第45話
「リゾート・クライシス? どんなゲームなんでしょうかねえ」
「クライシスと名が付くゲームっていうのは確かに内容が想像しにくいからな。ゲームの歴史を紐解いていっても、そのジャンルは多岐に渡る。まあ最も有名なクライシスってつくゲームというと……」
「何ですかゲーオタ。何を高速詠唱してるんですか?」
「あ、すまん! ちょ、ちょっと血がざわめいてな!」
俺はどうやら解説に向いていないようだ。K年S組・四十八願先生は適度に無知だったから俺にとってちょうどいい名教師だったようだ。
しかし互いに開幕のロードは短く、あっさりとタイトル画面へ移行してしまった。スーパースーパーサッカーは、「そういうもの」じゃないと知っているが、相手の方はそれでいいのか?
「しかし、わざわざこの試合をする必要はあるのでしょうかね……。この場でHをとっちめてしまうのが一番早いとも思うんですが」
大門はここでエージェントらしく、ごもっともなことを言った。
俺たちの目的は禁断のクソゲー潰し――。しかしそれだけではない。
石川さんに追加で命じられていたのは、幹部の二人の拿捕だ。
幹部を奪って指揮系統を鈍らせれれば、俺たちが今回でSHITSを潰せなくとも、その後の石川さん達の立ち回りが有利になるから。という至極もっともな理由の指令である。
そして大門の意見は、クソゲーバトルランカー自体を最初から拿捕すればいい。というもの。
それはホビーものの主人公が、対戦相手潰せばいいんじゃね? と言ってるようなものである。なるほど確かに理に適っている、ロマンもクソもないやり方だ。
だが大門は多分ゲーム・フロンティアのことを知らないんだろう。やれやれ、仕方ない。俺がこのゲームハードの仕様を解説してやらねばいけないらしい。
「大門。ゲーム。フロンティアで作るゲームは全部ネット上の存在なんだ。禁断のクソゲーをこの場で潰す以外に、完全に封じ込める手段なんか無いんだよ」
Hを拿捕しても、禁断のクソゲー自体を捕まえることは出来ない。奴は電子の海を泳いでいる存在なのだから、第二・第三のHがそれを用いれば同じことだ。恐らくはSHITSの本拠地にあるマスターデータを使えば、幾らでもこのゲームは復活出来る。
それを聞くと大門は納得したように頷く。
「なるほどそういうことでしたか。私は正直ゲーム・フロンティアなぞに全く興味無かったのでその辺の仕様を把握してませんでしたね。なんかゲーム作れてなんかゲームできるってゲームの認識でした」
「前から思ってたけどお前めちゃくちゃ大雑把だよね、色々」
「何を言ってるんですか、私は几帳面なO型ですよ!」
「何で血液型の認識が一般論と逆なんだ!? やっぱO型なのね!」
薄々思ってたがこいつ視点だと石川さんがブラック上司のように見えてしまうのはこいつの大雑把な性格が一番の問題なんじゃないかと思う。石川さんもこんな部下で大変だなあ。
それはそうと、ステージ上に視点は戻る。互いの自己紹介代わりのクソゲー開示を終えた二人は、向き合い、にらみ合う。
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