ワクチンマン
奥田啓
第1話
俺は健吾と電車に乗っている。
「いやーめっちゃでるって噂の台全然だったな。」
健吾は嘆いている。
「ほんとだよくそ!わざわざ電車にのっていったのによ。だいたいよくかんがえたらネットででまわってたら店もみててかえてくるよな」
「テンション上がるとまわりみえなくなるのってこわいな」
「テンションさがるわ」
『次は渋谷、渋谷です。』
「おっおりようぜ」健吾は身軽に動く。
「ちょっと俺の重量考えた速度でやってくれよ」
「おおごめんごめん。」
渋谷の街は人でにぎわっていた。
普段渋谷なんてリア充なまちなんていかない。
カップルもおおくて彼女なしの俺には
うざったいいがいのなにものでもない
「今日もカップルばっかでうぜぇわ。彼女いない童貞のおれらにはこんなもん精神攻撃だよな」
健吾は笑って言う。
おまえはおれとちがっていたことはあるだろ。人並みに顔はととのってるじゃないか。
俺みたいなのと一緒に嘆こうとするな。本当にもたざるものの気持ちがわかってたまるかよ。
好きな女性アーティストの出版記念サイン会が渋谷にあるのでそこにむかっている。
ごったがえしているスクランブル交差点で信号待ちをする。
向こうのTUTAYAのビルには大型スクリーンが映し出されている。
そこでニュースが流れていた。キャスターがニュースを読み上げている。
『謎の奇病【ピンク】感染者がまた増えた模様です。女性に発症し感染後、必ず死に至るというもので、3か月前突如あらわれ、この3か月で、死者が100人を超えています。いまだ治療法が解明されておりません。
ここで感染症に詳しく、【ピンク】の研究の第一人者Drジョーン高畑氏にお越しいただきました。よろしくお願いします』
外国人の血が混じっているのか端正な顔立ちで自信に満ち溢れた表情の男性が現れた。
なにもかも成功してきたのだろうとうざったくにらみつけた。
キャスターはさっそく質問をした。『この【ピンク】とはいったいどんなものか詳しくおしえてください』
高畑はなにかで固めているのかというくらい表情のかわらない顔でいう。
『はい。どうやら空気感染で発症する細菌のようで、発症後、個人差はありますが1,2時間以内に体に桜色の斑点が体中に広がっていき、やがてピンク色の液体を吐き出しその数時間後死亡するというものです。死亡した感染者の解剖したときにわかったのですが、血や胃液など体に備わっている液体がすべてピンク色に染まっているのです。』
『そんなことありうるのですか・・・?』
『その細菌がなぜ女性だけに発症し体内の液をピンク色にかえる性質をもっているのかは、どういったメカニズムかは研究段階です。それがわかれば薬も開発できるので急を急いでいます』
キャスターも真剣な面持ちで聞いており時折質問を投げかける。
「最近怖いよなあ。」
健吾がつぶやく。
「でも女性だけだろ、おれらにはかんけいねーし」
「まあそうだけどさ。」
信号が変わり、向こう岸へと歩き出す。
本屋につくと人でごったがえしていた。
去年から突如あらわれて一気にスターダムにのしあがった歌姫マユリ。
ライブもチケットは即完売で、若者を中心に人気を集めている。
その彼女が自伝をだすということでその出版記念サイン会がひらかれているわけだが、あまりの人気ぶりに大パニックになるということでSPなど何人も用意し、厳戒態勢で行われている。
あらかじめ予約していたので整理券を渡されサイン会の列に並ぶ
健吾は後ろで手の汗を拭き続けている。
マユリがちゃんとみられる位置まできたときやはりオーラを感じた。
一般人と放つオーラが違う。
何度人生を繰り返したらこんな風になれるのだろうか
マユリは一人一人をたんたんとこなしていく。
やがて俺のばんになったとき、いいたいことがたくさんあっていおうとしったとき緊張が走った。なぜかおれをじっとみた。
時が止まったようだった。
何分経ったかわからないがやっと時が動いて
「デビューしてからずっときいてます。がんばってください・・・」
つまらないことばかり口にしたら
急に笑い
「あなたとはまた会う気がする」
聞き返そうとしたら時間になってしまい、スタッフに離れるよういわれてしまった。
サイン会が終わり、夕飯時になってきたので居酒屋にむかった。
健吾は前のめりで聞いてくる
「さっきなにはなしてたんだ?やばくないかあんなに目が合ってさ」
「おれもなんかよくわかんなかった。」
「あの歌姫にみつめられるってやばいでしょ。すげぇなあ」
「俺の顔がへんなだけだったんだろ。帰って誰かとばかにしてるよ」
「そんな悲観的な」
「なれっこだからいいよ。っていうか早く頼もうぜ」
「あっそうだな」
ふたりはメニューを見合って酒や食べ物を注文した。
「そういえばさっきからきになってたんだけどさ後ろの女のひとかわいくない?」
チラっとみたらたしかにかわいい。おとなしそうで清純なかんじだ。
「ああいう彼女ほしいよなあ。ああできないかなぁ」
「おまえはがんばればできるだろ顔面も体形も普通なんだから」
「できないから童貞なんだよ・・・・」
おれがこいつだったらもっとがんばるのに。
なんでそんな普通な容姿でなにもやらないんだとむかついてくる。
清楚でかわいいこどころか女なんかできやしない。
なんか今日はやけにいらだちが多い。
お酒でものんで気分よくしよう。
ちょうど来たビールで乾杯して
