第31話

「星見 人道参上オオオオオ! さあ、いざ行くぞ若者達よ!」

「おはようございます、星見さん」

「おはようございます」

「お主ら淡白よのう!? いつもと違うではないか!」

「いや、いい加減空から来るのも慣れちゃって……」

「もう気象予報で「星見さん」が出ても驚かないわよね?」


 所により星見さん。石川さんが生える地域もあるでしょう。俺達の中の気象予報はもう天変地異と化している。

 それはそうとして、


「星見さん、ところで今日はばっちり決めてますね?」


 登場よりも、その服装に驚かされる。

 バッチリと全身をダークスーツで決め、靴もよく馴染んでいるものの、よく磨かれてピカピカだ。ネクタイピン一つとっても、俺のような若輩でも分かるくらいにいいものだと分かるくらいに完璧にキメられたその姿はまるで出来るビジネスマンのようで、普段のイメージからは大幅に逸脱している。

 俺が指摘すると星見さんは「待ってました」とばかりにいい笑みを見せ、


「無論。我は元々、世界を駆ける大企業の役員をしておったのだぞ!」

「えええ!? そんなハイスペックだったのこのクソゲーエロオヤジ!?」

「すごいわ! 流石星見さん! ミスターチートスペックね!」

「ワッハッハ、しかも今回行くエジプトの言語もしっかり話せるわ! 我に任せておけい!」


 強くて優しくて豪快で仕事が出来て妻もいる漢。

 もう転生してきたんじゃないかと思うほどのスペック盛り合わせじゃないか。こんなチート男が現実に存在するなんて。


「うう……。男として自信を無くすぜ……」

「大丈夫よ一鬼君。一鬼君もあと20年くらいクソゲーを作ってれば星見さんみたいになれるわ」

「やだなあ! あと20年も刑期があるなんて!」


 チート能力を手に入れたがクソゲー漬けの運命が待っている件について。俺もコントローラーを筆に持ち替える日が来たのだろうか。


「あ、おはようございます星見さんですね!」


 大門が戻ってきた。一昨日の時点で星見さんは空から来るというイメージが定着したのだろう、やはり何も感じていないように笑顔の挨拶だ。

 それを見た星見さんは「おお!」と歓喜の笑みを一瞬見せるが、


「……お主、大門嬢か?」

「ええ、そうですよ! 大門 璃虞です!」


 星見さんは真顔で大門の頭からつま先まで見ていき、俺と顔を合わせた。


「一鬼、何だこの気持ちは。この沸き上がってくる謎のもやもやは何だと考える?」

「俺にもよくわかりません、我が師よ」

「何ですか二人して!? 私が素顔を晒すことがそんなに不満ですか!?」

「あー、お主、なんというか、もっと自らを知った方がいいと思うぞ。先人からの戯言だと思って……」

「何でちょっと気を遣ってるんです!?」


 美しさは罪だと思い知らされる。それが大門 璃虞である。


「まあ、なんにせよ! これで全員揃ったのう!」


 星見さんは気を取り直して、全員を取りまとめる。こういう時に頼れるまとめ役がいるのは、素直に心強いものだ。

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