第115話「海への坂道」
家の本棚を整理していると、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」の本が出てきた。この物語は我が家に3冊ある。1冊は誰のだか割っている。僕が付き合っていると時に妻にあげたものだ。残りの2冊は(きっと誰かに貸していて、読みたいからまた買ったのだろうと思われる。話が横にそれた!
パラパラとページをめくっていくと、猫のピートのくだりが出てきた。ピートは「夏への扉」を探していた。その瞬間、僕の記憶は小学時代に戻るのだった。
◇◇◇
「この先に海がある気がするんだ」
と、友達に言うと、みんな不思議そうな顔をしていた。
小学時代の頃から、なぜだか分からないが、登り坂を見ると、その向こうに海がある気がしてならないのだ。先の見えない登り坂を見ていると……
坂のてっぺんから、入道雲がのびていて。
カモメの声が聞こえ。
潮の香り。
そして、波の音。
が、あるような気がして、たまらなくなった。だから僕は坂道をあがる。そんなはずがないのは分かっているのに。でもいつかきっと、海につながっているかもしれない!と、思ってしまうのだ。
しかし坂道をあがると、なんの変哲もない町並みが続いていた。そんな事を小学時代は、しょっちゅうやっていた。
中学になり、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」を呼んだ。そこで猫のピートが僕と同じような行動をしていてビックリした。ピートはドアを見る度、いつか夏へ続いている「扉」があると信じていて、「夏への扉」を探していたのだ。だから僕はさしずめ「海への坂道」か。
いつか海につながる坂道を、僕は探している。なぜだか分からないが、登り坂を見ると、その向こうに海がある気がしてならない。だから今でも、僕は坂道を駆けあがっていく。
おしまい
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