第142話 女神、勇者に会いに行く
『時は遡り、カルバン紅姫邸から始まる』
冒険者の国ピステアを巨人から救った英雄として崇められていたレイアは、穏やかな日常を過ごしていた。
GSランク冒険者として、ジェーミット王から与えられた豪邸は部屋が多過ぎて落ち着かず、更に誰も寝る時にレイアの側を離れない事から部屋数が無駄だと思い、屋敷自体は小さくていいから、訓練出来る庭の広い物件に代えて貰ったのだ。
それ以外にも与えられた報酬は、最早純金貨では足りず高価な宝石の数々になる。中には珍しい鉱石やルーミアもあり、コヒナタが歓喜のあまりキャラを崩壊させる程の絶叫を響かせた。
食堂にはレイア、メムル、クラドがお手製の朝食を食べている。他のメンバーは昨晩の疲れから、昼頃まで寝るのが当たり前になっていた。
「メムルとクラド君のご飯は今日も美味しいね〜。そういえばお店の準備は進んでるの?」
「はい! レイアさんが貸してくれたお陰で、開店資金には十分余裕がありますからね。細かい事はメムルさんが手伝ってくれていますし」
「ははっ! 正直大金過ぎて使い道に困ってたんだ。色々あったけど、君達の目標が決まって良かったよ。まさか、メムルがクラド君のお店を手伝うとは、予想もしていなかったけどねぇ」
「自分自身考えてもいませんでしたよ。唯、初めてクラド君に会った時、マムルお姉ちゃんが導いてくれた様な、不思議な感覚がしたんです」
二人は見つめ合い、まるで兄弟の様に笑顔を交しあっている。その様子を見て思わず微笑んだ。メムルの病気とも呼べる発作も最近は起きていない。漸く一歩前に進めたのだ。
「そうだね。最近見るからに楽しそうじゃないか。冒険者稼業は如何するの? 俺のメイドは気にしなくて良いからさ」
「冒険者はこれからも続ける予定ですが、当分の間、食堂の開店準備を優先して休業ですね。組みたいメンバーのアテもありませんし、何より『紅姫』のみんなには、絶対ついて行けませんから……」
メムルはディーナ、コヒナタ、アリアの戦闘を目の当たりにして、己の力量との差をハッキリと理解している。懲りずに挑み続けているチビリーをある意味尊敬していた。
因みに序列に変化は無い。シルバとの特訓を重ねても、届かない程の差に闘志を燃え上がらせているのだ。
「俺もみんながあそこ迄強くなってるとは思ってなかったよ。そろそろ起こしに行った方がいいかな?」
「昨晩もお楽しみなられた様で、羨ましいです……」
「あの〜二人共。一応僕がいる事に気を使って頂けると助かるんですけど」
「おや? ディーナやコヒナタに旅の間、散々惚気を聞かされたって言ってたじゃないか?」
「えぇ、えぇ、そりゃあ聞かされましたよ……だから、無駄にリアルな想像が働いちゃうんでやめて下さい」
「おぉ! 大人になろうとしているなクラド君。今度男同士、メイドの素晴らしさについて語り合おうじゃ無いか!」
「絶対にお断りします! レイアさんはもう少し他人から見た自分の美貌と、オーラをハッキリ理解した方が良いですよ」
「誰が何と言おうが俺は男だ! 女神の神体になった事で、『一部身体変化』の時間も二時間に伸びたしな! 真の漢の姿に戻る日も近い」
「ご主人様。誰も望んでおりませんからね……お触れを出せば男性化を阻止する為に、戦争さえ起こりそうな発言はお辞め下さい。聞きましたよ? ジェーミット王からプロポーズされた事」
「あのおっさん。惚れただの何だのいきなり飛びついて来やがって……俺の好みはハーチェル姫の様な美女だって答えたら、最近じゃ親子二人揃って迫って来るんだ。意味がわかんないよ! 面倒くさいから当分城には行かん」
「まさかハーチェル姫に『一部身体変化』の事を教えたりは……」
