第331話 友達二人、出来るかな〜!
ダークエルフをレイセン魔術学園から追い出してはや一ヶ月。
俺とエナ、セルーアの三人は友好を深めつつ、飛び級試験に挑んでいた。中等部の生徒を無詠唱を覚えたエナが圧倒し、セルーアが余裕をもって打ち倒す。
『……余裕』
『僕は元々優秀な姉さんに師事を受けていたからね。正直この学園の高等部位の実力はあるつもりだよ』
『皆さん、それは良いのですが私だけ何で高等部試験何ですかねぇ?』
そう、二人には中等部の生徒が試験役に選ばれ、俺には何故か高等部の男子学生が試験官を務めるらしい。
ーーまぁ、デコピン一発で倒せそうなガリ勉エルフだけどね。
「あ〜! コホンッ! ロリカ君は少々事情が違っていてな。中等部の生徒だとどんな被害を及ぼすから分からないので、我が学園で最も優秀な生徒を試験官としたのじゃ!」
インメアンが気まずそうな顔をしている。アミテアから戻った時に俺は入念に今回の事と、俺の力については黙っておけと言った。
(青い顔をしながらだけど、確かに約束した筈なんだけどなぁ〜?)
俺はすかさず念話を発動して、女神の微笑みを浮かべながらインメアン学園長に向ける。
『ゴラァ! 俺を一般生徒と同じく扱えって約束したろうが⁉︎ 言い訳次第じゃ腹パンじゃすまさねぇぞムッツリ小僧!』
『ひいぃいいぃぃいっ⁉︎ だって、儂は止めたのにこの小僧が相手をするって聞かないんだよ! 王子に無礼な真似をしただのなんだの……あれ? 儂悪くなく無い?』
『ピコーンっと閃いた的な感じでホッと一安心している所悪いけど、生徒の暴走を止められない学園長ってどうよ? ギルティ!!』
『なんでさああああああああ〜〜っ!!』
動揺し過ぎてジジイの変幻が解けかけていたけど、俺は無視して眼前の生徒に視線を向ける。鑑定するまでもなく、弱者だなぁ。
ーーまぁ、ダークエルフの件も片付きそうだし、そろそろ頃合いか。
俺は振り向くと、エナとセルーアに悪戯を仕掛ける子供の様な笑みを見せた。どうせ正体をバラすなら、精一杯驚かせてやろっと!
『なんか、嫌な予感がする。セルーアは?』
『偶然だねエナ。僕もロリカ君の表情を見て、背筋がゾクゾクしたよ』
俺は次元魔術から『
「いつでもどうぞ? 大丈夫です。死にはしませんからね」
俺はローブを翻して、優雅にポーズを取りつつ挑発した。学園最強のエルフさんは挑発に乗る事なく、ブツブツと詠唱を始めており、魔力の規模から上級魔術を展開する気だろう。
これでも勉強して、その規模位は計れる様になったんすよ。
「私に舐めた口を聞いた事、ベッドの中で後悔するが良い! 『シンフレイム』!」
ーーゴオオオオオオオッ!!
「「「ーーーーッ⁉︎」」」
「なんで避けないんだ彼女は⁉︎ 防御膜すら張ってないぞ! 担架を持ってこい!」
周囲が騒ついてるみたいだけど、俺がこの程度で傷を負うわけないじゃん。デモンストレーションはこの程度良いかな? もうちょっと位調子に乗っても良い?
ーーパァンッ!!
