第194話「社会の窓」

「お前、社会の窓が開いてるぞ!」


トイレから出てきた息子に、僕は言った。


『社会の窓……』


その瞬間、僕の記憶は小学時代へと誘われるのだった。


◇◇◇


体育の授業のあとや、トイレのあと、ズボンのチャック開いたままでいたようなものなら、すぐはやしたてられて、言われた一言が……


「社会の窓」


だった。

初めて聞いたのは、保育園の時だったと思う。

確か、親父とスキーに行った時にゲレンデのロッジで、大好きなラーメンを食べたあと、トイレに行って帰ってきた。

年長なので一人でトイレに行って、帰って来た時に、スキーズボンのチャックが空いていたのだ!


「ミズキ、社会の窓が空いてるよ!」


と、すかさず親父が僕に言った。

僕は、その時に初めて聞いた言葉だったので……


「???」


と、、辺りをキョロキョロして店内の窓を見回した。


「パパ、どこも空いてないよ!しまってるよ」


と、僕が言うと、親父は……


「その窓じゃなくて、そこ!」


と、僕の股間を指差した。

指の先をたどって、やっと意味がわかった。親父は笑っていた。親父の友達は……


「そういや、なんで“社会の窓”って言うんだろ?」


と、盛り上がっていた。

学校に入り、友達もいつの間にかに“社会の窓”と言う言葉を使っていた。


「誰に聞いたの?」


と、聞くと……


「お父さんに聞いた!」


とか……


「お兄ちゃんが言ってた!」


と、教えてくれた。

その時は、なぜ“社会の窓”と言うんだろう?とは思わず……


『多分、国語で習った“は”は“わ”とも読むのと同じなんだ!』


と、納得していたのを覚えている。

そもそも、ズボンのチャックの事を“社会の窓”って、誰が最初に言ったのかなあ?


誰か知っている人、いますか?


おしまい


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