ロックンロールが好きだ
綣野緒途
ロックンロールが好きだ
僕は19の時に、簡潔に言えば事実上実家を追い出された。
それは僕のせいでもあったし家庭のせいでもあったけれど、僕の理解では間違いなく僕のせいだ。
それでも母は僕のことを愛しているという。そして僕も母のことが好きだという。
僕は家庭から追われるような大馬鹿野郎だから、母の事なんてもはや好きかどうかよく分からないくせに平気な面をしてそういうことを言う。
今ではもう慣れたものだ。ロボットに感情をあてがう仕事ができるくらいに感情を生み出すことに慣れた。
ありとあらゆるものに対して、僕は求められれば全てを捨ててそこに行く。
だってもう僕は帰らなくていい人だ。
たまに母親は僕と会おうとする。私はあなたが心配なのだと言う。
僕は「僕が帰りたいと言うとあなたがそれを拒否して怒った日をいつまでも覚えている。」
今日は帰り際、母親が晩御飯にお寿司を買ってくれた。晩御飯を一緒に食べるのはしんどいらしい。
居場所がないことを再度自覚する。安定した場所。安定した人間関係。安定した愛情。
そうやって別れる。
家に帰って虚しくなってたばこを吸う。短くなったタバコの先を見て余計に虚しくなる。僕は一体いつまでこんなことを続けるのだ?
僕は不安だ。
僕に愛をくれるすべてが不安だ。
どれが本当なのか、僕にはわからない。
くれるのなら離れないで欲しい、おいていかないで。
ベッドに寝転がる。全て無駄だ。
僕はどこにいればいいのだろう?
さあお寿司を食べよう。
大きなラベルが貼ってある、お母さんが買ってくれたお寿司。魚屋さんの特上にぎり10貫。
僕にはそれがわからない。
ロックンロールが好きだ 綣野緒途 @oppabuking
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます