【第15章 ロリ女神の学園生活】
第316話 杖を手に入れよう! 前編
俺は以前にエルフの国の首都レイセンを訪れた際に宿泊した『森の恵み』という宿に泊まり、朝を迎えた。
相変わらず文明のレベルが違うと認識させられる程に、この国は快適だ。
魔力を流すと水魔術に変換されるシャワー。調整可能な調光にコンクリート製の建物。形は異なってはいるがドライヤーや、簡易的なアメニティーまで用意されている。
「料金が高いだけあって、至れり尽くせりだわな」
歯磨きをしながら鏡に映る自分をじっと見つめた。
低い身長のせいで洗面器に阻まれ首から下は見えないが、紛れもなく始めてこの異世界にやって来た頃のロリっ子が映っている。
胸を上から撫で下ろすと、JD女神の頃に比べてぺったんこだ。Aカップに逆戻りした現状に何故か悲しくなった。男に揉ませるつもりはないけどな。
嫁達はもっとガッカリすると思ったんだけど予想以上に興奮しており、俺は夜の営みの代わりにペロペロタイムが続き過ぎてキレたのだ。涎まみれにされて喜ぶ変態じゃねぇ。
その時の嫁達のショックを受けた表情を思い出しては、『俺が悪いのか?』っと疑問に思う。
その後、精神鍛錬という名目で各自が旅立ち、イザヨイに関しては俺を見て泣きだす始末。
唯一まともな精神を保っていたアズラは修行時代のトラウマが思い起こされたのか、顔が引き攣っていたので取り敢えずしばいておいた。
何故かコヒナタだけはやたらと喜んでいたが、それに関してはノーコメントである。
城を出る際に第二魔術部隊隊長のキルハから『私と一緒に秘薬を探す旅に出ましょう』と書かれた手紙を貰ったが、その場で破り捨てておいた。
絶壁と一緒にしないで頂きたい。俺はロリになっても成長を確定されたちっぱいなのだ。もう一度言おう。貴様と一緒にするな、と。
損傷した『
時間は掛かるが、より強固な神具として復活するとの伝言を受けて一安心だ。
そんなこんなで一週間後に控えたレイセン魔術学園の試験を前にして、俺が求めるのは『杖』だった。
今回の目的は出来うる限りの魔術のコピーとその『魔力制御』にある。
今までナビナナにステータスを管理して貰っていたが、俺は自分のステータスの中で魔力を如何に無駄にしているか最近気付いた。
だって、『滅裂火』と『天煉獄』さえあれば使う機会がほとんど無かったしね。
『
そして出力を自在に調整するべく研鑽を積むのだ。
本来魔術のエキスパートであるビナスやキルハに学べば良いのだが、聞いてみた所、二人は特殊な環境下で育っており、天才であるが故に意味不明だった。ようは説明が下手なのだ。
「バーンってやって、ドドドドどってなって、ズバーンだよ旦那様!!」
「……ピシャ〜〜って感じ?」
首を傾げられても困る。それは俺の方だっつの魔力馬鹿どもめ。
「はぁ〜〜。入学試験って何すんのかなぁ……」
レイセン魔術学園では、二ヶ月に一回初等部から高等部までエスカレート式のエルフと違って、他種族へ向けて中途編入の試験が行われていた。
合格すればその年齢に見合った学級へ振り分けられる形になる。
今までは獣人族や亜人種族のみに門戸が開かれていたのだが、同盟を機に人族も取り入れるようになった。最も魔力の差があり過ぎて、未だに学園で人族の入学はない。
魔人の生徒はチラホラいるらしいが、それは元々学園に通っていた将来的に魔術部隊を目指す者達だ。
俺はその第一歩として、学園の視察をしつつ人族排他の精神を軽減し、より良い方向へ更生させられれば良いと考えている。まぁ、基本的にテンプレを楽しみたいだけで好き勝手やるけどね。
「さぁ、取り敢えず魔術師っぽく見える杖を探しに行くか」
顔を洗い終えると迷死狐のローブを羽織る。このローブは紅く、確かに目立つが『霞』のスキルを使えば相殺される。
特に『自動修復』の恩恵によるものか、俺の幼い身体のサイズに合わせてくれるのが良かった。
出不精という訳ではないけれど、城の煩いメイド隊がいない今、ローブの下はシンプルな白シャツにハーフパンツ一丁だ。
