第36話

 星見さんの翻訳。

 1F・クソゲーショップ。世界一のクソゲー専門店。

 2F・クソゲーバトルフィールド。普通に公式クソゲーバトルが楽しめます。

 3F・クソゲーバトルアリーナ。上位のクソゲーバトルが楽しめます。

 4F・クソゲーシネマ。様々なクソゲーのプレイ動画が楽しめます。

 5F・クソゲーカフェ。夜はBARに早変わり。クソゲーしながらお茶が飲めます。

 6F・クソゲージム。クソゲーでストレスをため込み、即座に発散! 怒りの力で体を鍛えろ! 新感覚・クソゲートレーニング。

 7F・クソゲースクール。クソゲーの作り方講座。上位ランカーが教える最低のクソゲーの作り方のイロハ。

 8F・クソゲーミュージアム。クソゲーの歴史がわかります。


「俺は地球に生まれて恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ちょ、どうしたの一鬼君!? 大丈夫!?」


 クソゲータワーの前で俺は絶叫した。ここまでメンタルを破壊され、俺が俺自身を、世界を呪ったことは無い。


「宇宙の歴史よごめんなさい! 地球はとんでもないものを作り出してしまいました! もう地球は駄目だ、おしまいだあ!」

「これこれ、そう言うでないわ。ワッハッハ、いいではないか! カフェにでも行ってお茶でも飲むか?」

「絶対にヤダよクソジジイ! ちくしょう、ちくしょう! ちくしょう! 一等地なのが憎いぜ! 何だこの悪魔の建物!? こんなものの存在まで許してしまっていいのか! 母なる大地に汚物を突きたてやがってえええええ!」


 エジプトのクソゲーブーム。知ってはいたがここまでとは。俺にとってまさに悪夢の世界だ。

 クソゲーが社会権を得る。それだけでも、チンパンジーが内閣総理大臣に就任し、ゴリラが文部科学大臣になり、オランウータンが農林水産大臣になるような絶望だ。それが更にこんな一等地にドでかい建物まで建てるようになるだと!? 一体何の冗談なんだ!


「絶対に! 絶対に許さねえ、SHITS! エジプトを! エジプトを汚しやがって! 神秘の国にクソゲーをもたらした罪は万死に値する! 俺は絶対に許さねえぞーーーー!」


 俺はエジプトを象徴するような、灼熱の太陽に吠えた。

 根付いたものを取り去るのは難しいだろう。SHITSを叩いても流行ったものは取り消せなかろう。

 だからなんだ。

 俺はSHITSが憎い!

 それだけで十分だ! このエジプトを、この地球を汚した罪を思い知らせてやる! 改めての誓いが、胸に芽生えた。

 一方、俺の真横。


「クソゲーバトルが見たいわ! 海外の戦いとか、めっちゃ見たいわ! ねえ、早く行きましょうよ一鬼君!」


 すごくキラキラした瞳で言う剛迫。うっせーよクソ女。お前みたいなのがこの神秘の国・エジプトを汚すんだよ! ちくしょうめ!


「すまん……ちょ、ちょっと、本気で今回はメンタルのダメージがきつい。俺、ホテルで休んでていいかな……」

 俺はふらつく体を何とかもたせて懇願した。ホテルは、セキュリティ完璧で、SHITSの息もかかってないという触れ込みの一等地のホテルを数日間、石川さんの方で取ってくれているので、すぐにでも行けるはずだ。


「えー、一鬼君いないと嫌よ! 一鬼君もよ!」

「お前さっきホテルで休もうって提案してたよね。何でそんなみなぎってんだよ、何でそんなお肌ツヤツヤなんだよクソが。とにかく俺はホテルで待つ。こっからすぐだからいいだろ」

「えー!」

「剛迫さん、行かせてあげましょうよ。彼へのダメージは何か深刻っぽいですから」

「でも、でもー! 一緒に見たいわ!」

「子供ですか!」

「一鬼! 何かあったらすぐに鈴を鳴らすのだぞ!」


 この言葉が映画とか水族館とかだったらさぞかし素敵なご提案だったんだがね、まったく。

 抗議を背にして、俺はホテルへ向かった。農村部ならともかくこんな都市の中なら治安も大丈夫だろう。それに、星見さんの召喚アイテムは俺も持ってるしいざとなったら呼んだらいい。安全を確認してから、ふらふらとタワーから遠ざかるが、


「アー、スイマセ。ニホンジン?」

「ん」


 目の前に、現地人あり。

 アラブ系のお方だったが、たどたどしい日本語であからさまに俺達に向けて話しかけてきた。こんな海外の地で、まさか日本語で現地の方から話しかけられるとは思ってもなく、ちょっと戸惑ってしまう。

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