「聞かれたから教えたよ? それがどうした?」
クラドとメムルは揃って溜息を吐いた。レイアの魅了は凄まじいとはいえ、『女性』だと『同性同士』なのだと考えれば、恋愛感情までは発展しない。特殊な性癖を持った人物を除けばだが。
しかし、身体変化のスキルで一部とはいえ男性に成れるならば、子も宿せるし垣根は簡単に崩れる。メムルは己がそうだったなと、カルバンに着いた当初の頃を思い出していた。
クラドはリミットスキル『悟り』を上手く制御出来ていない為、聞いた情報から勘がいいでは済まない程に状況と結果を理解してしまう。頬を赤く染めながら俯いていた。
この旅の途中、少年は十三歳になっている。この世界に誕生日という概念は無いが、ステータスを見た時に気付き、ディーナとコヒナタに祝って貰っていた。勿論、食事は全てクラドが作ったのだがーー
ーーメムルは恥ずかしがる様子を見つめて、本当の姉の様な穏やかな視線を向けていた。
そこへ……
「レイアー! 今日も余が来たぞ! ジェーミット見参!」
「私も居りますわよ! 貴女のハーチェルですわ!」
突然現れた二人に対し、冷淡な表情のまま睨みつけた。
「いきなり入って来るなって、何回言えば分かるんだよ! 無駄にスキルを使うな!」
「だ、だって、入り口のドアをノックしたら、この前入れてくれなかったでは無いか!」
「そうですわ! いつ開けてくれるのかと待って居りましたのに!」
ジェーミットのリミットスキル『天道』で如何なる障害も素通りし、ハーチェルのリミットスキル『色気見』はレイアのいる場所を、正確に把握出来る。
既に両方修得しているが、『色気見』は『女神の瞳』の下位スキルとして取り込まれていた。
この二人が組めば、追えない者など居ないのだ。ある意味追跡において最強のコンビだろう。
王と姫は駄々を捏ねて問題をすり替え、誤魔化そうと瞬時にアイコンタクトを交わして協力体制をとった。だが、『心眼』を発動させた女神に嘘や虚構は通じない。
「俺相手に嘘は通じないってば……それで馬鹿二人。今日は何の用だ? お前達はそんなに暇なのか?」
「馬鹿言うな。余は王だぞ! 忙しいに決まっておるであろうが!」
「そうですわ。今日も大臣達の追跡を撒くのに、一体私達がどれだけ苦労したと思ってますの?」
「なら来るな……働け馬鹿共……」
城の大臣達に心の中で謝った。きっと苦労させているだろうと……
「おほん! 冗談は置いておこう。今日は、本当に大事な話があって来たのだ」
「お逢い出来る口実が出来たと、飛び跳ねて居りましたけどね」
「ハーチェル、裏切る気か? ならば余にも、考えがあるぞ」
「あら、怖いですわ。お父様こそお忘れでは御座いませんか? レイア様は私の容姿の方が良いと仰られたのですわよ? 一人で会いに行った所で追い返されるだけでしょう」
「我が娘ながら、恐ろしい女に成長した者よ」
「お父様の娘ですもの。それよりレイア様の顳顬に青筋が出来ておりますわ。これは少々お怒りになられてますわよ?」
「それはいかんな……あーーおっほん! 真面目な話。戦が起きるぞ!」
「あっそう。興味無いから帰れ。クラド君、メムル、この魚料理おかわり頂戴?」
「はーい! 味付けに好みがあれば遠慮なく言って下さいね」
「畏まりましたご主人様。少々お待ち下さい」
二人が席を立った瞬間、真顔になりジェーミットに問い掛ける。
「子供の前で戦の話とかすんな。俺に話に来たのは、無関係じゃ無いからだろう?」
「あぁ、済まない配慮が足りなかったな。以前、城で魔王の婚姻を話した時に、手紙を書いていただろう? 余のピステアにも、合同軍の話が来てな」
「レグルス関係か……」
「うぬ。断りはしたが詳細を調べた結果、西のザッファ、南の帝国アロ、東のシルミルが組んで、魔王の国レグルスを攻めるぞ。人族と魔人の戦争が起こる」
