Story7 絶望的なスペック


 【――これは……ひどい……】


 意識を取り戻した私にハピィが言った第一声がそれである。


 「えっ、どうしたの急に」


 【……まず、この世界での平均レベルを教えておこう】


 急に空気が張り詰める。


 【この世界では、人族の赤ちゃんのレベルは皆1なんだ】


 「は、はぁ」


 【しかしそのままだと、どんな雑魚敵の攻撃でも命を落としかねない。レベル1、っていうのは、それほど危ない状態なんだ】


 「えっ、じゃあ、生まれたばかりだと外に出すのもはばかられる、っていうこと?」


 【――そう。でも、普通は、赤ちゃんたちは生まれてからすぐに出生の祝いバースアップという儀式を行うことで、レベルは5程度となり、雑魚敵程度になら多少攻撃されてもすぐには死なないようになる】


 「………」


 ハピィ、急に真剣な顔(と言ってもサル)で赤ちゃんのことなんか説明してどうしたんだろ…


 ……ん?っていうか、今ハピィが話していたのは「赤ちゃん」のことではないの……??


 「…つまり?あなたは何を言いたいの?」


 ハピィは大きなため息をつきながら言った。






 【―――君、レベルがいってるんだよね】






 …………………



 「……え?」


 【……だから、君のレベルがマイナスになってるんだ】


 目をそらして申し訳なさそうに頭をポリポリとかくハピィ。


 「………」


 ……理解できない。

 一体どういうことだ?


 「……いやそれ今生きてるのが限りなく奇跡じゃないですか」


 【……そういうことになるね】


 「…いや冷静だね!?これ私にとってはとんでもない死活問題なんだけど!?」


 下手すりゃ(というかしなくとも)日常生活で死んじゃうレベルだよこれ!?

 お料理しようとして手切ったらガメオベラするよこれ!?


 ……なんかもう、生きる気力失せてきた。

 これもう呼吸してるだけで細菌感染して死ぬんじゃないかな…


 【……この世に絶望した、って顔だね。まぁ、これじゃ絶対にこの世界では生きていけないだろうね。……ハァ、仕方ない。これまでにない緊急事態だし、特別にボクの神龍級魔法・身体上限上昇魔法リミッタ・リモーヴァルでレベルを上げてあげよう】


 「リミッタ……リモーヴァル?」


 【ボクたちアーミンモンクは、魔族というよりは長耳族に近い部類。だから、治癒魔法を扱うことに長けていてね。特にボクみたいな貴族出身だと、この世界での最上級魔法・「神龍級」の魔法が使えるようになるんだ】


 「へぇ~……ってあなた、貴族出身だったの!?」


 【まぁ、一応ね。ご覧のとおり、アーミンモンク族は魔族では数少ない「言語を話す」魔物。それだけ、文化も進んでいるのさ。いつか、ボクの故郷を見せてあげるよ】


 その魔法を使えるのが貴族出身に限定されているのは、貴族であることで様々な種族から魔法を習えるから…なのかな?

 まぁ、それはともかく、ハピィのような高等な頭脳を持った魔物が築いた文化というのにも、興味がある。

 ぜひ、行ってみたいものだ。


 「……そ、そう。楽しみにしてる」


 少しほほ笑むと、ハピィが固まった。


 【君……その笑顔は……】


 ハピィがその続きを言おうとした、その瞬間。


 「おぉ~~~いっ!!ちゃんと寝てるか~~~??」


 階段の下からルキが叫んだ。


 その声でハッ、と我に返ったハピィは、


 【大丈夫だよ~~~!!】


 と叫んでから、


 【さぁ、急ごう。この魔法は、必要性がない限りは知られてはいけない秘密の魔法なんだ。魔法をかける相手――君以外に、そう、ルーにさえ知られることは忌まわしきことなんだ】




 ――そう言って、再び私の目の前は白に覆われた。


~・~・~・


 「お待たせ、ご飯できたよ~、って………」


 意気揚々と木でできたプレートのようなものの上に食べ物と飲み物を乗せてやってきたルキは、目の前の異様な光景に思わずフリーズする。


 「2人とも、一体どうしたってんだよ…」





 ――美夢は急にレベルを上げられたことに体が付いていかなくなり、ハピィは魔力を大量に消費したせいで、2人ともぐっすり寝ていた。


 「……オイオイ、勘弁してくれよ……せっかく作ったシチューが冷めちまうだろうが……」


 今までの生活の経験により作った栄養満点のシチューを手にしたまま、ルキはうなだれた。

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