第145話:鯉に餌

「秋葉王様いかがなさいましたか?」

「鯉に餌をやる時、執事ならどうする?」

「それはちょっとずつあげます」

「俺はこうする」

 鯉の餌をいきなり皿をひっくり返し、ドバドバと落とし始めた。

「なんとまあ豪快な」

「普通の餌やりなぞつまらぬ行為はせぬ。普通の人生に何の意味もない、だがしかし、普通の人生を送れない者もいる。それは何故なのか。生に対する執念が足りないからだ」

 秋葉王は王室の椅子に座り、ココアを片手に飲み始めた。

「他国で国王同士が外交しているものがいたな。確か憩安婦かなんかを同席させるという意味不明な行動?俺だったら1分以内に退席し、手配されたホテルにも泊まらず飛行機で一夜明かすね」

「我が国はいじめられたんだぞ!というアピールでしょうな」

「国王様、東区で予想通り戦が始まりました」

「うむ、奴ら動き出しおったな。全くこちらにパイプが無いとでも思うとったか、行動なんぞばればれよ。まあどうせ、正を以て合い、奇を以て勝つなどとほざいているんだろうな。奇襲作戦など信長以来の真似事して何になるというのだ。おい執事君、奴らに一泡吹かせてやれ」

「と言いますと?」

「王最強の盾南と北と西の3名をぶつけてやれ」

「ふむ…Sランク3名を彼らに、なんともまあえげつないことをしますな王様」

「まあ普通のRPGゲームならちびちびと攻め立てて主人公を本物の勇者に仕立てあげて子供を喜ばせるのがセオリーであるが、天馬が以前俺に言ったように悪人がヒーローになる、勝てば官軍負ければ賊軍に従ってやってみようではないか」

「天照と月読の護衛にすぐにつくよう指示」

 衛兵に指示を出し、王最強の盾を動かした。かつてないほどのピンチが金成達を襲うわけである。


 納豆の消費が過去最高になりつつある近年、世界大会も行われている最中、彼らは戦いを続けていた。

「80の使者か」

「奴は霊魂を盾にする。しかもストックはすぐに補充も可能。くれぐれも魂を奪われるな」

「俺たちのバックには摩天楼もいる。そう簡単にはやられん」


スキルマスター発動:ライジングサンダー


 全身を雷に纏い、応戦する金成。

「体力は残しておけよ、連戦にまたなる可能性もあるからな」

 阿修羅はアドバイスした。

「ああ、配分はしっかりと検討している」

 使者の魂が2人を襲う。

青白い炎のようなものであるが、その実体はなく、物理攻撃は効かない状態だ。

「疾風迅雷」

 雷を落とし込み、使者の魂を焼き尽くす。

「おそらく奴は俺と同じくAAランクにまでその力を上げてきてやがる。互角かそれ以上か、いずれにしても八十神だけでこれだけの武力を持ち、尚且つ個人スキルの高さから言っても、単体戦に持ち込めたとしても、果たして奴の居城で勝ち目があるかどうかというところであるな」

 阿修羅は考えがまとまらない中、天照と戦いに応じることにした。

「素戔嗚の剣で最後はとどめを刺したいところだが、金成がそこまでのレールに乗ってこれるかどうか否、それは俺の働き次第というわけだな」

 阿修羅はとんだ。


 職場内のよりよいコミュニケーションを図るためには一人一人が相手を尊重し、同時に学ぶ姿勢というものが必要だ。もしも営業ノルマが社内全体ではなく、個人に課せられたものだとしたら、そこには協調性は無く、ただの競争でしかなく、勝者と敗者が生まれることになる。

 ダイバーシティを構築する会社も多いが、事実上下関係を取り除くのは難しい話である。互いに意見を出し合い、そしてそこから多くの議論を交わし、最終的に実行する。だが、その過程に辿り着くまでの衝突と、そもそも議論にすらならない営業会議では利益の追求のみに拘り、販管費削減にはつながらず、企業の多くが将来の投資を諦めて新入社員の募集を減らすことやリストラによる人員削減を考える。

 

 重要なことは「新入社員にしっかりとしたポストを与えることである」

まだ自分は若手なのだから、自分はまだ学ぶ段階なのだからという甘えを生じさせることはダメだというわけではない。しかしいつまでも甘えさせておけば本人に成長にも繋がらず、会社の成長にも繋がらない。

 自持思想論第9小節「会社が人を育てるのではなく、人が会社を育てる」にもあるように一人一人が利益と費用を意識して、今すべき行動、他に何か改善策はないか、気づきは無いかなどを模索し、成長させることにより飛躍できる。

 膨大なマニュアルや指示書は本人のワークスケジュールにしっかりと分割し、無駄なく作業を振ることはできるが、それでは固定業務に対応できても変動業務には対応できない。周りで困っている人を見かけたとしても、その人を助けていると時間が無くなり、自分に課せられた仕事が終わらないと意識をしてしまい、結果として最悪の状況が生まれやすい。(主に不正行為や不作為など)

 そういった格差が生まれていけば職場内ではさぼる人間も出てきてしまい、最終的に一人当たりの生産性は下がってしまい、最終的に減益へとつながっていく。

 そうではなく、一人一人が「自分が社長ならどうする?」といった先見の目を持ち、「この状況ならこうだな」といった感じで、指示待ち人間になることなく、今優先すべき行動は何なのかを構築することができれば、自分の成長も促し、周りの教育や指導にも目を光らせることができる。

 一番はやはり「自分はもうこの部署にもいなくてもここは大丈夫だ」と思わせるような跡継ぎを育て上げることができる、いわば自分の分身を育て上げることである。


 金成と阿修羅はそのことをしっかりと理解していた。

阿修羅の能力は瞬間移動と物理攻撃である手刀のみである。金成は多様なスキルを使えることと、連戦を想定するとあまり大技を使わせたくないところである。

 そして後ろには美姫や大穴牟遅もいる。つまり誰からの指示がなくとも、今すべき行動が阿修羅には見えているということだ。

 身内だけが知りえる情報、八十神は囮で、天照に別の大技を使わせないように阿修羅が只管に本体である天照を攻め続けるということである。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る