「何でだ? アズラはミリアーヌに対して何もしていないだろう? 交易があるのは港町ナルケアだけで、それ以外は獣人の国アミテアとしか繋がりは無い筈だ」
「東の国に召喚された勇者カムイが宣戦布告をして、レグルスの土地や支配下に置いた者達を、労働力として好きにしていいという条件で同盟を結んだらしい……今シルミルは女王が逝去して、二人の姫による内戦状態にあるからな。きっと、御しやすかったのでは無いだろうか?」
「戦争が起こるのは決定か?」
「えぇ、どうやら新しく勇者指導の元、軍の再編まで行っている様ですわ。冒険者様の情報から、間違い無いと思われます」
「はぁ〜。勇者はどうしちまったんだ? カレー広めたり、いつかは話して見たいと思ってたのになぁ〜。まるで悪役じゃ無いか」
「どうやら、気性の荒い方らしいですね。不思議なのは、二人の姫どころか騎士団長のヘルデリック迄もが、勇者に従っているらしいのです。竜に乗って飛ぶ姿まで目撃されております」
「どうする気だレイアよ? 余に出来る事があれば協力したい所だが、今回は国同士の問題だ。下手に動けば、ピステアが標的にされかねぬ」
「大丈夫だよ。情報ありがとうね。ピステアに戦火を拡大させる様な真似はしないよ。俺はまず、勇者を知ろうと思う。善か悪かね」
決意を固めた瞳に見つめられた二人は、止めても無駄だろうと諦めていたが、念の為に忠告する。
「確かに、戦争を起こす者が悪だと決めつけるのは間違っておるかもしれんが、一体如何する気だ? 危険な真似をするつもりならば、反対させて貰うぞ?」
「こんな時の為に『幻華水晶の仮面』があるんじゃ無いか。見せた事あっただろう? 変身してその軍に潜り込む」
「正体がバレる危険はありませんの?」
「『神体転移』は俺が行った事がある場所と、ナナが登録した人物の元に瞬時に転移出来る。距離関係無くね。自分だけって所が不便だけど、いざとなったらピステアに逃走すれば問題無いだろ」
「ですが、確か制限があると仰っていたではありませんか」
「今の所、一日一回か二回しか使えないからねぇ。かなり難しいスキルだから……正直、俺もナナもまだ不慣れなんだよ。進化した能力を使いこなせていないんだ。丁度いいから、その問題も解決してくるよ」
「ステータスは如何するつもりだ? 軍ともなれば必ず『鑑定』や『真贋』を使う者はおるだろう」
「そこはナナが解決してくれる。俺のナビは優秀なんだぞ〜! なっ? 問題あるか?」
「ある訳無いじゃん! 私とマスターが組んで、勝てない相手なんて最早神様位でしょ! 潜入なんてチマチマした事してないで、『天獄』で国ごと焼き付くしちゃえば? 今の私達が全力出したら如何なるんだろうね? 良い機会だし実験しよ! 殲滅殲滅〜! クピクピっ、ぷはぁ‼︎」
(このドS天使、また飲んでやがるのか……)
唖然としたが無視する。今は真面目な話をしてるのだ。ナビナナならともかく、主人格ナナには付き合ってられない。
「ま、まぁ。取り敢えず問題は行きだな! ジェーミットの報酬に、転移魔石があったよね? シルミルまで俺を連れて飛べる人を知らないかな? 何か目的がある人なら、一石二鳥で喜ぶでしょ」
「それならば、シルミルに店舗を構えている商人を紹介しよう。調べさせるから少々時間をくれ。いつ出発するのだ?」
「うーん、みんなの説得に絶対時間がかかるから、三日後にするよ。フェンリルの胸当ても今はシルバとコヒナタが協力して作り直してくれているから、多分丁度それ位になる」
「十分だ。では、また明日来るとしよう」
「そうですわね。お気をつけてお帰りになって下さいな。お父様」
