第160話「歩道橋」

僕の小学時代の話しだ。

小学校1年生の頃から比べると、学年が上がるにつれ行動範囲が広がって行った。その中で、それを感じた出来事の一つに歩道橋があった。


僕が歩道橋を1人で見に行ったのは3年生の時だ。なぜなら、3年生までは遊びにいける範囲に歩道橋がなかったからだ。3年生になり、大通りを越えた地区から通う友達が出来、歩道橋を渡る事が生活の中に入って来たのだ。


それ以前にも歩道橋は渡った事はある。学校の行事や家族とだ。でも、独りで歩道橋を渡るという事は、色々な事に気づく事でもあった。


階段を登っていく。それだけでも今までの知っている階段とは違う事に気づいた。家の階段は木の階段だ。学校の階段は、コンクリートにプラスチックをかぶせた階段。公園にある滑り台とかの金属の階段だった。でも歩道橋の階段は、素材がまた違っていたのだ。


そうそう、歩道橋を新しく作っているのを見た事がある。鉄枠でつくった階段に、階段のタイルをくっつけたいたのだ。


『これじゃあ感触が違う分けだ!』


と思った。

階段を登り終え、橋を渡る。その時に気付いたのが……


『えっ!?歩道橋ってこんなに揺れてるの~っ!?』


だった。大通りには、ダンプトラックやコンクリートミキサー車なと大型車も良く通った。 大型バスも通り、その度に……


グワングワン


と、歩道橋が揺れるのだ!


歩道橋から見える景色も新鮮だった。道路の真ん中に立つ事は出来ないから、歩道橋から見える道路は不思議に見えた。


特に夕方の歩道橋は大好きだった。真っ直ぐな道の向こうに沈む、大きな赤い太陽。左右のビルの窓ガラスに夕陽が反射して、世界の全てがオレンジ色に染まって行き、これまた不思議でたまらなかった。


そして歩道橋から降りて行く時は、一段一段とと降りる度に……なんだか不思議の世界から、自分のいる街に戻って行く気がしたのだった。


おしまい

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