第23話

「ああ、終わったよ。なんか、俺達に必要な人を召喚出来るとかいう鈴をもらった」

「そう。まったく、あの女狐もほんっとに……。相変わらず反省の色が見えないわね」


 後ろから出て来つつ、ちらと俺の掌の上の鈴に目をやる。

 その瞳にはさっきまでの怒りは見えず、呆れが映って曇っていた。


「今度はゲーマーたちをぎゃふんと言わせるような真っ当なゲームを作ろうとしてるらしいけど、あんな態度のまんまじゃダメよ、もっともっと反省の色を見せないと世間は納得しないわ。ただ開き直ってるか、何でもないように思ってるようにしか見えないもの。姑息でも何でも、反省も謝罪も早くしないといけないのに……」

「……?」

「顔見せしてるんだし、そこんとこの自覚はあるのかしらね? ただでさえ一生叩かれるようなことしてるのにこれじゃ余計に……」

「お前もしかして太平寺のこと心配してる?」

「ま!?」


 甚だ心外であり、遺憾である。訴訟も辞さない、みたいな表情をされた。


「そ、そんなわけないじゃない! あんな女狐を! ただ反省が足りないって言ってるだけよ!」

「はいはい、じゃあそうしとくよ」

「二つ返事はやめなさい! もう! それより、さっさとその鈴を鳴らして助っ人とやらを召喚してみましょうよ! えっと、確かヤギの頭と魔法陣と生贄の血が必要なんだっけ!?」

「お前は悪魔王でも召喚する気なの? 鳴らすだけって言ってたぞ、ある言葉と共に」

「ある言葉って何?」

「そりゃ、ある言葉……」


 ……

 太平寺よ。俺の下着の心配する前に、重要なことを忘れるな。






 屋上。

 うちの学校は偏差値はこの地域だと中堅以上なのだが、それでもやはり高校生の性というやつなのだろう、この場所はいわゆるイケナイことをするのに専ら使われているようだった。

 あちこちに歴代の生徒たちの落書きがあり、「XX年X月、○○×○○、カップル成立!」みたいな屋上のロマンスを記録したもの、「○○死ね」みたいな愚痴にもならない愚痴、「あばよ青春!」みたいなこっぱずかしい卒業メッセージ、エトセトラ。いずれも若さ故の過ちと言うには、黒歴史率の高い落書き達ばかりだ。

 そして不良のマストアイテムであるタバコの吸い殻がいくつか。角にはフィルターなどのゴミも溜まっていて、いわゆる溜まり場になっているのがよくわかる。よくあるヤンキーマンガのような不良伝説も、いくつかここで作り上げられたりしたんだろうか、なんて思うと少し胸熱ではある。

 今は運よく人はおらず、代わりにそうそうたるメンツが集合している。

 犯罪者感丸出しのおっさん。怪しい機関の仮面女子高生。武闘派高一バーサーカー。清楚詐欺クソゲー女。マスコット枠ふーちゃん。そして巻き込まれた一般人である俺。

 ここで、太平寺推薦の人物を呼び寄せるのだ。


「これがダメなら、もうアテはありませんよね! ね!」


 大門は念を押してくる。よほど、戦闘面は任せて欲しいらしいな。


「まあ、アテは無いと言えば無い……かな?」

「いざというときはあたしの同門の人とか師匠連れてくる? 師匠なら精神力ヤバいし大丈夫そう」

「いいから! クソゲーの被害を広げるな! それより呼んでみるぞ!」


 俺は鈴を、一応聞こえやすいように天高く掲げる。

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