10
ひととおり情報を流し終えて、私は手を休めた。
見ると敦と祐二もすでに話を終えていて、私の横にやってきた。
「どうだったスノ」
「終わった。トラックと車の段取り通知終了。あとは結果待ちだねえ」
「お金、集まると思う?」
と祐二。
「全額は無理だろう。おそらく。友善元素にそこまでのカネはない。あったとしても警察が引き延ばしを図るさ、きっと」
「こういうときって、ほんとに中身を雑誌に入れ替えたりするのかなー?」
「さあな……まあ俺たちとしてはカネはどっちでもよくて、駄菓子満載のトラックが今夜中にここに到着することが肝心さ」
「逃走用の車もね」
私が付け足すと、敦がひっひと笑う。
「そうな。それも、きちんと入り口のあたりに来てくれないと、効果がないな」
「ねえ、スノ。警察とかの状況はどう?」
「警察は……テレビとネットで情報見る感じだと、持久戦ねらいみたいだから、それはよみ通りだな。敦のほうには連絡来てる?」
「内線はときどき架けてる。途中から警察が相手に変わってるけど、今のところは向こうもやんわり説得中ってところで。向こうとしてはこっちと信頼関係が構築できたつもりなんだろう。その間に少しずつ情報を引き出そうとしてるのも分かる。祐二のことはネットに出る前に聞かれたな」
「カメラも変わった動きはないね。本当に約束通りのラインから内側には入ってきてないよ」
「突入準備してるにしても、カメラに映るようなヘマはやらないさ。おそらくトラックと車の運転手は警察の人間が変装でくるだろうな。そうでもする以外に内部の様子を探る方法はないから」
私はそれを聞いて微笑した。
「内部の様子なら、いくらでも探ってくださいだね。隠し立てはない」
「そう、内部にはね」
敦と祐二も笑う。
「レンタカーと航空券と、あとアメ横、生中継入ると思う?」
「やるだろう。犯罪への荷担とか、放送倫理とか色々あっても、放送しないことで何か取り返しがつかないことが起きたときのリスクを放送局は考えるだろう。それに、高視聴率が期待できるんだから、結局やらない手はない」
「僕が心配なのは朝までもつかだねえ。やっぱり夜明け前がいちばん危ないのかな?」
「そうだな。疲労を考えてその辺りを狙ってくることがあり得る。しかしまあ、朝にここを出ると予告してるんだ。何か起きるとすればそこだろうと俺はよむね。ほっとけば向こうの陣地にこっちから出て行くんだ、わざわざ様子をつかみにくいところに突入してくるとも思えない」
「夜中は人混みがないから、ウラン散布されたとしても効果は低い。そういうことを考えて突入してくるかもよ?」
私は訊ねる。
同じ問答はもう何度もしていて、答えも分かっているのだが、儀式のようなものだ。
次にやることを一つずつ確かめていく。
そうすることで、心がクリアになっていくし、覚悟と開き直りも出来ていく。
ここまで敦と祐二の入れ替わりを除けばほとんどは計画通り。
あとはラストスパート、この頃には私はそう思い始めていた。
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