第146話:天照①
天照の八十神は元々人間の魂を抜き取ったもの。当然、前任が能力者ならその力を使うことが可能だ。摩天楼が前例であるようにだ。
「ライドシェア」
バイクを乗り回す二人組の霊魂。
その様は昭和時代のヤンキーのようにも思える。何故かマスクに特攻服姿という奇抜な風景である。
「EPA!!TPP!!ICO!!」
何かを叫んでいるようにも思える。何の略だこれはというところである。
「ETF買い入れ終了!どうなる東経平均株価!」
おそらく前任がサラリーマンといったところか。
「疾風迅雷」
金成が雷を操り、霊魂をねじ伏せる。
「阿修羅」
「テレポート」
手刀で天照を焦点に次々と仕掛ける。
「君とこうしてまた戦えるなんてどれぐらいぶりだ?」
「さあな、もう覚えていねえなそんなこと」
「僕は忘れられない、君との華麗な円舞曲」
「まあそれも今日までだな」
「どうだろうね?これは時間稼ぎで今頃追っ手が来てるかもよ?」
「攪乱のつもりだろうが、その手は通じないぜ」
しゃがんだり、飛んだりと二人とも攻撃をよくかわす。
「スピードじゃ君には勝てない。だから僕は量で攻めるよ」
「ん?」
地面から突然手が出てくる。
「これは」
「まあ死者の霊魂ってやつ?」
「ゾンビまで操れるのか貴様の能力」
「まあね」
天照が呪文を唱えようとしていた。
「オオクニヌシノカミ」
大穴牟遅が天照に矢を放つ。豪快な炎が辺りを焼き尽くす。
「ちっ、あいつは確か素戔嗚の弟子だったやつか。素戔嗚同様やっかいな能力を使ってくるな」
「金成、炎で一気に焼き尽くせ」
大穴牟遅が実演したように炎で霊魂を浄化するのが手っ取り早いようだ。
「了解」
スキルマスター発動:八岐大蛇
「八頭龍:煉獄」
巨竜が一気にあたりのライドシェアをしている霊魂などを焼き尽くしていく。
「所詮は傀儡にしかなりえないってやつかい?」
「さあてね?」
突然城の瓦が動き出し、辺り一面をぐるぐると回しまくりはじめ、金成、阿修羅、大穴牟遅に襲い掛かる。3名はそれぞれ拳で砕きまくる。
「さあて、阿修羅。君はこいつらと一度戦っているね?どうやって倒すんだろ」
「おいおい、この能力まさか…」
2人の男が陰から姿を出した。
顔が既に腐敗が進んでいる。死体が動いているようだ。
「ああこいつはもう死んでいる。だが、代わりに魂を入れ込んだら何故か能力が前任の能力が引き継がれたようでな。うまくコントロールは出来んが、何かと敵を視認し、ぶつけてくれるようだ」
「阿修羅、あいつら知ってるのか?」
「千葉国の浦安と成田だ。天照め、死んだ人間を入れ物に生きた人間の魂を、外道め」
千葉国大戦の時にぶつかったAランク同士対決の際、阿修羅と素戔嗚を苦戦させたという相手であった。あの時はたまたま大寒波が来ており、耳栓によって相手の技を封じることができた。
「さて、相手するとしようか」
浦安がナイフを取り出し、金成に向けて投げ飛ばす。
スキルマスター発動:アリストテレス
ナイフを斥力で弾き飛ばす。互いに飛ばし、はじき返すを繰り返す。
「余裕じゃんこんなの」
「油断するな金成、成田には能力を封じる呪術がある」
「え?」
「オオオオオオオオオオ」
「耳を塞げ金成」
「塞ぐいったって」
スキルマスター解除
「へ?」
ナイフが金成を襲ってくる。
「ちょっとおおおお」
金成が大ピンチである。
「サウザント・スプリング!」
遠方から美姫が援護射撃を送る。ナイフがバラバラとなった。
「あっぶねえ」
「テレポート」
阿修羅が金成のすぐそばにより自身と一緒に距離を取ってとんだ。
「なんだありゃ?何で俺の能力が強制終了すんだよ」
「そういう呪術だ。非常にやっかいだ」
「前回はどうやって倒したんだ?」
「素戔嗚の十束の剣で成田を仕留め、浦安をとった」
「ならそれでまたいくしかないか」
「いや2度も同じ手を喰えぬだろう。なんせ今回は天照もいる。奴のことだからどうせそれは囮にしてくるだろう」
「ならどうするんだってんだ」
「考えねばならないな、この状況を」
再びの千葉国2人組との戦いに頭を悩まされる阿修羅であった。
前年比を超えることを要求されることはよくあることである。
しかし昨年度にもし突発的な、それこそ災害もしくは政治的な絡みがあるとしたら、ある需要が上がり売上も大きく引き伸ばしたりすることは多い。
増税やオイルショックなど、ある一定のものが昨年度売れれば、当然今年もそれが売れるかどうかというとそれはもうブームが過ぎ去った後になっている。
つまりその分の売り上げを抜きにして今年の前年を超えなければいけないということである。
前回は寒波の中雪を耳に詰めるということで相手を油断させた。
しかし今回はまず耳を詰めるものもなければ、素戔嗚がいるわけでもない。勿論金成の能力は素戔嗚そのものなので、代用はできるが、今期の売り上げ目標は「浦安、成田を天照の死角を奪いながら倒す」であるから、なおさら前年比越えが難しいビジネスの世界になりつつあることを予期していたのであった。
これがもしメーカーであれば月末はプレミアムフライデーなどとのんびり構えている暇はないぐらい顔が真っ青になりながら、尻を叩かれながら休日返上で営業に出かけなければいけないぐらい、忙しい月末になるレベルであった。
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