第15話

「ああ、そうだ。一人、戦闘力をアテに出来る人が欲しいね。私たちのところには残念ながら、彼女くらいしかいないんだがいないかね?」

「そんなに人がいないんですか!? 実働部隊って!」

「クックック、いや、いないわけじゃないんだよ。しかし、奴らの方で素顔を知られていないメンバーというのが彼女くらいしかいなくてね。本拠地に行くのにおいて顔を知られているのは、空港の段階で排除される可能性がある。彼女は新しいメンバーのうえ、その変な仮面の隠蔽性が奇しくも役に立ってくれてるのでね。この件の実働に充てているんだよ」

「なんだ、変なコスプレのせいじゃん」

「エリートじゃないのね」

「エリートですー! あと変なとは何ですか変なとは!」

「変じゃん」

「変よね」

「変だと思うよ」

「ミンナシテワタシヲイジメルー!」


 しゅっしゅと頭の先から湯気が出ているのが見えるようだ。なんかこの子はいじりたくなるなあ。


「そんなわけで誰か適任がいないかな」

「いますねえ!」


 俺は即答した。


「いるわ!」


 剛迫も即答。


「なんですと!? そんな都合のいい人がいるんですか!?」

「いるんだなあこれが!」


 そう。このすまいるピエロを舐めてもらっちゃあ困る。この美少女クソゲーメイカーの剛迫に悪い虫が付かなかったのは、誰のおかげだと思っている?

 それはシンプルに、強い奴がいるからだ! 誰よりも戦闘面で頼れる、あいつが!





「ファーッハッハッハッハァーー! 呼んだかね諸君ッッッ!」





 そして! このタイミングでやってきた!

 待ってました、とばかりに響き渡る、無駄に元気が有り余っている張りっ張りの声と共に、隠し扉が開いた。

 同時に無駄なスモークと照明がその奥の人物を覆い、その姿を隠しているが俺達には丸わかりである。


「その声は!」

「この無駄な演出は!」

「だ、誰ですか!? 変人ですか!?」

「戦闘力! 戦闘力と言ったね、それならば! すまいるピエロが誇る最強の矛が黙っちゃいられません!」


 ズンドコズンドコと音楽が鳴る。小脇には小動物のようなものを荷物のように抱えているシルエットがあるが、それの正体も俺達には容易に想像できる。


「あたしの拳は天を割り! あたしの足は地を踏みぬき! あたしの頭突きは人を撃つ! ある時は文芸部が誇る若き奇才! またある時はクソゲーメーカーの狂気のライター! 千変万化、八面六臂! しかしてその実態はァーー!」


 戦闘力と言えば。すまいるピエロの荒事担当と言えば。

 この人を置いて他にはいない。

 高一にして、完成されたバーサーカー。誰もが畏怖する恐怖の女!


「そう! 四十八願 桂子だァーーーー!」


 四十八願 桂子! そして、小脇に抱えているのは小動物系先輩のふーちゃん先輩こと不死川 紅!

 いずれもすまいるピエロのメンバーだ!


「ヨイちゃーーん! 素敵よー!」

「なんか濃いキャラが出ましたねえ!?」


 お互い様だと全力でツッコミたいところだ。四十八願はいつになくエネルギーに満ち満ちていて、まさに水を得た魚といった様子。一方、何故か小脇に抱えられている不死川はじとじととしたねちっこい目で大門を凝視していた。


「不死川。お前どうしたの? お前何で抱えられてんの?」


 俺が一応問いかけると、ふーちゃん先輩はもぞもぞとこっちに首を向ける。


「……面倒なことになりそうだったから逃げようとしたら捕まった。あんまし存在感出したくないからそっとしてて。面倒なことになりそうだから」

「異様に濃い相方のオプションになってるから無理だと思うんだけど」

「……」


 不死川は体を出来るだけ小さくしたいのだろう、ぎゅうっと体を縮こませる。全く以て効果は無いわけだが、本人は効果があると思ってるんだろう。この高校三年生は。

 そんな不死川をロックするロックな一年生、四十八願の方は対照的に、既に目立ちまくってるのにアピールを始める。

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