハピィの全力をもってしても私のレベルは-10だっていうの!?


 私、本当にこの世界で生きていけるのかなぁ……??


 「お~い。……おい?」


 「は、はいっ!?」


 思わずビクッとして、うわずった声が出てしまう私。


 「……考えすぎもほどほどにな」


 そんなことを気にも留めずに、続きを話すルキ。


 「それと、なんか特別な用事がなければ俺から離れないこと。これも必要事項だ」


 「……そうですね…」


 むぅ……いつもこいつと一緒にいないといけないのか……

 まぁ仕方ないのは分かってるけど……


 【いざとなったらボクがミムを守るよ】


 ハピィもそれなりの覚悟を決めているようだ。


 「よ、よろしく……お願い、します………」


 やや上目遣いで2人を見上げ、小さく礼をする。


 「おう。よろしくな」


 【よろしくね!ミム!】


 ルキとハピィが笑う。





 こうして、私とルキ、ハピィとの波乱万丈な冒険譚が始まるのであった―――。

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