第30話

「なんだなんだ、昨日一日で随分仲良くなったみたいだな?」


 昨日、護衛の名目で大門は剛迫の家にいた。

 それには二人も、笑顔で答える。ダブル美少女の笑顔欲張りセットである。


「ええ、そりゃもう! すぐに意気投合しちゃったわよ!」

「何か気が合いましたね、妙に!」

「うん、二人とも知能指数同じくらいだもんね」

「何ですってえ!? 貴方まで太平寺みたいなことを言い出すのねー! 言っておくけど私、テレビのIQ判定で120の問題解いてるのよ!」

「このエージェントたる私によくもそんなことが言えますねぇ! 言っておきますが私の通ってる学校、貴方方の学校より偏差値が2高いですから! 残念でしたー!」

「うっわあウザい! 二人を相手取るってこんなウザいのか!」


 2オン1。こんな状況もさらっと処理出来るであろう、デキる女四十八願の登場が望まれるところだ。


「それに、大門ちゃん凄いのよ。一緒にゲームしたんだけど、すっごい上手いのよ」

「ほう? そうなのか? ゲーマーだったのか?」


 訊くと、ふっとキザに、ドヤに微笑む。


「いいえ、ゲーマーではありませんよ。ですがエルルゥイイートたるもの、そんじょそこらのゲームなぞという娯楽などこなして当然! ゲーム漬けの貴方達など、初見でも軽く凌駕してしまいますよええ!」

「なんでも、子供の頃に難しいゲームをすんごいやってたんですって。だから今でも勘が残ってるんですって」

「ああ、なるほどね」

「ネタバレしないで下さい剛迫さん!?」

「現にアクション以外のパズルとかシミュレーションとか格闘ゲームとかは普通に初見って感じだったし……」

「一点特化か。アクションやりまくってたってことね。エリートとかじゃなくて」

「ぬう!」


 なんか星見さんみたいな声を出して憤慨を表現している大門。しゅぽっと頭の上から煙が出た気がした。


「因みに大門、昔にやってた難しいゲームって何だ? 間違って大人向けのゲームやってたってことか?」


 俺が好奇心から問うと、大門は小首をかしげて「それがですねえ」と一言。


「ほんとに小さい頃にやってたからタイトルとか覚えてないんですよねえ。ゲーム画面はちょこちょこ覚えてるんですけど、何のゲームだったかまでは……。そもそもそれ、子供向けの知育ゲームの一つだったっぽいので一鬼さん達も知らないのではないでしょうかね?」

「あー……。なるほど。それは確かに専門外かも」


 流石にゲーマーと言えど、子供向けの知育ゲームという分野には疎い。わざわざ今の歳でお子様ランチを食べはしないようなものだ。剛迫に視線を送っても肩をすくめるだけで、なるほど、同じ感想のようだ。


「これは盲点だったな剛迫。今後はそっち方面の知識や経験も積んでいかなきゃいけないな」

「そうね。でも知育ゲームって情報が割と少ないし価値観も子供の教育がメインになるから今までの常識が通じない厄介な分野かも……」

「あんたらはなんですか、研究者か何かなんですか?」


 研究者も言ってしまえば「オタク」。まあ似たようなもんだろう。


「でも、まあ子供だからっていうものあったんでしょうね、異常に難しく感じてたの。お母さんなんかは普通にプレイして、いつも助けてくれてましたから」

「へえ、なるほどな。じゃあやっぱ子供だったからか?」

「多分、そうでしょうね。それか」


 大門はコーヒーのプルタブに目を落とした。


「――お母さんが上手かったのか……。ですね」

「?」


 大門は誤魔化すようにコーヒーを飲み干して、自販機横のゴミ捨てに向かった。なんか一瞬だけ空気が変わった気がしたが……気のせいだろうか?


「……ッハ!」

「ん」


 俺の鼓膜が、何か妙な音を拾った。

 男の太い笑い声のようなむさくるしい音波だ。

 周りを見回す。そこそこ人も出てきてはいたが、こんな声を出せそうな屈強な御仁は見受けられない。


「一鬼君。どこに落ちてくるのかしらね?」


 剛迫も聞き取ったらしい、上を見上げていた。


「あー、今までのパターンだとこの辺じゃね?」


 俺は剛迫から1メートルくらい離れた所を指す。

 ちょうどそこに、がすんとCDロムが突き刺さる。やっぱりクソゲーだ。


「ワッハッハッハッハアアアアアーー!」


 ズドーーーーン。

 はい、出ました。星見 人道さんご到着です。

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