ネコは異世界で闊歩する

第126話 狂操ティナに妾じゃ

「その目、狂操状態か……！」

　まるで獣のように唸り声をあげるティナ。魔物のみしか現れないと思っていたその症状がティナを蝕んでいるようであるな。

　ティナは数多くの狂操状態の魔物を仕留め、その肌には少なからず魔物どもの血が付着している。魔物だけしか狂操状態にならないと思って高を括っていたであるが。

『いいねいいねぇ！俺の力も遂には獣人を操るほどに成長したか！ッハー！さいっこ！』

　ケタケタと一切笑わない九尾の口から不快な男の声が響き渡る。

　――待て！獣人ということはまさか！

「ぐああっ！カルラお前何をっ！」

「おい！なんて目してんだお前ら！」

　嫌な予感が命中したであるなぁ！この場にいる獣人はティナだけではない。いち早く異変を察した多くの獣人が……何よりSランクになったというティナまでもが狂操状態に陥っている。

　ん？いやもしかして……全員ではない？我輩は上空を飛び鳥型魔物と交戦している奴に声を掛けた。

「バルダーモ！お前は無事であるか！」

「ああ！これはあれか！血を浴びたらダメな奴か！」

　鳥人であるバルダーモは大きく羽ばたき魔物と距離をとりながら弓矢で攻撃を仕掛けている。あの戦い方であれば血を浴びる可能性は低いであろう。そもそも退避しておいた方がいいのかもしれないが……

『おいおい、よそ見してていいのかよ！』

　九尾からの声を合図に、ティナが素早く跳躍し我輩に迫る。傷は痛むが動けないわけではない。回避行動を……いや、必要ないか

「グルァ！！」

「ギッ！」

　ティナが我輩に接触するよりも速くポチがティナに体当たりを喰らわせた。牙やスキルを用いなかったのはやはり相手がティナだからであろう。

　我輩を庇うように立つポチより少し遅れコーリィとロッテが我輩のもとに駆け寄る。

「ネコ様！」

「ポチ、よくやったわ！……で、ネコ！ティナのあれはどういうことよ！」

「分かるであろうが！操られておる！」

　当たり前の事ではあるが、話している我輩らの事を気にせずティナは次々と攻撃を浴びせてくる。いやもう、操られているというのは厄介であるな！

　何とか避けるがティナの魔法は氷。いつもだったらやらないであろう、我輩らの足元に氷を張り滑らせた隙に攻撃を加えようとしてくる。

『そろそろ九尾も参戦させるぜぇ？』

「お前は消えてろ！」

　我輩の恨み節を鼻で笑い九尾もまた襲い掛かってくる。いやもう、九尾だけで手いっぱいなのにティナも付いてくるとか過剰はサービスはやめるである！

　他の冒険者も苦戦しているようで獣人の攻撃を何とかいなしながら、元従魔の魔物を相手取っている。

　そのうち十数名はカルラを相手しているみたいである。

　……こうなってしまえば仕方ないである。

「コーリィ！来るである！」

「はいっ！」

　我輩の声を聴き、コーリィは目くらましのファイアウォールを発動させ奴らの視界を遮る。

『あぁん？鬱陶しい！』

　煩わし気に九尾がその尾で炎を打ち払うがそれだけの時間が稼げられれば十分である。

　駆け寄るコーリィの頭に我輩は飛び乗り憑依スキルを発動させコーリィの体の主導権を預かる。そして発動させる。

　バステトを

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　くふ、くはは、久しいのう妾が表に出てくるのは……いつぶりじゃったかの？うむうむ。我輩も私も成長した故か、妾も何だか体が軽いのう？良き哉良き哉。

　っとそうこうしとる場合じゃなかったの。

　くふふ、狐め口をあんぐりと開けて驚いておるのう？

『な、なんだぁテメェどっから現れた！』

「どこかとは異なことを聞くのう？妾が現れて2人おらんじゃろ？そういうことよ。」

『はぁっ！？……ネコと女が一人いねぇなぁ、奴らが何かしやがったのか！』

　む？合体したという発想はないのじゃの？まぁ懇切丁寧に教えてやる通りはないのう。解説するの面倒じゃし。くわぁ……おっと欠伸が。

『ちぃ、まぁいいや。どうやらてめぇも獣人みてぇだな。ってことはよ！』

　ティナが妾目掛けて走ってきよったな。おぉポチよ、妾を庇わずともよい。任せよ。何心配するでないティナが仲間と言うのは承知しておるよ。

　ふむ、氷の拳かのぅ？これくらい容易いほれパシッと……っ！

　赤いものが妾の目に……っ！この臭い……血か！

『ひひゃは！ビンゴぉ！』

「バステト！？」

　おうロッテや、どうしたそんな慌てたような声出して。

　あぁそうか。妾が血を浴びたから妾も操られると思うたか？くふふっ

「安心せよ、ロッテ。妾は妾じゃよ。だってほれ、吾輩はネコであるからのう？」

『は？なんっ何で！？』

　むぅ、視界が悪いのう。マジックボックスからハンカチを取り出してふきふきっと。

　あーもう血を浴びせるとかやめてほしいんじゃが？で？この血の出どころは……なるほどティナめ自分の拳を傷つけさせられたな？

『何でてめぇ俺の言うことを従わねぇ！』

「黙れ下郎。」

　狂ったように飛び掛かる九尾めの腹に妾は猫パンチを叩き込む。

「何妾のティナに自傷させておる。」