第24話「親父と潮干狩り」
1年生の時、親父の会社でみんなで集まって、潮干狩りに出かけたのを思い出した。
朝早く駅前で、チャーターしたバスに乗り込んだ。親父たちはバスに乗り込むなり、すぐにビールを飲んだ。バスの中は、あっという間に宴会場になった。
海につくと潮は引いていた。さっそく熊手みたいなやつでシジミ貝をとった。昼までには、かなりの量をとった。とったシジミは、ビニル袋に入れて、きれいな海水を入れた。これで、家に着く頃には、貝が砂を吐いているようになるのだ。
潮も満ちてきて、海岸で昼ご飯となった。我が家は婆ちゃんが作ってくれた、おにぎりをほおばった。他の家族も一緒に食べていて、おかずをお裾分けしてもらった。親父はいうと、ご飯をつまんだかと思うと、またまたビールを飲んでいた。
帰りのバスの中も、当然、宴会だ。僕は、バスの真ん中の席にいて、今日、知り合った友達と、くっちゃべっていた。親父はバスの後ろの席にいて、ビール以外にもウィスキー、日本酒と飲んでいた。親父は、他の家族の子どもと冗談を言っては、馬鹿笑いをしていた。
帰り道、バスは高速に乗り走った。しかし、しばらくするとバスは……
キィー!!
と、急停止した!そして、バスは路肩に止まった。
なにやら運転手が怒鳴っていた。すぐさま今回の潮干狩りの幹事が呼ばれた。どうやら誰かが、後ろの非常口を開けてしまったのだ。運転手はバスを降りると、非常口を外から閉め直した。幹事の人は平謝りしていた。車内はシーンとしていた。すると陽気な声で……
「ごめんなさーい!」
と、親父が後ろの座席から頭をかいてやってきた。
「なんか、開けてみたくなっちゃって!済みません!!」
と、平謝りした。運転手に謝って戻って来る親父に……
「どうしたの?」
と、僕が聞くと、小さな声で…
「子どもが、開けたらどうなるかなあ?っていうから、開けちゃったんだよ!」
と、親父は言った。席につくと、子どもの家族が親父に謝っていた。その子どもが、うっかり非常口を開けてしまったのを、かばったのか?それとも子どもにかこつけて、親父が本当に開けたくなって開けてしまったのか?どちらかわからないが、どちらにしても親父らしいなあと思った出来事だった。
おしまい
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