「皆さん大丈夫ですよぉ〜! 見ての通り火傷一つ負ってませんから」
「「「「はぁああああっ⁉︎」」」」
大口を開きながら固まっている観衆に続いて、一人ワナワナと学園最強君が震えている。トラウマになっちゃうかな。まぁ、男だからいっか。
「嘘だ! 私の炎が掌で消されるなんて有り得ない⁉︎ 一体どんな魔術を使ったんだ! それとも、防具か⁉︎ 炎耐性の高い高級な防具でも身につけているんだろう!!」
「炎でも氷でも風でも大地でも好きな属性をどうぞ〜?」
俺はわざと気怠そうな声を出して、掌をひらひらと振る。まぁ、正直飽きてるしね。
「うわああああああああああっ!! 『アイスランス』!! 『ウインドアロー』!!」
「おいおい。無造作にばら撒くんじゃねぇよ。エナとセルーアに当たったらどうすんだ」
俺は神樹の杖を振ると、風の膜を貼って無数の魔術を撃ち落とした。そのまま一瞬で先輩の頸動脈を摘んで絞め落とす。
「魔術……一発くらい撃って驚かせたかったのになぁ」
試験会場が静まりかえってしまっており、俺はそのままエナの元へ歩いた。
「驚かせるには足りなかったかな? エナを苦しめてたダークエルフ達は俺が排除した。さぁ、傷を治してあげるから来て?」
「…………」
「ロリカ君。君は一体……」
無言のまま呆けているエナと、驚愕しているセルーアに向けて、俺は『女神の天倫』と『女神の翼』を発動する。そのままエナを空中に舞いあげると、『女神の抱擁』による完全治癒を発動した。
光が上空へ舞い上がる様にして、エナの喉の傷が癒えていく。だけど、思ったよりも時間がかかり、同時に何故か俺は虚脱感を感じた。
(なんだ? 魔力が吸い取られていく様な違和感がある)
でも、無事にエナの傷が癒えたのを確認すると、怪我を負ってから時間が経っていたことによる弊害程度に考えてしまった。
「どう? 多分もう話せるよ」
困惑しながら喉を抑えているエナは、本当に小さな吐息を漏らしながら、ゆっくりと発音した。
「……あ、ぁ、は、なせる。はな、せる!」
「無詠唱は覚えておいて損はない。だから、遅くなっちゃってごめんよ。俺の正体もバラしたくなくてさ」
「あ、りが、とう……」
「どういたしまして。こちらこそ、こんな俺と仲良くしてくれてありがとうね」
考えてみれば、俺は純粋に友達だと思える親しい仲の人間は家族以外にいない様に思えた。強いていうならクラド君かねぇ。
こんな風に穏やかな学園生活を送れたのは、エナとセルーアのお陰だと思う。
「んで、お前達は一体何をしてるんだ?」
エナとの感動の一幕が終わったら、眼下には土下座しながら平伏す面々がおり、インメアンだけじゃなくてセルーアまでもが地面に額を擦り付けていた。
「数々の無礼、誠に申し訳ございませんでした女神レイア様! 僕はどうなっても構いません! 姉のカルーアを咎めない様に平にお願い致します!」
「あぁ、そっか。お前カルーアの妹だったのね。よく姉さんの自慢をしてたのはそういう事か。ってか頭を上げろよ。俺はお前を友達だと思ってるぞ」
「そんな、僕なんかが女神様と友を名乗るなぞ、恐れ多く……」
出たよ。水戸○門の印籠出した後のアレだ。こういうのがウンザリするから正体をバラしたく無いんだよなぁ。
「セルーア。多分、ロリカは、そんなの、のぞ、んでないよ」
「えっ?」
「私、たちの前じゃ、ロリカな、の」
「……」
エナはやっぱり凄いなぁ。俺の本質をしっかりと見極めてくれてる。俺は地面に降り立つと、セルーアに握手を求めた。
「騙していてごめん。改めて、俺の友達になって欲しい」
「……僕達は、もう友達だよ!」
「うん、ありがとう」
こうして、俺は正体を一部の人間に明かした後、改めて残りの学園生活を過ごす事になった。他言無用を貫く様に先生と生徒達には穏やかな説得をしたつもりだ。
「なんで儂だけぇ〜!」
「黙れ。リコッタ姉さんに告げ口すんぞ」
「それだけはやめてぇ〜!!」
インメアンの頭部を踏みつけながら、女神の微笑みと威圧を同時に発動したので、多分大丈夫だろう。
寮への帰り道でエナに、「ロリカって、ドSなのね」なんて言われてしまったが、そこは否定したい。
何故か無性にチビリーに会いたくなったのは嫁達には秘密だ。
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