第30話「光る砂」

 6年生のある日。日差しに照らされた校庭を見ていると、キラキラと光るものに気がついた。僕はその、ひときわ光るキラキラを目指して歩ていった。


 近付きしゃがみこんで、まわりの砂ごとすくいあげた。手の平の砂の中には、光る粒があった。粒は無色透明で丸みを帯びていた。


 僕は何か容れるものがないか探した。とりあえずノートを一枚切り取って皿がわりにした。すくった砂には、たくさんの光る粒があった。僕は大きな粒を選んではノートの皿に乗せた。僕は、この光る粒を「光る砂」と呼んでいた。そう、保育園の頃からよく集めていたのだ。


 校庭を見ると無数の光る砂が、キラキラと、太陽の光りをあふれかえしていた。

 見たことなかったが、きっと宝石ってこんな感じなのだろうなあと思った。そして、ふとサン・テグジュペリの「星の王子さま」のお話を思い出した。


「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからなんだよ……」


 と、王子さまが言っていたのを。

 だから僕は、それをもじって……


『校庭が綺麗なのは、小さいけどこんな綺麗な「光る砂」が、たくさん隠れているからだろう』


 と、思ったのだった。


おしまい

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