壊れた町
翌朝、軽い朝食をとり二人は宿屋を出る。ハヤブサは宿を出る頃には「すげぇ」を繰り返さなくなったが、代わりに「凄かった」を連呼するようになった。
勇者たちは商業地区を抜け、北門に向かった。そこから砦に向かえるらしい。
「魔王の攻撃で壊れたところの復旧だなんだ言ってたけどよ、あんな繁盛してるなら少しくらいいいじゃねぇか、なあ?」
ハヤブサが言うと、勇者は答えた。
「昨日、買い物してた時に破壊された地区のことを聞いたよ。今から通る北側なんだ」
二人は北の元住居地区に到着すると、思わず顔を見合わせた。
そこは、巨人が通ったかのように建物が壊され岩や木の塊になっていた。背丈ほどの高さの建物は無く、遺跡かと思うほどの中途半端な壁や床が見えるだけだった。町と外を隔てる外壁は木で修復した跡がある。
町の男たちが作業をしているのが見える。魔法で片付けられない細かい範囲は人の手で行うと勇者は聞いていた。
「勇者様ですか?」
数人の男たちが勇者に近づいた。
「ああ」
「昨日、国の兵士から聞きました。……ここは、魔王の部下に砦から攻撃を受けた地区です。多くの人が亡くなりました。装置と魔法を使い、最近やっと崩れた壁やらを退かし終えたところです」
他の男も口を開く。
「幸い、モンスターはもういませんから、そのような脅威に怯えることもなく作業ができてはいます」
「しかし、この空を覆い尽くす雲が晴れなければ、私たちの傷は癒えません。頼ってしまう形になりますが、どうか、魔王を倒してください」
男たちは全員で頭を下げた。ハヤブサが何か言おうとしたが、勇者が止める。そして、男たちの顔を上げさせ、口を開いた。
「そのために来た」
男たちは黙って頷くと、二人を北門まで案内した。
「お二人とも、どうかお気をつけて!」
男たちの力強い声援を背中に受けながら、二人は歩き出す。
「勇者。ああいうのは、やる気でるな」
ハヤブサは照れ笑いを浮かべると、勇者の肩を叩いた。勇者がチラと振り返ると男たちは作業に取り掛かっていた。
モンスターは消えても、傷跡は簡単に消えることはない。だが、全てが終われば世界を包む暗雲は消え去るはずだ。いくら魔法が太陽の代わりになろうとも、それは本物の平和ではない。
「やる気は最初からあるさ」
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