「待て、何故一人だけ残ろうとしているのだ?」
「あら? 私はレイア様と午後のティータイムを嗜んでから帰りますわ」
「なぁんだとおぉぉ⁉︎ そ、それならば、余も付き合おうでは無いか! 先日食べた『ケーキ』とやらは、誠に美味であった!」
丁度戻ってきたクラドとメムルは、睨み合う王と姫の様相に『またか』と呆れていた。気になったのは、レイアの纏う雰囲気が、先程までと違う点だ。
二人は自分達が露払いされたのを理解していた為、きっとまた何かが起こっているのだと予測していた。
「また……戦いに行くんですか?」
クラドの一言にレイアは驚きの表情を見せる。心配をかけない為に遠ざけたと言うのに、自分自身がそれを台無しにしてしまったと反省した。
「ごめんね、怖い顔してたかな? 俺の事は心配しないで、お店の立ち上げに集中してくれ。俺の食べたかった料理を再現してくれる二人の店はきっと繁盛するぞ! レシピは分からないけど、まだまだアイデアはあるからね!」
「ご、ご主人様……一人で行くのだけは、やめて頂けませんか?」
「ごめん、それも出来ない。正直言って時間が無いし、変装するなら一人じゃ無いと潜入が難しいんだ」
「わかりました。出発はいつですか?」
「三日後の朝出るよ。問題は説得だなぁ……三人がなんて言うか……」
「それまでは、僕が沢山料理を作りますからね! ディーナさんとコヒナタさんは料理で釣れますから! アリアさんを何とかすれば、問題はありませんよ!」
「おおう……頼りになる男になったなぁ〜。つーかその『悟り』ってスキル凄すぎ、何で俺がこんな感じとか言うだけ料理再現出来るんだよ。本当恐ろしい子」
「レイアさんも、覚えれば良いのでは?」
「俺にはナビナナがいるからね。もう覚えたんだけど下位互換として取り込んであるよ。なのに、料理だけは作れない……もう試したんだけどね、ーー不味かった」
クラドの頭を撫でながら立ち上がると、準備に取り掛かる為に先ずマダームの元へ向かう。ジェーミットとハーチェルはついて来たがったが、状況を考えて渋々引き下がってくれた。
「いるかマダーム! 俺の身長にあう、男物の服を至急作ってくれー!」
ドタバタと足音を立てながら、奥から飛び出して来た蛙おばさんは、意味も分からず首を傾げた。
「今制作中のあんたのドレスで良いんじゃ無いだわね?」
「男物じゃなきゃ駄目なんだよ! 明後日までに三着頼んだぞ〜? 取りに来るからな」
「ひぃぃ! また鬼畜な注文だわね! 鬼! 悪魔! 女神だわね!」
「うっさい! さっさと働けや! じゃあな!」
絶叫を轟かせるマダームを無視して、次はバルカムスの店へと足を運ぶ。
途中民衆に騒がれないように『霞』を発動させ、気配を殺しながら店に入ると、工房で汗を流しながら鍛治に勤しむバルカムスがいた。
「おーい、バルのおっちゃん! ミスリル位の剣をくれー!」
「おっ! レイアか! いきなり如何した? お前さんにゃあ、もっと凄い剣が三本もあるだろうが」
「潜入捜査ってヤツをするのさ。鋼の剣だと頼りないから、ミスリル位にしようかなってね。金はあるし」
「ふむ……ならこいつを持っていけ。新しく店頭に置こうと打った剣だ。鉱石の比率が高いから、並みのミスリルの剣よりも硬くて折れにくいぞ」
「流石だね! 幾ら?」
「料金は要らないんだが、交換条件がある。ちょっと特殊な魔獣の皮が欲しくてな。手が空いたらで構わないから、依頼を受けてくれないか?」
「あぁ、分かったよ。戻って来たら、真っ先に手に入れてやるからね!」
「楽しみにしておるよ。もう暫くしたら、コヒナタ様とお前さんの新しい鎧作製の続きが始まるぞ。見て行くか?」
「すまないね。急な要件で時間が足りないんだ。暫く俺はシルミルに行く事になる。帰って来たら、また酒でも飲もう!」
