Story5 追究心


 「は………??」


 急な提案に、私は思わず声を上げてしまった。


 「なんで、あなたなんかと……」


 「……ここはもう、お前がいた世界ではない。この世界に来たのなら、この世界なりの生き方をしないとダメだからだ」


 「……それは確かに、そうですけれど…」


 反論できない。

 冷静になって考えてみると、ここは前の世界とは違う世界。


 ……今まで通りの生き方では絶対に生き残れないだろう。


 「…さて。まずはこの世界の種族についての説明をしようか」


 そう言って、ルキは一つずつ、丁寧に説明し始めた。


 「……まず、この世界には多種多様な種族がいる。大きく分けると、『じん族』、『魔族』、『長耳族(エルフ)』、『族』の4つだな。魔族以外は皆高い知能を持っていて、ある程度のまとまった住処を作って暮らしているんだ。…まぁ、魔族にも一応、知能があるものもいるがな。『獲物を狩る』という本能に従って生活しているものがほとんどだから、用心するに越したことはないぞ」


 「………」


 顔を背けて窓の外を見ながらも、話に集中する。

 この世界の種族について抑えておくことは基本中の基本。

 生き残るためには必須な情報だからだ。


 「エルフはどちらかというと人族に近く、鬼族は人族と魔族の中間のような種族だ。ちなみに、魔族についてだが、2足歩行をする奴を魔人、それ以外を魔物と呼んでいる。言語を話せるのはほとんど魔人だな。しゃべる魔物、なんてのは、とてつもなく少ない」


 ……なんか、種族構成がテンプレだな。THE☆異世界、って感じ。


 「んで、俺は詳しいことは分からねえんだが、各種族には代表がいるんだ」


 聞き慣れない言葉に思わず視線を彼の方に戻し、聞き返す。


 「……代表?」


 「ああ、そして彼らは『四天王』と呼ばれている」


 4人いるから四天王、か。

 なんか強そう。いや強いんだろうけど。


 「今まで、彼らは月に一度集まって会議をする。それによって、今までこの世界は平衡を保ってきたんだそうだ」


 「…つまり、各種族の代表同士で話し合うことで種族の平等を保っていたんですね」


 「多分そういうことだ。だが、最近、魔族の代表者が会議に出席しなくなり、それどころか魔族全体が他の種族を襲うようになった」


 魔族が他種族を襲うようになったのが最近…?

 それはつまり、魔族はかつては「他種族を襲うことはなかった」ということ……?


 「……それは、どうしてなのでしょうか」


 「さあな。細かいことは俺には分からん。まぁ、魔族が俺ら人族やエルフ、鬼族を襲うようになったのは、少なくとも魔族代表が会議に出なくなった時かららしい。これはあくまで噂だから、真相は分からんが。――少なくとも俺が生まれた時には、既に魔族は他種族を襲うようになっていたんだ」


 ……ふむ、謎だ。

 確かに魔物を倒す異世界ものは今まで色々読んできたが、この世界では魔物、すなわち魔族は昔は害を及ぼすものではなかったらしい。

 どうして今は私たちを襲うようになってしまったのか、非常に興味がある。


 「…旅に出ましょう」


 ボソッとそう呟いた私に、ルキが目を丸くする。


 「…へ?どうしたんだ急に??さっきまで行きたくない、みたいな雰囲気出してたのに?」


 「……私、一度何かについて疑問を持ってしまうと、答えを知るまで追究しないと気が済まないんです」


 真顔で答える。


 「そ、そうか……まぁ、お前がその気になってくれたならそれでいいのだが……」


 軽く頬をかき、何とも不思議そうに顔を傾げるルキ。


 あいにく、私はそういう性格なものなんでね。 


 ということで、私は早速準備をしよう、と起き上がろうとした。


 だが。


 「……痛っ」


 体はそれを許してはくれなかった。


 「ああ、無理するなよ。一応ハピィの治癒能力ヒーリングで命に別条がない程度までは回復させたが、それでもまだ数日の安静が必要だからな」


 「そんな……っていうか、ハピィって誰ですか」


 「こいつだよ」


 そういって彼が左肩の近くに右手を持って行くと、今まで姿を消していたのだろうか、急に彼の手元に手のひらサイズのサルが現れた。

 大きさは15センチくらいで、色はうすい茶色、両手両足とお腹が白く、長い尻尾の先は黒くなっている。


 「…!!?」


 思わずびっくりした私に、ルキは笑う。


 「こいつは『アーミンモンク』という魔物の一種なんだが、崖の狭間はざまで震えていたこいつを俺が保護したんだ。そしたら、すげえ慣れちゃって」


 「ハピィ」と呼ばれるその魔物は、ルキの周りをちょこまかと走り回る。


 正直に言うと、かわいい。かわいすぎる。

 かわいいものに目がない私は、思わず目でその生き物を追ってしまう。


 「……お前、こいつが気に入ったのか。んじゃしばらく貸してやるよ。夜寝るときとかに、隣に誰もいないよりはマシだろうからな。その代わり!ちゃんと安静にしているんだぞ」


 そう言って、私にハピィを手渡すルキ。


 「それじゃ、朝飯作ってくるから、ちょっと待っててくれ。ハピィ、そいつの世話、頼んだぞ」


 【りょうか~い!】


 …ん?………んん??

 今のは聞き間違い……かな?


 【それでは改めまして、「ハピィ」です!よろしくね!】


 そのサルは、こちらを向いてはっきりとしゃべった。

 それはそれは可愛い声で。


 

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