髪もポニーテールに纏めて終わり。フードを被るからどっちみち無駄じゃい。
だけど、胸元に煌めくネックレスだけは外さないでいる。セイナちゃんの形見と思い大事にしている『
「杖は欲しいけど、あんまり物欲が湧かないなぁ……格好良く無いし」
俺は剣や物理に属した武器が好きだ。だから杖ってものに殆ど興味がなく、ひいては一学園生として演技もしなければならないので高いランクを求めてはいなかった。
魔術師のローブならば、今着ている『迷死狐のローブ』を超えるランクの装備は凡そ見つかりはしない。
マダームは蛙魔獣か魔女の呪いにかけられているが、腕は確かなのだ。先日調子ぶっこいて俺の名前を使ってイケメンオンリーの弟子を従えまくってたから、強烈なビンタをかまして泣かせておいたしね。
きっと反省はすまい。『あんたの注文が鬼すぎる所為だわね!!』っとか文句ばっか言ってたし。まだ甘かったか。反面教師にしよう。
「あら、おはようございますロリカ様。今日は良い天気ですよ。この後のご予定は?」
二階からの階段を降りると、宿の女将さんが声を掛けてきた。エルフであるのに少しポッチャリとした体型をしており、美しさが若干霞む。エルフは見た目と年齢が違いすぎるので、敢えて年は聞かない。
それでも頬に手を当てて穏やかに微笑む仕草をされると、こちらまで釣られて笑顔になってしまうので穏やかな気性が伺えた。
エプロン姿もいいものだ。
「おはようございます。試験に向けて杖を見に行こうかと思いまして。先日の襲撃で持ち合わせの杖を折ってしまいましたから」
「魔術師にとって杖は生命線ですものね。それでしたら……地下街のグラセルド様の店など良いと思いますよ。私達も生活用品を依頼しておりますが、錬金術師として腕は折り紙つきです」
「女将さんのお勧めでしたらきっと良い腕なのでしょうね。『
「えぇ。値段的にもお手頃よ。それではいってらっしゃい」
「はい。いってきます!」
宿を出ると地図を片手に商業通りに向かった。首都レイセンに来る時はナビナナが案内してくれるか、誰かしらお供がいたので、一人だと迷いそうだった。
女将さんが地図に印をつけてくれたので、観光がてらのんびりと通りを進む。上空ではエアロバイクが飛んでおり、正直言って羨ましい。
以前に購入したエアロバイクは、手足が短くて一人で運転するのが困難だったから諦めた。
フードの隙間から屋台を覗き、美味しそうなお店をピックアップして地図に印をつけつつ歩いていると、『グラセルドの工房へようこそ!』っと書かれた横看板を見つけた。
木造二階建てのシンプルな造りをしているが、所々に修繕した様な箇所が垣間見える。
治安が荒れているようには見えず、一体どうしたのかと疑問に思ったが扉を開けて中へ入った。
「いらっしゃいませ! おや? これはまた可愛らしいお客様だね」
「初めまして。森の恵みの女将さんから紹介されて来ました。学園で使用する杖を探しているのですが……」
「おや、入学試験を受けに来たのかな?」
「はい。一週間後なのでそれまでに慣れたいと思ってます」
グラセルドは年齢不詳だが金髪と眼鏡の似合う好青年だ。認めたくは無いがイケメンの部類である。イケメン死すべし。
爽やかな笑みを浮かべながら顎をなぞり、何かを考え始めた。
「お嬢ちゃん、ただの子供じゃないよね? 適当な杖を選ぶと魔力に耐えきれずに魔核が壊れちゃうよ」
「ーーーーッ⁉︎」
女神だって事はバレていないが、いきなり図星を突かれて驚いてしまった。『鑑定』のスキルでももってるのかと警戒する。
「お、驚かせるつもりはないんだ! 僕はアイテムのランクを測るスキルを持ってるんだよ。それでお嬢ちゃんの着てるローブが凄いオーラを放ってるから、つい……」
俺は慌てているグラセルドを横目に、迷死狐のローブに念話を送った。
『やっぱ目立つんだなお前……』
『ぬ、ぬぬ脱がせないぞ! 絶対においらを脱がせないぞおおおおおお〜〜!!』
『うるさいっつの! 分かったから大人しくしてろ。燃やすぞ』
『自分から話しかけてきたのに酷いや……』