いっきにグイっとあおる。
「すっげぇちゅーしてぇしてぇよだれでもいいから」
健吾はだいぶ酔っている。
「酔いすぎだよおまえ。俺の水のめよ」
「やさしいなぁ・・・」
健吾は目を潤ませながらいう。そして俺の水を全部飲んでしまった
「全部のんでんじゃねーよ・・・・」
健吾はジョッキをもったまま寝ていた。
こいつはお酒がよわいのですぐ寝てしまう。
いまも自分がちびちびつまみをたべているだけだ。
もう30だけどおれこれからどうしようかな
童貞だし定職なしだし、なんなんだこの人生。
お酒飲んでも全然きぶんよくならない。
むしろのみすぎたようだ。
ちょっとトイレに行こう。
足取りがふわふわしてこの巨体をうまく支えられない。
店のトイレのサインがわかりづらくちょっと迷った。
次の角でトイレだと思ったら向こうのほうでだいぶはいてる音がした。
すげぇ声だなおい・・・
角をまがってちらっとみたら洗面所に頭をつっこみめにしてる女性がいた
うわさっきの女の人だったのかよやばいな。
トイレに入ろうとすると女の人がこっちをみた
するとさっきの清楚そうな人だった。
俺ははっとした。
顔に桜色の斑点がでている。
ぱっと洗面器をみると洗面器が桜色に染まっている。
まさか感染者なのか。
「だ、大丈夫ですか」とこえをかけると
こちらをみてニヤっとした。
あいてた男子トイレのなかに、突き飛ばされ背中を壁に打った。
「いってぇなにすんだよ・・・」といって顔をあげようとしたら女性が見下ろすようにしていた。
「わたしはもうすぐ死ぬしあなたでいいや。」
女性は後ろ手でドアを閉めた。
「えっなにが・・・ってか大丈夫ですか・・・」
女性が突然俺に馬乗りになる。
「最後にゲテモノをくうってのもおもしろいね。」
女性がチャックをあ俺のけようとしている。
まさかこれはいわゆる痴女なのか。でもなんで俺なのか。
「もうしたくてたまんない。あんたたべちゃう」
あんな清楚でかわいい顔がいたずらっこの顔になり、
顔を近づけてきた。
近すぎて緊張していたら、突然キスしてきた。
ねっとりとしてはじめての感触だった
俺ははなれて
「いやおれその童貞だからやり方がわからないっす」
「ああそうなんだ。じゃあわたしがいただいちゃうね」
女の人ってこんなにいやらしい顔ができるんだというくらいの表情をして
チャックを開け自分のモノをくわえ始めた。
きもちよすぎてだめだ
いきがあらくなる。
こんなかわいい子になんでやってもらってるんだろう。
もうよくわからないがとにかくきもちいい。
たちすぎて破裂しそうになった。
「もうこんなんだからいいよねわたしのはめっちゃぬれてるから時間ないしはやくいれよ」
「で、でもゴムが」
「さいごなんだからゴムいらないでしょ。」
馬乗りで中にはいってしまった。
なんだこいつ清楚かと思ったらビッチだったのか。
いやでもいいや。まさかこんなかわいい子と卒業できるなんて人生わるいもんじゃないなぁ
そんなことおもいながら快楽におぼれていった。
ことが終わり息を整えていると
「もう一回いけるでしょ・・・」と笑いながら言うのに興奮してまた始めてしまった。
3回戦が終了したときさすがに疲れが出た。
女性もうなだれている
はっときがついて、この人は死ぬのか。おれは急に我に返った。
おれはこんな人と良くやれたもんだ・・・自分にひいてしまった。
「あれ?」
女の人が変な声を出す。
「ど、どうしたんですか?」
腕をまくってじっくりみている。
「は、斑点が消えてる・・・・」
ぱっと顔を上げていう。たしかに顔中にもあった斑点があったのが完全に消えている。
「さっきの胃の変な感じも消えてる。まさか治ったの?」
「えっ・・・まじっすか」
致死率100%といわれていた奇病に完治した人間があらわれたなんてこれはすごいことになる。
信じられない。
「やったー!わたし生きれる!これからもいっぱいエッチできる!なんかありがと!」
俺に握手を求めてきた
「よかったっすね・・・なにがおきたんでしょうかね・・」
「わかんない、だけどうれしい。わたし帰るね。」
立ち上がってドアを開けるとまっていたお客さんがちょっと驚いてた
男子トイレから女性がでてきて、そしてなかにデブの男がいたら。
ああやったんだなと思うだろう。
俺もゆっくりでていって
童貞卒業の喜びがじわじわとしみ込んでくる。
なんかよくわからないけどやったぜ。
手を洗って席に戻り、まだ寝ていた健吾を起こしさっきの武勇伝を聞かせた。
それからしばらくして、
昼過ぎまで寝ているとチャイムの音で目が覚めた。
前の日は遅くまで飲んでいたので起き上がると頭がガンガンしていたい。
シバシバした目をこすり、ドアを開けるとスーツの男性数人がたっていた。
「こんにちは。麻生孝之さんで間違いないでしょうか?」
眼鏡の一番偉い人そうな男性がきいてきた。不信感があるが
「そうですけど・・・なにか?」とこたえると
少しにこっとしていった。
「わたくし厚生労働省の二階堂と申します。」
厚生労働省が俺になんのようだろうか。まったく見当がつかない。
「ぼくになにか御用ですか?」
おそるおそるきいてみると
「あなたに今回の感染症【ピンク】をとめるご協力をいただきたい。」
ワクチンマン 奥田啓 @iiniku70
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