Story3 命の恩人(仮)


~・~・~・


 「う……うぅ………?」


 私はとある家のベッドで目を覚ました。

 右側のすぐ近くに窓があり、そこからは優しく太陽の光が降り注いでいた。


 ボーッと窓の外を見ていた私は、ハッとする。

 そして、手を握ったり開いたり、何回も瞬きをしたり、自分の顔・体を何度もさすって、そして自覚する。



 「私……生きて……る?」



 そう呟いた瞬間、目から何かが止めどなく溢れてきた。


 ――涙だ。これも生きているからこそ、流れるのだ。


 生きていることがこんなに嬉しいだなんて。


 今までの日常では、決して体感できなかった感情。


 しかし、ここは誰かの家、ということは私はこの家の住人に助けられた、ということになる。

 なんてお礼をしたら良いものか…


 「……おっ、目覚めたか」


 考え込んでいると、不意に左の方から声がした。

 見ると、奥に木製のドアがあり、そこに腕を組みながら寄りかかっている1人の男の姿が見えた。


 「………あなたは」


 外見からすると、私と同年代くらいだろうか。

 しかし、容姿が日本のそれとは全く違う。


 髪に付くか付かないかぐらいの金髪(全体的には整っており、ところどころ髪がはねている箇所がある)に、綺麗な緑色をした目。少し褐色の肌。身長は170cmくらい。顔はまだ幼さを残している。


 「俺は『ルキ』、ってもんだ」


 「は、はぁ」


 「一応、この町のトップハンターとして前線で活動している。よろしくな」


 「あ、よ、よろしくお願いします…」


 ……ん?ハンター?


 「あ、あの、ハンターって…」


 「…え、まさかお前、ハンターを知らないのか!?知らないままここへ来たのか!!?よくそれでここまで来れたな!?」


 「………」


 あ~…こういうタイプの人マジ無理なんですけど…

 なんかこう、自分の価値観を押し付けてきそうな…


 そういえば、こんな奴、クラスにもいたっけ…


 「……おい、…おい?聞いてんのか?」


 「……あ?何か言いました?」


 ごめん、考え事してて聞く暇なかったわ。


 「お前…」


 そいつはちょっと肩を落とし、もう一回説明する。


 「いいか、次はよく聞いとけよ?――ここ『キュルケール共和国』は周りを『うめきの森』に囲まれているから、他の国に比べて魔物の出現率がすげえ高ぇんだ」


 ……キュル…?今まで割とまじめに世界史の授業は受けてきたが、そんな国は聞いたことがない。

 っていうか、ま、魔物…??


 「…いやちょっと待って、ここはどこです?」


 「…?さっき言ったじゃねーか、キュルケール共和国だよ。ちなみにこの町はルイスラルド、っつーんだ。ルイス、っていう伝説の人族がかつて魔族に支配されていたここを人族が住めるように手配してくださった。当時人族の住める地域はかなり限られていたからな、これは偉大なる快挙だったんだぜ」


 ややドヤ顔で興奮気味に語るルキ。

 いや、今はこの町の経緯なんぞ至極どうでもよくて。


 「ま、魔物って…」


 「……この期に及んで一体何を言っているんだ?…まさか、お前は魔物の存在も知らないままここまで育てられたのか?」


 呆れた様子でそう呟くルキに少しカチンとくる。


 「無知な娘で悪かったですね!」


 「まぁまぁ、そう怒るなって。無知なのは何もんだからさ。――分かった、とりあえず俺がいろいろ教えてやるから、ちょっと待ってろ」


 私に返答させる隙も与えずに、奴はすぐさまドアから部屋を出ていった。

 静かになった部屋で1人、私は静かに怒りを覚えていた。


 ――何なの、あいつ。

 初対面の人に失礼ね。私の一番嫌いなタイプだわ。

 礼儀も知らずに、ずけずけと人のプライバシーを侵害してくるような奴。


 しかもさっき、さりげなくお父さんとお母さんをディスったわね……?


 ……ダメだ、あいつとは絶対に気が合わない。っていうか私が一方的に気に入らない。



 今すぐにでもここを出てやろうと思ったが、運悪くまだ自由に動けるほど回復していないようだ。


 ………仕方がない。待つしかないか。

 今の状況は全くもって分からないけど、多分、この状況について知っておかないと今度は本当に死にかねないでしょうからね。



 ――それに第一、癪に障るが、あいつは私を死の淵から救ってくれた「命の恩人(仮)」だ。


 あいつがいなければ私の命は確実になくなってたんだ、は感謝しないとな。

 そう、は。


 最初はこいつにどう恩返しをすればいいか、と迷っていた私だが、今の私にそんな感情は微塵もなかった。

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