「あぁ、気をつけてな! 楽しみにしておるよ」
(さて、後は誰に化けるかだ)
アズオッサンは髭の存在に気付く奴がいたら、魔王の顔に瓜二つだとバレかねないと考え、丁度いい冒険者を思い浮かべる。
「ブレイブレイブの『ユート』だな! 怪我で引退したからこの後目立つ事も無いし、噂を立てられても別人だと思われるだろう」
着々と準備を整え、潜入作戦を開始する。己の眼で勇者を見極める為に、会いに行く事に決めたのだ。
__________
作戦は見事に成功した。ナナがステータスを偽装し、試験の合格の後カムイに掛けられた『絶対服従』をコピーした瞬間に、不思議に思っていた様々な現象の理由が判明する。
「成る程ね。こんなチートなスキルがあったのか……だが、最近こいつ変わって来てる……」
ユートとして側に仕えるレイアの眼から見たカムイは、穏やかになっていた。ティアといる時、よく笑っているのが分かる。
もしかしたらーー
(このまま、戦争なんて起こらないのかも知れないな)
ーーそう密かに思い始めていたのだ。
しかし、カムイと篭ったダンジョンから戻った時に、事件は起こる。
『ティアの死』
カムイの痛哭を感じて同じく涙を流した。そして、ナナと共に犯人の気と色を見た時、身体の全身に鳥肌が立つ。
思わず『神体転移』を発動させた。城から離れた場所で怒声をあげると同時に、拳を地面に突き立てて大地を破壊する。
「またお前か、ピエロ野郎おおおおおおおおぉぉーーーーっ‼︎」
レイアの眼は、殺気と共に怒りから紅く染まる。三度目は無い。絶対に殺すと……
__________
『再び、話は戦の最中へと戻る』
騙していたとはいえ、レイアを睨みつけながらも、腰の引けたシルミルの仲間達。血溜まりに倒れ、傷付いた己の騎士。
(この戦争をこれ以上の犠牲者無く、終わらせて見せる)
キレていながらも冷静だった。殺す対象はたった一人。ナナによるロックをかけた以上逃す心配は無い。
ーー戦場の中心に『黒炎球』を改良し、進化させた『獄炎球』を浮かばせる。
「ナナ、当てるなよ?」
「勿論です。威嚇にしては威力の予想がつきませんが、本当に宜しいのですか?」
「あぁ。兵士達さえ巻き込まなければいいさ」
「ならば問題は無いでしょう。地形が変わるかも知れませんが……」
「ブツブツと何を言ってやがる! かかって来いよ! 紅姫レイア!」
「勇者カムイ! ティアを殺した犯人が知りたければ、兵を引かせろ! 向かって来るなら、皆こうなるとしれ! 『天煉獄』! いっけえぇぇぇーー‼︎」
『獄炎球』から放たれたのは、炎系等最上級魔術、『メルフレイムストーム』が収束された、以前より遥かに威力を増した『天獄』だ。名を『天煉獄』と改名し、今のレイアが放てる遠距離技では、最大の威力を誇っていた。
ーーゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォーーーーッ!
空を切り裂く黒柱は、天変地異が起きたのかと感じる程の地震を起こし、遠く離れていても感じる気温の上昇に恐怖から背筋を凍らせる。
クレーター等ではない、大地は言葉通り消滅したのだ。底の見えない奈落に引きずり込まれそうな巨穴だけが大地に刻まれた。
「な、何なんだあれは! 大地が消えただと⁉︎」
「勇者様! 直ぐに撤退を! 敵う相手ではありません!」
その後、言葉を発さずに勇者を睨み付ける女神へ、立ち向かえる者などいなかった。戦は圧倒的な力に戦意を喪失し、終息を迎えようとしている。
唇から血を流す、ただ一人を除いて……
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