第42話 撃退してやる。

 注文した氷たっぷりのアイスコーヒーを、ストローで乱暴にカチャカチャかき混ぜる。

 冷房もほどよく効いているのに、まだ怒りの熱は冷めやらない。

 あんなの、見なければよかった。

 いや、気分は悪いが逆に見れてよかったのかも。あとでそれとなく猫村さんに忠告できるし。

 傷は浅い方がいいに決まっている。しかし、どうなんだろう、前に確か、あの眼鏡のことをいいなあ、なんて口にしていたことを覚えているし、口を挟むのはヤボだろうか……いや、いやいやいやいやいや! あんなふざけたクソ眼鏡! 断じて許さん! 猫村さんが良いと思っていても危険すぎる! ストーカーだし!!

 私は携帯を見てそこで思い出す。

 そうだよ。こういう時こそ情報収集アプリの出番じゃん。

 見てろよ。最低ストーカーの撃退方法調べてやる。

 メールボックスに届いていた竜沢さんからの招待状を起動させ、私は自棄になりながら、その『QA』なるアプリをダウンロードした。

 適当に規約を読み流し、さっそくアプリの世界へ。

 最初に名前を設定して、マスコットアバターを決めるらしいんだけど、ウサギだとか、猫だとか、犬だとかスタンダードなものから宇宙人なんてコアなものまで存在するくらい、とにかく種類が豊富で、普段だったらこういうのじっくり迷うんだけど、なんか後から変更できるらしいし、どうでもいいやと思いながら、私は丁度招待特典でついてきたスター100個で交換できる、つるのキャラクターを選択して始めることに。


『QAの世界へようこそ、つるみぃさん! まずは気軽に質問や回答をして情報を共有してみましょう!』


 使いまわされた言葉を喋る鶴のキャラクターに導かれ、私は適当に画面をスクロールしていく。


『回答にイイネ! してもらえるほど獲得できるスターが増えます! また投稿した質問の閲覧数が多くなるとランキングが上がり、スターが多くもらえますよ!』


 ふーん。なるほどね。そういう作りかあ。

 質問をして情報を得られるだけでなく、ユーザーはそのスターというポイントを集めることで、よりレアなキャラクターを手に入れられ、自分好みに飾り付けられるっていうシステムね。使う側のメリットは二倍、だからこんなにもダウンロード数が高いわけだ。

 気持ちがだんだん落ち着いてきて。私はアプリの機能に興味を抱き、ちょっとだけいじってみることにした。

 この上の方に表示されている、総合ランキング。これが最近で注目されている質問かあ。

 うへえ、閲覧数とかすごいな。みんなどんなこと質問してるんだろう。中身は…………うわ、不倫をやめるべきか? なにそれ。こっちは……えええ!? 中学校の先生と体の関係!? うそでしょ!?

 3位も4位も、夜逃げするには、とか、隠し子発覚、とかなんか全然日常的じゃないものばっかり。

 ちょっと覗いてみたくなる話題なのかもしれないけど、もう少し穏やかな質問ないの。

 そんな感じで流し見していると、上位にランクインしていた、ある質問が目に止まった。

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