第34話「林間学校③」
深夜、寝静まった頃……
「なんだよ、これ!!」
「うわっ!ふざけんなよ」
と、あちこちから声がした!! なにやら騒がしい声に、僕も目を覚ました。 ただでさえ楽しくて興奮状態だったので、皆パッパッパッと目覚めていた。
周りを見るとあたりは真っ暗、でもその中を何かが飛びかっていた。何か白いものが……。目をこらすと……
「パッパンツ!?」
白いブリーフが宙を舞っていた。誰かのパンツらしかった! 誰かの所に飛んで行っては……
「誰だよ!投げた奴は!!」
と、投げられ部屋中を飛びかっていた。 もう騒然となった!! そのうちケンカもあちこちで始まった。その騒ぎを聞きつけた先生が大慌てでやってきた!
「お前ら、静かにしろ!!」
と、カミナリが落ち、ひとまずは落ち着いた。
次の日、朝の集まり会で話題となった。ざわついていると、みんなの前で校長先生は言った。
「お友達と一緒で楽しいのは分かりますが、下着を投げ合うのは止めましょう!」
その日、そのパンツは友達のヨネの物と分かった!隣りに寝ていたチョボオが、夜中にトイレに行ってパンツが濡れたらしく、着替えようとしてヨネの風呂敷をあけてしまったのだ。
トイレは明るく部屋は暗いので、良く見えなくてヨネの風呂敷を開けてしまい、気付いて置こうとした時に、その隣りの奴の顔に乗せてしまったのだ!!この事件は、「ヨネのパンツ事件」として語りつがれる事になった。さてその事件の時、当の本人はというと……爆睡中!!
次の日、起きて一部始終を知ったヨネは一言……
「まだ履いてねーから、大丈夫だよ!!」
と、言ってみんなを笑わせていたのだった。
そして、最後の日。
「起床!!」
の、掛け声とともに先生たちに起こされる。起きたら朝食だ。僕は民宿などで食べる朝食が大好きだった。
白いご飯と味噌汁!焼き魚に目玉焼き、味付け海苔に納豆。そうそう酢の物!などなど朝の食卓に僕は嬉しくなった。
特に米がかたいのが嬉しかった!!我が家は、爺ちゃん婆ちゃんに合わせて、米を柔らかく炊いていたからだ。
「うわっ、美味しい~!!」
白い米の旨い事、旨い事!僕は、おかわりを何杯もした。
宿舎を出る前には必ず掃除をした。お世話になった宿への恩返しという訳だ。最終日など、宿の方々も朝の朝礼に参加し……
「短い間でしたが……」
と、涙ぐみながら一言を述べてくれたりもした。
山中湖の林間では、富士山の樹海に行き風穴や氷穴を見た。日光では東照宮だった!!確か、鳴き竜を見た気がする?天井に竜が描かれていて、その真下で手を叩くと天井と共鳴して、ビーンと鳴るのだ。そういえば、クラスの旗を作ったなあ、学級委員がそれを持って、バスガイドさんと一緒なって、先導していた。
最終日はお土産を買った。おこずかいを持って来ていて確か3000円だった。お土産屋さんに行って、いつも思うのだが、なんで木刀が売っているのだろうか?木刀とか木の刀とか……もちろん、買ってしまったのだが!このお土産のお陰で、男の子はみんな、腰に刀や木刀をさしていた。そして、さっそくチャンバラして……
「おりゃ~!!」
バキッ!!
「やりすぎだってチョボオ~」
折っちゃう奴もいたのだった。
林間学校最終日。僕たちはバスに乗り込み一路、東京へ向かった。
帰り道は段々と寂しい気持ちになった。楽しい時間が終わりに近付いて来たのだ。過ぎてしまえば、あっと言う間の楽しい時間だった。
帰り道、高速を降りた後、バスの運転手さんがバスガイドさんを呼び、なにやら話していた。その内、担任の先生が呼ばれた。
「この先、渋滞しているようです」
どうやら、道が混んでいるようだ!!これには僕は、嬉しくてたまらなかった。まだまだこの気持ち、この時間を満喫していられるからだ!!
「わーいやった~渋滞だあ!!」
バスの中は、最後の盛り上がりを見せた。
「じゃあ俺歌うぜ!」
と、ゴウがジャイアンのようにマイクを持って歌いだした。それを見て、チョボオが自分の耳をふさぐマネをしたので、ゴウは殴るマネをして、みんな大爆笑になった。
それでもいつしか、バスは出て行ったコンクリート工場の前の広い道路に着いた。そこには大勢のお迎えの姿があった。見ると婆ちゃんの姿もあった。
「ただいま~」
と、僕が言うと婆ちゃんはちょっと涙ぐみそうになりながら……
「おかえり」
と、婆ちゃんは言った。その後、婆ちゃんは担任の先生や、引率に来ていた校長先生に挨拶をしていた。
僕は友達に……
「じゃあまた!」
と、別れをつげ、婆ちゃんと家路についた。こうして僕の林間学校は幕をとじたのだった。
おしまい
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