シクシクと啜り泣く狐を放っておき、グラセルドに一部事情を説明することにした。買ったのにすぐ壊れても困るしね。
「あの、私実は杖やロッドに関して詳しくなくて……宜しければ魔力が大きいと何が問題なのか教えて頂いても宜しいですか?」
「うんうん。知らない事は恥じる事じゃ無いさ。じゃあまずはお嬢ちゃんの名前を教えて貰っても良いかな?」
「失礼しました。私はロリカ・ヴィーナスと申します。ロリカとお呼び下さい」
俺がフードを捲って挨拶すると、今度はグラセルドが目を見開いて驚いている。『女神の眼』は発動していないので、見惚れられても困るわ。ロリコンかよ。
「なんでロリカちゃんみたいな子供がSランク装備なんて持ってるのか不思議だったけど、納得しちゃう程の美しさだね。思わず驚いてしまったよ」
「私はただの駆け出し冒険者ですよ。家族がちょっと過保護なだけですから」
「とりあえずはそういう事にしておこうかな。それじゃあ杖の仕組みについて説明するよ」
お店のカウンターの横から裏の工房に入ると、見たこともない薬品や素材が棚一杯に並んでいた。鉱石の類も少なからずあるみたいだ。
「まず、大事なのは握り込むシャフトの素材と、先端に取り付ける魔核の種類になる。実際に見せながら説明するね」
グラセルドは壁に掛けられている、先端に緑の宝石がついた木製の杖に手を伸ばした。俺はビナスやメムル、キルハの装備を見ている為、特に何も感じない。
一応『女神の眼』で鑑定しつつ、『風具の杖』という名称とBランクなのだと知る。
「この杖は先端にCランク魔獣『ミドルグリフォス』の魔核を、シャフトの部分にはエルフの森の『千年樹の枝』を使用して、錬金術師が合成して完成するんだよ」
(だからバルのおっちゃんは専門外だって断ったのか)
シュバンから出発する際、適当な杖をドワーフのバルのおっちゃんの所へ買いに行ったら、扱ってないし俺に合う杖は作れないと断られた。
時間がなかった為、説明を後回しにしたツケだと反省しよう。
「魔核のランクが高ければ高い程に魔術を発動した時の出力は増すし、耐久力も上がる。シャフトは魔核に魔力を流し込む媒体だから、良い素材や鉱石を使わないと魔力を削られてしまうんだ」
「さっき適当な杖じゃ壊れるって言ったのは何でですか?」
「ロリカちゃんの魔力量次第だけど、ランクの低い魔核や
俺は腕を組みながら思った。魔術師めんどくせぇな、と。既にやる気を失いかけているけど、どうしたものか。
この際杖を無しにしても『エアショット』さえあれば乗り切れるけど、俺の中二病心がそれを許してくれない。
魔術師って言ったら杖持ちたいんだもん。ちなみに魔法少女はやらん。ミナリスから新しいレイアちゃん人形のテーマとして恐る恐る提案はされたが絶対にやらん。罰ゲーム以外の何物でもないからな。
アリアが天界で学んだ元の世界の余計なオタク知識を吹き込んでいるらしいけど、何としても阻止せねば。
「話は分かりました。要は『良い樹の枝』と、『ランクの高い魔核』があれば良いんですよね?」
「う、うん。随分簡単に言うなぁ。因みにお金で買うと魔核はランクが低いものでも純金貨数枚掛かるけど、大丈夫かい?」
「大丈夫です。運が良いことに『心当たり』がありますので」
自然と俺の口元が緩んでしまう。この国には
「因みに杖の見た目でランクや素材ってバレますか? あまり学園で目立ちたくはないのです」
「それは問題ないさ。合成する時に見た目をシンプルにする様にすれば、『鑑定』スキルを持っている者以外にはバレないよ」
「『鑑定』を偽装する術はありますか?」
「それじゃあ少し値段は増すけど、『鑑定防止』の
「ありがとうございます! では素材と魔核を持ってまた明日来ますね」
「ハハハッ……なんか明日になるのが怖いなぁ」
冷や汗を流しつつ、乾いた笑いをしたグラセルドに見送られて俺は店を出た。
ーーさぁ、夜に向けて『潜入』の準備をしなきゃね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます