第174話「神輿の担ぎ方」
この間、地域のお祭りがあって、子ども神輿(みこし)をやっていた。
「ワッショイ!ワッショイ!」
と、言う掛け声に、懐かしいなあと思っていたが……あれっ!?何かが変だった。よく見ると……神輿がスーッと平行移動しているのだ!あれ!?神輿の担ぎ方が違うんじゃないかあ!
良く見ると、子ども達は神輿を肩には乗せず、肩よりちょっと上で持ったまま歩いていたのだった。それを見て、僕はふと思い出した
僕の小学時代の話しだ。
◇◇◇
盆踊りも終わった9月末。山車(だし)と神輿が出る、地域の祭りがあった。 山車や神輿に参加すると最後にお菓子をもらえるので、よく参加した。僕は保育園の頃から参加し6年生まで参加していた。
そうそう山車は、4年生ぐらいまでで。5年生になると神輿へ参加出来るのだった。だから僕も5年生からは神輿に参加した。
「おう!もっと肩に乗せるんだよ」
と、パンチパーマのタバコ臭いオジサンに言われた。
「肩に隙間あると、上下する神輿の担ぎ棒に肩の骨をやられるから気をつけんだぞ!」
と、パンチパーマのオジサンは心配そうに僕に言った。
「ワッショイ!」
カンカン。
「ワッショイ!」
カンカン。
と、掛け声に合わせて、拍子木が打ち鳴らされた。そういえば、神輿を担ぐ時は、町内会の名前の入った半纏(はんてん)を借りて着たなあ。
「もっと腰で担ぐんだよ!膝を曲げて、みんなと調子を合わせるんだ」
と、パンチパーマのオジサン。神輿には下は5年生から、上は結構なお爺さんまでいた。背格好が違う人達で担ぐ神輿。なるほどだから膝を曲げ、みんなで合わせて担ぐのだと思った。途中で休憩になった。パンチパーマのオジサンが、タバコを吸いながらこっちにやって来た。
「ワッショイ、ワッショイ!って言うだろ?意味を知ってっか?「和」を「背負う」んだよ「和、背負うっ」で「ワッショイ」ってんだ!ガハハハ」
と、タバコの息と共に、僕の頭をぐりぐりした。昼から神輿を担ぎ、町内を一周して帰ると夕方になっていた。終わりの時になると、拍子木を持った人がうやうやしく言った。
「では一本締めをもって終わりにしたいと思います。ヨーオ」
拍子木に合わせて、3、3、3、1回の手拍子をした。その後は、子どもはお菓子をもらい、大人は打ち上げをしていた。
「よお!初めて神輿を担いだんだってなあ、どうだった?」
と、パンチパーマのオジサンがワンカップ片手にやってきた。
「肩が痛いです」
と、僕が言うと……
「俺は神輿が好きで、アチコチで担いでるから……肩が担ぎやすいようにこうなったよ」
と、肩を見せると、なんと!巨大な「神輿ダコ」が出来ていた。
「そうそう、最後に一本締めやったろ?手拍子3回が3回で九になり、最後の1回で九に点が入り「丸」になるんだよ。で「丸く納まる」って訳さ」
と、言って酒臭い息と共に、ガハハハと笑っていたのだった。
余談。
神輿を揺らして担ぐのには、もう一つの意味があって、神様が乗っている神輿を揺らす事で、神様の魂、荒魂を揺らし恩恵をさらに多くする願いがあるそうだ。
ただし、地域によっては揺らさない「平担ぎ」と言うのもあるそうで、僕の見た今住んでる地域の神輿は、どうやらそうらしい。
おしまい
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