第14話
「そういうわけで、私は彼らがエジプトに殴り込むことを支援することを提案するわけだが、意見はあるかな」
「……で、ですが、エジプトですよ? 奴らの本拠地です。何を仕掛けてくるかわかりませんし、最悪ベス神や……「羽食」も出てくるのでは?」
「出ると思うよ。もしも幹部のクソゲーが打ち負かされたりしたら、恐らくは羽食も黙ってはいないだろう。だが「そうでもしなければ」、奴は動かんだろうさ」
羽食(はくい)? 敵の首魁だろうか。二人の間で話は進む。
「実際、そろそろ思い切った行動は必要だと思っていた。幹部を倒し、羽食やベス神の興味を引く。うまくいけば、奴らの方から剛迫へ接触をすることもあるだろう。そこを突いて、捕らえるのだ。今考えた作戦だが、いいと思う」
「今考えたって不安しかないんですけど!?」
「無策で行こうとした君達よりは脳を回したつもりだがね?」
ぐうの音も出ない。本当にただ突っ込もうとしただけだったからな。正直剛迫と同じレベルである。
「うん、いいだろう。改めて、認めよう。君達をエジプトに行かせる。作戦名は、そうだね。オペレーション・クソゲイダーズとしよう」
「何だその嫌な名前!?」
「クルセイダーズとクソゲーをかけてみたのだよ。クックック、クソゲイダーズだ君たちは。まさにクソゲイダーズ」
単なる侮辱以外の何物でもないが、とにかくエジプトに行く目途が立った。剛迫と、目を見合わせる。
「よし、これで!」
「エジプトよ!」
「奴らを絶対に叩き潰す!」
「クソゲーのメッカにいざ、出陣ね!」
俺達はハイタッチを交わした。
目的が違えども、意識の差はあろうと。俺達は同じ目的のもとにつながったのだ。
しかし、そんな結束の前に、一つの障害が立ちふさがった。
「わ、私は認めませんよ! 何を勝手に盛り上がっているんですか!」
大門 璃虞だ。仮面をしたまんまでもわかるくらい、露骨な不満をにじませている。
「なんだよ、いいじゃねえか! 上司も認めてるじゃねえか!」
「そ、そうは言っても! 私があいつらを倒すんです! 石川さん、考え直してください!」
「クックック、子リスよ、まあそう心配はするな。彼らはあくまでクソゲー部門で戦うのだ。君は実際の戦闘面。直接の対峙した場合に、その力と経験でSHITSを直接叩く。住み分けは出来ているだろう?」
「ぬ、ぬぬぬ……。まあ、それは、そうなの、ですが……。羽食は……あの人だけは……その……」
「一対一で対峙したいと」
空気の流れが変わった、と、頬の産毛が感じ取った。
直感的に「これは聞いちゃいけないんじゃないか」と思わせる――石川さんの、困ったような視線が俺に一瞬流れた。この二人がいる前で話していいのだろうか、と。
大門も大門で、言ってから気づいたように俺達の顔を見た。
羽食という人に何か関係があるのか? と無粋な脳が憶測してしまう。
「君の気持ちはわかる。しかし私とて、奴らの本拠地に君を一人で突っ込ませるような真似はしたくないのだ。君は確かになんかムカつくとこがあるしいちいちうるさいところはあるが、大切な部下だ。そして何より、責任がある。人員の選抜は私の領分だ」
「ぬ、ぬぬ……」
「大門 璃虞よ、今だけは私は冷徹な暴君となる。この二人と行動せよ。これは命令だ」
「……はい」
しょんぼりと肩を落としながら、大門は承諾した。
何だったんだろう、今のやり取りは。大門と羽食という人の関係はなんなんだ? 剛迫と目線でコミュニケーションをとるが、剛迫は肩をすくめるだけだ。
「そして」
あくまで上司として、石川さんは話を進める。
「私は本拠地での作戦行動に、君一人では安全面で不十分と考える」
「え、ええ!? そんな!? ま、まさか、クビ!?」
「いや、クビまではいかないよ。というよりあの事件のせいで我々もほとんど人がいないんだからね。しかし、よりクソゲーに精通する彼らなら、人づてがあるかも知れんよ」
「えええ!? まさか、私以外に!?」
部下からの露骨な不満を向けられてもペースを全く崩さない。こういう人が上司というんだろう。だからこそ上司でいられるんだろう、と直感する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます