第36話「授業参観」

僕の小学時代の話だ。授業参観は日曜日にあった。小学校一年生の時、親父が見に来てくれた授業参観。嬉しくて、何度も後ろを振り返った。手を振ってもみた。でもあまりにやりすぎて、親父と先生の両方に怒られてしまった。

国語の授業の時に、先生がみんなに……


「教科書を音読する人!」


と、聞いた。僕は、親父に良い所を見せようと……


「はい!」


と、声と手を高らかにあげた。そしたら、みごと先生が……


「はいでは、ミズキ君読んで下さい!」


と、指名してくれた。僕は立ち上がり、教科書を開き胸を張って音読した。一小節だけだったが、僕は自信満々に堂々と読んだのだった!


しかし、読み終えると……教室中が大爆笑になった!!僕は、なぜみんなが笑っているのか訳が分からないので、先生を見ると、先生は僕になんと言って良いのかと言う顔をして苦笑いしていた。

振り返って親父を見ると、親父も参ったなあと頭を抱えていた。僕が、みんなの大爆笑の意味が分からず、突っ立っていると先生は……


「ミズキ君、大きい声で上手だったよ!ありがとう。」


と、言った。僕は、その一言で大満足となり着席した。


「はい、ではもう一度だれか読んでくれる人?」


と、先生が聞くと、隣のトモちゃんが手をあげ指名された。そして、トモちゃんが音読しているのを聞いて、やっと意味が分かった。僕は読み間違えをしたのだった!トモちゃんは……


「青い空、白い雲……」


と、読んでいた。


僕は同じ文章を大きな声で……


「青い雲、白い空……」


と、読んでいたのだった。意味が分かると、僕は恥ずかしさに縮こまっていた。授業参観が終り、帰り道での事。僕が恥ずかしそうにしていると……


「まっ、そういう時もあるさ!」


と、親父はポンッと肩を叩いて、僕を励ましたのだった。

おしまい


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